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ダイキン工業(株)との包括連携契約をきっかけとした インターンシップ活動

重要性増すメキシコ市場

メキシコの名目GDP総額は約1兆2000億ドル。日本と比べれば約4分の1にとどまるが、世界では15位と比較的上位にあり、G20にも参加する新興国として、存在感を示している。またメキシコは中南米諸国の中では比較的、政情が安定しており、日本とも伝統的に友好関係にある。一大市場のアメリカとも隣接することから、多くの日本企業が進出している。
ダイキン工業もその一つで、今後の空調市場の成長が期待されるメキシコに現地法人をもち、工場と営業拠点を置いている。従業員のほとんどは現地採用社員で、少数の日本人社員が現地の統括にあたっているという。
グローバルに展開する企業でも、現地語を流ちょうに話す社員ばかりを派遣できるとは限らない。ビジネスの場では英語が公用語になっており、ほとんどの商談は英語で通せるからだ。ただ、メキシコ社会では、英語を理解しない人が多いという。

40カ所もの販売店でインタビュー

大阪大学は、ダイキン工業との間で情報科学分野を中心とした包括連携契約を締結している。既に大阪大学の教授らがダイキン工業の中堅社員にAI教育を講義する「ダイキン情報技術大学」を開講するなど具体的な取り組みが進んでいる。
今回、文系分野の学生を対象としたインターンシップを希望していた大学側の要望もあって、中南米地域でのシェア拡大を図りたいダイキン工業が、現地でのインタビューを中心とした市場調査を企画し、その調査要員として、外国語学部スペイン語専攻の学生に白羽の矢が立った。包括連携の成果といえる。
学内での公募・選考を経て、5人の学生が選ばれた。学生たちは語学能力の高さはもちろん、歴史や経済、政治の情勢など文化的な背景を学び、メキシコ留学経験をもつなど、日常会話以上のスキルを有しており、直接、インタビュアーとして活動することが期待された。ダイキン工業本社でエアコンの基礎知識や市場動向などのレクチャーを受けたのち、3月末までの2週間、インターンシップ生としてメキシコに滞在した。
渡航費や日当まで負担する同社にとって、学生たちは単なる見学者ではない。メキシコ各地にある営業拠点に分かれ、社員とともに空調卸店や空調工事店、量販店、ホテル等のエンドユーザーなど計40カ所を回り、それぞれの担当者にスペイン語でインタビューした。ダイキンのエアコンに対するイメージはどうか、競合他社と比べてどうか、現地の需要に適合しているか――。さまざまな観点から、顧客からの生の声をスペイン語を駆使して直接聞き、市場の実態を突き詰め、課題を抽出し、それを英語でレポートにまとめ、最終日には課題に対する解決策を提案するプレゼンテーションを行った。学生にとっては、1日~3日で実施される一般的なインターンシップとは大きく異なり、2週間もの期間、ビジネスの最前線で実務経験を積むことができた。

通訳介さない「生の声」に評価

インターンシップ活動終了後、ダイキン工業の担当者からは「過去に同様の調査を行った際は、英語での聞き取りや現地法人社員を介しての聞き取りになる為、生の声を正確に得られないこともあった。しかし今回、学生が直接聞いたことを報告してくれたので、生の声として貴重な情報だった」との評価を得た。また「現地社員の人手不足もあり、販売店を一気に回ってインタビューを行うことも難しく、これだけの数のデータを集められたことは今後の中南米戦略に大いに貢献していただけた」との、感謝の声も寄せられた。短期間での報告書作成やプレゼンテーションなど、ビジネスにつながる能力にも高い評価をいただいた。
同社にとって、中東地域やアフリカ地域なども今後のターゲットだといい、さらなる展開にも期待がかかる。

インターンシップ参加者の声

海外勤務の実像を知った貴重な経験

外国語学部スペイン語専攻4年生
北村日向子さん
 
世界的な観光地として知られるカンクン地域で、ホテルの空調を更新する大規模な商談のプレゼンテーションに同席する機会を得ました。現地の営業と技術者が、メキシコでの知名度ではまだ劣るダイキン製品が、高い品質や省エネ性能をもつことを熱心にアピールしたところ、その場で相手方から好感触を得られたのです。感動的な場面でした。自分も、こんなビジネスの場で働きたいと思いました。
責任は重かったですが、単なる通訳でなく、社員の方と同じ方向を向いて働くことができたことは良かったと思っています。これまで、海外勤務に関する漠然としたイメージは持っていましたが、社員の方が「エアコンが好き、自社製品が好き」と誇りを持って営業活動に携わっている姿を間近で見られたのは、自分にとって貴重な経験となりました。

必要なのは語学力だけではない

外国語学部スペイン語専攻3年生
由井明日香さん
 
メキシコという、まだ空調機の市場が十分に広がっていない国で、これから市場を開拓していくための調査をする。そんな仕事にやりがいを感じました。毎日、自分の足で動いて、新たな発見ができたのが楽しかったです。
語学力があれば働ける場所や機会を増やすことができます。しかし、それだけでは足りないということにもまた、気づきました。例えば海外でマーケティングや市場調査をする上で、もちろん外国語を話せることは大切ですが、そもそもビジネスに関する知識やコミュニケーション力がないと語学力をうまく活かすことはできないのです。このインターンシップを通して、語学だけでなく自分に足りないものも多く発見できたので、残りの留学生活の中で得られるよう、頑張りたいと思います。

クレームにびっくり 生の声聞けた 

外国語学部スペイン語専攻4年生
三村日高さん
 
市場調査のために訪れた取引先で、相手方の担当者からいきなり、クレームを突きつけられ、面食らいました。不満は前々からあったようですが、これまでは英語でのやり取りだったため、十分伝えることができず、どうやら、私にスペイン語が通じるのを知って、本音が出たようです。お客様の生の声をしっかりと聞き、問題分析と今後の改善に着手するというマーケティングの基本を学びました。
実務には責任が伴います。数字や単位を間違えば、直接おカネにかかわるので、聞き取りも真剣です。社員として働くことの責任を強く感じた2週間でした。また、日本との時差が14時間もある中、スペイン語と日本語を使い分けながら日本の本社とやりとりする社員の方々の姿を垣間見て、海外で働くことのタフさ(大変さ)も実感しました。

自ら考え、行動するやりがいを感じた

外国語学部スペイン語専攻4年生
田中佑弥さん
 
決まった手順で業務をこなすだけではなく、自ら考えて行動に移すことを求められた点には、やりがいを感じました。ただ、事前研修はあったものの、製品や商流に関する知識不足は課題でした。そのため、本当の意味で質問項目の意図に気づけたのは1週間ほど経ってからで、貴重なインタビューの機会を有意義に使えなかったことを悔いました。
海外で働くことに関して、イメージが大きく変わりました。これまでは「言語ができればなんとかなる」という根拠のないイメージを抱いていたのですが、実際は仕事内容の深い理解なくしては役に立たないと気づくことができました。そして、仕事の深い理解は一朝一夕では成し得ないということも実感しました。今後も鍛えていきたいと強く思いました。

(2019年5月取材)

 

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