受け継がれる使命感のバトン
「キャリボトの理念は、『地球にも市民にもやさしい生活をマイボトルで!』です」。そう話すのは、今年度代表を務める三橋直央さん(工学部3年生)。現在の目標は、阪大生のマイボトル所持率90%。地球環境問題への意識を高める「意識づくり」と、誰もが日常的にマイボトルを使える「環境づくり」の両輪で、大学に新しい文化を根付かせようと活動している。キャリボト発足の2021年から掲げてきた大きな目標が、豊中キャンパスへの給水機設置だ。「豊中キャンパスは、新入生全員が大学生活をスタートさせる、学びの中心の場です。ここでマイボトルを使う習慣が身に付けば、その先にも広がっていくと考えました」。昨年度代表の柴﨑康成さん(工学部4年生)はそう語る。加入した2023年当時、メンバーはわずか5人ほど。それでも、環境問題の解決に不可欠な一人ひとりの行動変容を実現するため、先輩から受け継いだ「私たちがやらなかったら誰がやるのか」という使命感を胸に、大学全体を見据えた挑戦を続けてきた。
未来につながる種をまく
2023年夏、豊中キャンパスに期間限定で給水機を設置した。資金の制約で常設はできなかったが、学生の需要を確認できた。ここに、絶対に給水機を置きたい。2024年、常設化のための資金調達や協賛企業の獲得に動き出したキャリボト。しかし、活動は思うようには進まない。「それは学生団体ではなく、大学がやるべきことではないですか」。そんな言葉を投げかけられるたび、自分たちは何を目指す団体なのかを問い続けた。その時間こそが、キャリボトを大きく成長させた。全国の大学や学生団体の事例を学び、多くの教員からアドバイスをもらう。その中で理念を考え直し、たどり着いた答えは、「給水機を置くこと」ではなく、「マイボトル文化を広げること」こそが、本当の目的だということだった。理念を再認識したうえで、キャリボトは大学を動かすための提案活動に取り組んだ。全国の事例調査に加え、約800人の阪大生を対象にアンケートを実施。学生がどのようなキャンパス環境を求めているのか、どこに給水機があれば使いやすいのか。そんな声を丁寧に集めながら提案書を作成した。時間をかけて準備した提案書を大学へ届けた日のことを、柴﨑さんは今でも鮮明に覚えている。「提案を終えて大学本部を出た帰り道は、本当に晴れ晴れとした気分でした。ずっと抱えていたものを、ようやく届けることができたと思いました」。この時、すぐに見える成果は出なかった。それでも、多くの対話と試行錯誤を重ねた経験は、キャリボトの理念と実践力を育み、その後の新たな挑戦へとつながっていった。
阪大生のための“ほっと一息”を、このボトルに
2025年秋、キャリボトの活動は新たな展開を迎える。オリジナルマイボトルの制作プロジェクトだ。きっかけは、給水機設置に関する意見交換などを重ねていた大阪大学生協からの提案。「阪大オリジナルのマイボトルを一緒につくりませんか」と声がかかったのだ。キャリボトの理念を形にするマイボトルは、ずっと構想していた。絶好の機会。「阪大生が本当に持ち歩きたくなる一本」を目指し、学生目線でのデザインや機能性を議論。メンバー以外の学生の声も取り入れながら、具現化していった。デザイン制作には、大阪大学のブランディングを担う組織「クリエイティブユニット」が協力。“ほっと一息”をコンセプトに、阪大公式マスコット「ワニ博士」をアレンジした「ゆるワニ博士」シリーズを誕生させた。阪大OGの漫画家永峰ななみさんによるイラストをあしらい、大学らしさと日常での使いやすさを兼ね備えたデザインに。製造を担ったのは「象印マホービン株式会社」。2024年に給水機設置に向けた協賛企業を募っていた際、「資金面での協力は難しいが、別の形で一緒に取り組めることがあれば」と声をかけてくれていた縁が、プロジェクトの実現に結びついた。制作を振り返り、安藤優花さん(工学部3年生)はこう話す。「大学や企業の方々に失礼がないよう、責任感を持って取り組むことを常に意識し、その大切さを学びました。少し背伸びをして頑張らないといけなかったことが大変でしたが、失敗を恐れず果敢に挑戦する姿勢をキャリボトメンバーで共有できました」。完成した「ゆるワニ博士タンブラー」は、今年4月から大阪大学生協で販売され、学生や教職員、卒業生からも「めっちゃかわいい!」「こんな大学グッズが欲しかった!」と絶賛を集めている。
豊中キャンパスの給水機お披露目式にて熊ノ郷総長と
さらに今年6月19日には、キャリボトの悲願がついに実現した。全学教育推進機構が豊中キャンパスに給水機2台を設置したのだ。総長、理事、全学教育推進機構長らも出席し、盛大にお披露目式が開催された。マイボトルを持ち歩き、気軽に給水できる環境に近づいたことで、キャリボトが目指してきた「マイボトル文化」は新たな一歩を踏み出した。設立当初からメンバーも増え、工学部以外の学生も加わった。継続的な活動が評価され、6月から大学公認の課外活動団体に。「箕面キャンパスへも給水機を導入し、全キャンパスにマイボトル文化を広げることが今の目標です。その先には、大学だけでなく地域や社会にも活動を広げていきたいです」と髙瀨詞巴さん(工学部3年生)は未来を語る。学生のアイデアから始まった挑戦。実現するための一歩が、次の誰かの一歩を生み、教員、生協、企業そして大学全体を巻き込みながら形になってきた。その歩みは大学の枠を越え、マイボトル文化を社会へ広げる挑戦へと続いていく。
阪大OGの漫画家 永峰ななみさん作の「ゆるワニ博士」
■阪大マイボトル推進プロジェクト Carry My Bottle
2021年創設の課外活動団体。通称「キャリボト」。2023年工学部公認、2026年大学公認の団体に。給水機設置の提案や「ゆるワニ博士タンブラー」の企画・プロデュースなど、学生・大学・企業・生協をつなぎながら、マイボトルの文化を広げるために活動している。
[Web] https://carry-my bottle.notion.site
[X] @CarryMyBottle
[Instagram] @carrymybottleproject
(本記事の内容は、2026年10月7日発行の 大阪大学NewsLetter 95号 に掲載されたものです)
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