
大阪大学発、EXPO2025経由 未来の「いのち」と「くらし」行き!
停滞する日本経済の再生には、革新技術で新たな価値を創出するスタートアップの力が不可欠。大阪・関西万博では、「いのち輝く 未来社会のデザイン」のテーマのもと、次世代社会を志すスタートアップが百花繚乱。
大阪大学の最先端研究を社会実装する阪大発スタートアップも、パビリオンやイベントの目玉として注目を集めている。世界トップレベルの知と技術を活かして「いのち」と「くらし」をアップデートする挑戦が、今、始まっている。
クオリプス株式会社 医学系研究科 澤 芳樹 名誉教授
大阪ヘルスケアパビリオンでiPS細胞由来の「心筋シート」を、パソナグループパビリオン PASONA NATUREVERSEで「iPS心臓」を展示!
みずから拍動する姿に、来場者の目はくぎ付け。iPS細胞を使う心臓治療法として世界初の製造・販売を目指す。
株式会社EX-Fusion 松尾 一輝 代表取締役(レーザー科学研究所「EX-Fusionレーザー核融合共同研究部門」協働研究副拠点長)
レーザー核融合による次世代発電に挑み、大型の資金調達を実現している阪大発スタートアップ。
大阪ヘルスケアパビリオンの「リボーンチャレンジ」に2週連続で出展し、また経産省等が主催する9月の「Global Startup EXPO」出展企業にも選出された。究極のクリーンエネルギーで、人類の未来に貢献する。
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株式会社アイ・ブレインサイエンス 医学系研究科 武田 朱公 寄附講座准教授
1週間で500人以上がアイトラッキング(視線計測)技術による「脳の健康度計測アプリ MIRUDAKE®」を大阪ヘルスケアパビリオン「リボーンチャレンジ」で体験。同技術を用いた神経心理検査用プログラムが大塚製薬株式会社から今年1月に販売開始されるなど社会実装が進んでいる。
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株式会社エルシオ 李蕣里(り・じゅんり)代表取締役CEO(元 工学研究科特任助教) 澁谷 義一取締役CTO(元 工学研究科特任研究員))
自動でピントが合うメガネ「オートフォーカスグラス」の開発で注目を集める。大阪ヘルスケアパビリオン「リボーンチャレンジ」への出展ブースでは、試作品の体験やフレネル液晶レンズ技術のアピールだけでなく「目のケア」に対する啓発も。
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産業科学研究所 永井健治教授提供
株式会社LEP 産業科学研究所 永井 健治 教授
「光る植物」が仄かに照らす和室を大阪ヘルスケアパビリオン「リボーンチャレンジ」会場内に設置。高光度発光タンパク質技術による“電気を使わない生活の実現”をビジョンとし、光る街路樹を御堂筋に実装することを目指す。
●レーザー核融合の「EX-Fusion」
●ワイヤレス植込型ブレイン・コンピューター・インターフェースの「JiMED」
●核酸医薬品開発の「ルクサナバイオテク」
●次世代型ロボットハンドの「Thinker」
●AI駆動型細胞分析技術の「シンクサイト」
主催:経済産業省、経済産業省 近畿経済産業局、近畿経済産業局、独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO))
大阪・関西を世界有数のディープテック・スタートアップ拠点に
既に2万2000社が生まれ、創出GDPも10兆円を超えた日本のスタートアップを、大阪・関西万博を起点に世界に飛躍させようという取組みが「Global Startup EXPO 2025」だ。国内外の最注目スタートアップ150社と世界中の投資家などが9月17・18日に万博会場内「WASSE」に集結。大阪大学発スタートアップも5社が選ばれ、存在感を示す。本イベント運営のキーマンであり、行政の立場から長年スタートアップ支援に取り組む是洞公紀氏に、大阪・関西のスタートアップの今後や大阪大学発スタートアップへの期待などを聞いた。
特許から見た技術分野での発明数では世界のトップを走る日本。スタートアップの成長ポテンシャルも高いものの、いかに海外からの関心を引き寄せ、資金や人材の国際的なネットワークを構築するかが課題だ。特に日本のスタートアップの大きな弱みは成長段階の資金不足。近年世界的に競争が激しいディープテック(先端科学研究をベースとした革新的技術)領域では、ビジネス化までに時間もお金もかかるが、資金調達額は欧米に比べて桁違いに小規模だ。これまでの国内スタートアップは、数も調達資金も圧倒的に東京が大きな割合を占めてきた。しかし是洞氏は「関西はディープテックの集積、大阪大学、京都大学など有力大学や研究機関、行政の連携、歴史ある文化、などアピールできるものが多く、今後、事業のシナジーを求める海外の巨大な投資ファンドを呼び込むポテンシャルがあります」と話す。
特に大阪大学発スタートアップは、298社(2024年度)を数え、東大、京大、慶應大に次ぐ国内4位。ライフサイエンスやレーザー核融合、量子コンピューター、ロボットなどディープテック領域で世界と戦える有望なスタートアップが多い。さらに、大学独自のベンチャーキャピタル(OUVC)を抱え、知財を含めたスタートアップ運営のサポート体制が整っていることから、是洞氏も「その研究力の高さ、世界的な競争力は大阪の財産とも言えます」と期待する。
大阪・関西万博の「Global Startup EXPO 2025」には、海外の有名なスタートアップ創業者や有力投資ファンド、ベンチャーキャピタルの幹部らが大阪に一堂に集まった。これを好機として9月にスタートアップウィークを展開し、万博会場外で多くのイベントを開催。関西の挑戦者たちが世界と響き合う場を多面的に創出した。「最近は海外の有力なスタートアップ支援企業やVCが関西に拠点を置く動きも出てきています」と是洞氏。手応えを感じているという。
国が進めるスタートアップのグローバル拠点都市(第2期)に「大阪・京都・ひょうご神戸コンソーシアム」として選ばれた京阪神。今後5年間で、バイオ、ライフサイエンス、グリーンテックなどの分野からユニコーン(未上場で評価額10億ドル以上の企業)5社を生み出す数値目標を掲げる。万博を契機に関西の強みを生かした地域エコシステムは強固になりつつある。ディープテック・イノベーションを起こす大阪大学発スタートアップへの期待は増すばかりだ。
(※本記事は、2025年10月発行の 大阪大学NewsLetter 93号 に掲載されたものです。 )