StoryZ

阪大生にも、研究者にも、卒業生にも誰しも必ずある“物語”
その一小節があつまると大阪大学という壮大なドキュメンタリーを生み出します。
それぞれのStoryをお楽しみください。

■多様性は、社会をどう変えるのか? その実像をデータで照らす


国際公共政策研究科 比較公共政策専攻 博士後期課程3年 池内 里桜 さん 

「ミュージカルの主役を黒人俳優が演じることで、人々の差別意識はどう変わるのだろうか」。そんな素朴な疑問が、池内さんの研究の原点だ。中学生の頃、大好きなミュージカルを観るためにやって来たニューヨーク。舞台では人種的マイノリティの俳優が主役を務める一方で、街では人種による格差や分断が存在している。そのギャップに触れ、「社会の中でマイノリティの存在感が高まることは、人々の意識や社会をどう変えるのだろう」という問いを抱くようになった。
研究対象は、人種やジェンダー。女性研究者や移民の増加など、多様化が進む現代社会では、これまで社会の中で目立ちづらかった人々が存在感を増している。しかし、それが包摂につながるとは限らず、時には反発や分断を招くことも。「マイノリティ集団の可視化」が人々や社会に与える影響を、アメリカの大規模データや国勢調査を用い、計量経済学や因果推論の手法で研究している。「自分の感情ではなく、まずはデータで客観的にアプローチしたい」。自ら設定したトピックの分析結果が、より大きな研究分野の流れにつながる手ごたえ。「研究の蓄積をもとに、社会が少しでも良い方向に変わればいいな」と語る。
アメリカ・プリンストン大学へ留学した際には、自ら研究会 に参加し、世界トップレベルの研究者たちと議論を重ねた。その経験を生かし、帰国後には大学院生主体の研究発表会を立ち上げ、新たな学びの場づくりにも取り組んでいる。来年以降は再びプリンストン大学へ渡り、研究を続ける予定だ。データから社会の複雑さを読み解き、多様な人々が共に生きる社会のあり方を探究する。その挑戦は、世界を舞台にさらに広がろうとしている。

ロングインタビューは こちら (※準備中)

■ものづくりの「なぜ」を追いかけて 流体力学で挑む、見えない現象の解明


基礎工学研究科 機能創成専攻 博士後期課程2年 河村 真佑 さん

大学院進学を機に関東から大阪大学へ。知り合いのいない関西への大きな一歩だったが、「新しい環境で研究に臨み、大学院だからこそできる流体力学の研究をさらに深めたかった」と河村さんは振り返る。「面白そう!と思った現象の背後で何が起こっているのか、試行錯誤して一つに繋がる瞬間がとてもおもしろいんです。結果が出ずきつい時も、その喜びで乗り越えられます」と笑顔で話し、基礎研究の醍醐味を感じているという。
現在は、自動車や航空機などに使われるギアボックス内部で、潤滑油の流れや圧力から、機械にかかる負荷やエネルギー損失を解き明かす研究に取り組んでいる。河村さんは、高速度カメラによる実験とスーパーコンピュータを用いた数値計算を組み合わせ、実験では見えない圧力や流れの変化まで緻密に可視化。液面をたたく瞬間や回転体周辺の圧力の偏りが、負荷を増大させる要因を明らかにした。
研究と並行して、自然科学系女子学生ネットワーク「asiam(アザイム)」の活動にも参加。オープンキャンパス等のイベントでは、中高生や保護者の相談に応じ、「目標が決まっていなくても、自分がワクワクすることを追いかけてみては」と、自身の経験を交えながら理系進学への一歩を後押ししてきた。河村さんの今後の目標は、ものづくりの現場で日本の技術を支える仕事に携わること。「大学で原理に向き合い、深く考え抜いた経験は、きっと産業界でも生きるはずです」。基礎研究で培った探究心を胸に、日本のものづくりを支える技術者として、新たな一歩を踏み出そうとしている。

ロングインタビューは こちら (※準備中)

■インターネットは、「土管」のままでいいのか? 高速で自由・公正なネットワークの実現を目指して


情報科学研究科 情報ネットワーク学専攻 博士後期課程3年 吉仲 佑太郎 さん

「インターネットは、人間がつくった世界最大のシステムなんです」。そう語る吉仲さんは、中学生の頃からインターネットに親しみ、「なぜ地球の裏側の人と瞬時につながれるのか」という純粋な疑問を抱いてきた。高校時代にはジョージ・オーウェルのディストピア小説『1984年』を読み、監視社会の描写が現実のインターネットと重なることに衝撃を受け、技術への興味と社会への問題意識を結びつけた。現在は、「高速かつ自由・公正なインターネット」の実現を目指し、通信を中継するネットワーク機器「ルーター」に計算能力を持たせる研究に取り組む。AI時代の膨大な情報処理に対応すると同時に、プライバシーを守りながら悪質な利用者への責任追跡も可能にする、新たなネットワークの仕組みを提案している。
「インターネットは、通信をつなぐ存在という意味で、技術者の間では『土管』と呼ばれています。しかし、これからのインターネットは単なる『土管』ではなく、ネットワークそのものが考え、判断し、人々を守る存在になれるはずです」。従来は別々に発展してきたネットワークシステムとセキュリティプロトコルの研究を融合させ、より安全で公正な通信基盤の実現に挑む。その成果はトップレベルの国際会議でも高く評価され、4大陸を結ぶ実証実験では、自ら設計した匿名通信技術の有効性を世界規模で実証した。何年も答えの見えない問いに向き合い、自ら手がけたシステムが動いた「一瞬の快感」が、次の挑戦への原動力になるという。「技術への探究心と、より良い社会をつくりたいというビジョン。この二つが、研究のモチベーションとして重なり合っているんです」。頼もしい吉仲さんの研究開発が、未来のインターネットに安心をもたらしてくれるだろう。

ロングインタビューは こちら (※準備中)


(本記事の内容は、2026年10月発行の 大阪大学NewsLetter 95号 に掲載されたものです)

のびやかでひたむきな阪大生の物語『 きらめきのStoryZ 』に戻る
阪大研究者、阪大生、卒業生の物語『 阪大StoryZ 』に戻る

share !