■参加者プロフィール
来場者にREBORNをご案内! 村田 果梨(むらた かりん)さん
外国語学部2年生。祖母から1970年大阪万博の話を聞いて育ち、「大阪ヘルスケアパビリオン」アテンダントに迷わず応募。採用されてから勤務日数の多さに気づいたが、こんなチャンスはない!と休学を決意し、万博の最前線に。
「夢洲キャンパス」通ってます! 佐渡 千春(さど ちはる)さん
外国語学部1年生。2005年の愛・地球博を楽しんだ母親に連れられ、4月に初来場。世界が丸ごと集う雰囲気に、ただただ圧倒された。以後、ほぼ毎週万博を楽しむ“超常連”に。大学では「万博スタディーズ」を受講。
未来のお肉、自分の手で! 荒木 志織(あらき しおり)さん
工学部3年生。高校時代から環境・動物保護問題の解決策「培養肉」技術に注目し、阪大工学部を志す。入学後も熱意を伝え続け、アルバイトとして培養肉の作製作業に携わることに。培養肉コンソーシアムメンバーと一緒に作り上げた「霜降り肉」が万博で展示中。
世界をつなぐ場を支え続ける! 小林 泰之(こばやし ひろゆき)さん
人間科学部4年生。2025年は万博に関わりたい!と狙って、富山から阪大へ。学生団体「a-tune(ええちゅーん)」運営スタッフとなり、9/27にいよいよ万博でコンサート開催! さらに、少林寺拳法部の一員としても会場内で演武し、万博づくし。
▶多様な個性・背景への心くばり
村田さん:今、私は休学して「大阪ヘルスケアパビリオン」のアテンダントとして働いています。そこで感じたのはソフト面・ハード面のどちらにおいてもユニバーサルデザインだということ。開幕前の研修でも、障がいを持つ人など多様な人が集まり、意見を交わしながら、誰にとっても快適に楽しめる会場づくりやサポート方法などを考え、形にしていきました。
小林さん:学生団体の立場でも、まさにユニバーサルデザインの意識は不可欠と感じます。音楽を通じた国際交流を目指す「a-tune」でステージ企画の運営を担当していますが、どんな方でも楽しめる導線や安全対策に配慮した会場空間が求められました。博覧会協会さんからの膨大なマニュアルと申請書類に苦労して計画をまとめ上げたので、9月のe-Symphony本番ステージ、必ず「大成功」させてみせます。
佐渡さん:私は毎週月曜日、通期パスで万博へ通っていまして。気づいたのは、いわゆる先進国などのパビリオンには、環境への配慮なのか現物展示ではなく映像展示が多いということ。展示内容そのものも、持続可能性の大切さを打ち出している国が多く、今回の万博はソフトレガシー(終了後にも残る目に見えない財産や効果)を意識しているのが特徴的だなと思います。
村田さん:初期のパリ万博の資料を見ていると、各国の産業や技術力をアピールする場だったことが分かります。今は「みんなで協調して豊かな世界をつくろう」という一体感が強いですよね。
佐渡さん:万博そのものの意義が変わってきていると、受講している「万博スタディーズ」の授業でも教わりました。たしかに、Z世代・α世代を意識したメッセージや、子どもにも分かりやすい展示など、未来をつくる人のための入り口がたくさん用意されているなと思いました。
荒木さん:世界にひらいた場所だからこそ、あらゆる人たちに、新しい技術や考え方に興味を持ってもらえる可能性がありますよね。例えば、私が展示にかかわっている「培養肉」の研究。3Dプリンターを使って、食用のお肉をつくるというものなんですが、中には「そんなお肉食べたくない」って思う人もいるかもしれない。でも、きっと地球全体で考えると将来絶対必要になる技術だと思うんですね。万博というオープンな場所で、研究成果の実物を前にすることで、年齢やバックグラウンドを超えて考えや意見を深め合えるんじゃないかと思います。
▶ 世界と未来をつなぐのは、人
佐渡さん:万博を通じて、外国語学部で言語を学んでいることの意義を感じました。特に、複数の国・地域がひとつの建物内で合同出展する「コモンズ館」が楽しくて。お国柄あふれる実物展示に囲まれている各国ブースの方に、現地のことばで話しかけるとすっごいニコニコが返ってきます。あと、外国の貨幣を集めるのが趣味なんですが、会話のネタになり盛り上がります。そういうのは、AI翻訳にはできないコミュニケーションだな、と。
村田さん:外国人ゲストの方から「すみません」って日本語で話しかけられると嬉しいし、私からも相手の母語で話すと心をひらいてくれる。その国のことばを口にするだけで、お互いにリスペクトが感じられますよね。私は小さいころから国際交流が好きで、今回の万博では各国のパビリオンスタッフの方にどんどん話しかけて、手づくりのアルバムにメッセージを書いてもらっています。言語は、あらゆる壁を超えてつながり合える架け橋になる。こうした交流が育まれるのは万博の素晴らしいところです。
荒木さん:科学技術の分野では、数式や化学式が「世界の共通言語」だけれど、狭い専門分野ごとの「方言」にもなりがち。今日みなさんの話を聞いて、多様な人と積極的にかかわって広く世界を見渡せる研究者になりたいと感じました。技術の発展は社会を変えてきたけれど、やっぱり人間だけの地球じゃないので、持続可能性を考えることがとても大事だと私は思っています。万博は、次の社会につないでいくための研究や技術のあり方を考える場になっていますね。培養肉ではないけれど、例えば藻類を活用した研究は複数のパビリオンで見かけました。刺激を受けて、挑戦したいという気持ちや行動力が湧いてきます。
小林さん:僕は万博を目指すa-tuneの運営スタッフを経験して、イベントを見えないところから支える役割に魅力を感じ、これを仕事にしようと決めました。来春からは、ビジネスイベントや国際会議、学会などの企画・運営を行う会社に就職します。新しい知見を共有したり、みんなで未来に向き合ったりする「場づくり」にこれからも力を注いでいくことで、社会をより良くしていきたいです。
佐渡さん:グローバル化が進み、国同士の関係は一層複雑になっているからこそ、さまざまな人が互いを尊重し、理解し合える社会になってほしいですね。万博は、その未来へとつながる気づきや出会いが生まれた場所。私はそこに、希望を抱いています。
(本記事の内容は、2025年10月発行の 大阪大学NewsLetter 93号 に掲載されたものです)
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