阪大StoryZ

阪大生にも、研究者にも、卒業生にも誰しも必ずある“物語”
その一小節があつまると大阪大学という壮大なドキュメンタリーを生み出します。
それぞれのStoryをお楽しみください。

学びは、道を拓く力を授ける。
そんな一味違う阪大での学びの教科書(ストーリー)

専門分野を究めつつ異分野を経験した 博士人材を社会へ
専門分野を究めつつ異分野を経験した 博士人材を社会へ

専門分野を究めつつ異分野を経験した 博士人材を社会へ

博士課程教育リーディングプログラム

「博士課程教育リーディングプログラム」は、優秀な学生を俯瞰力と独創力を備え広く産学官にわたりグローバルに活躍するリーダーへと導くため設けられた大学院の教育プログラム。履修生は各々の専攻で通常の学位を取得しつつ、さらに教育を受けるため2つの学位を取得するのに近い。大阪大学では2012年のスタートから5つのプログラムを積極的に展開。文部科学省からの補助金最終年度となる2018年度末にあたり、リーディングプログラムを振り返るとともに、今後どのように博士人材の育成を進めていくのか。小林 傳司理事・副学長に聞いた。

プログラムの意義

現在進んでいる5つのプログラムには、オールラウンド型人材を目指すプログラムと、複数分野を融合した人材を育成するプログラムがある。「両者の設計思想は違うが、共通点もある。一つには5年間一貫の博士課程教育であること、もう一つはアカデミズム以外の出口を視野に入れた人材の育成を行うこと」と小林傳司理事は語る。

海外では日本よりも博士人材が社会で活用され、リーダーとして組織を引っ張っている。「かつて日本は、欧米をまねることで発展してきたために、真のリーダー人材が極めて少ない。しかし現在の日本は、先進国であることを自覚して、自ら課題・ゴールを設定できるリーダーを自国で育てる必要に迫られている」と小林理事。

では、リーディングプログラムはリーダーを育てたといえるのか。「異分野と接触し視野が広がることで課題が見えるようになる。自分で考えること、様々な経験を積むこと、特に皮膚感覚で海外経験を重ねることはリーディングプログラムで相当実現できているだろう。現状に危機感を持っている企業ほど、我々のプログラムを知って学生へのオファーを始めている」

さらに、「専門を究めるのは当然として、何のための専門なのかを考えて欲しい。そうすると他の分野との共創も視野に入れつつ、その専門を社会の中で活かすにはどうすれば良いかを考えるようになるはず。それが重要」と今後のあるべき人材像を語る。


プログラムの今後と大学院教育

さらに、大阪大学は2018年に大学院教育改革ビジョンを定め、リーディングプログラムを取り入れた独自の教育システム改革を進めている。一つの専門分野を深掘りする、複数分野にまたがる学際的な学びに挑む、自分野を積極的に社会で展開する、という3つのアプローチから研究スタイルを選べるよう、カリキュラムを改革する。

リーディングプログラム自体の補助金は終了するが、大阪大学は独自に国際共創大学院学位プログラム推進機構を設置し、財源を確保、関係部局と連携しながらプログラムを継続させる。

 

変わる博士人材

大学院に対して社会、産業界は、研究の卓越性、イノベーションを生み出す力、地球規模の実践的な問題解決力の充実を求めている。今後、日本の国力を維持し、国際的なステージで活躍する人材を育てるためには、複合領域型あるいはオールラウンド型の博士人材を育てていかねばならない。小林理事は、関西経済連合会の企業団体との意見交換の場でも「大阪大学は、専門分野に閉じていない学生を育てている」ことをアピールしている。博士人材の進化はもう始まっている。

 

修了生インタビュー

「問いを立てる力」を培った

 三菱総合研究所 環境・エネルギー事業本部
研究員・高田一輝さん
(超域イノベーション博士課程プログラム/工学研究科  2017年度修了)

 大学入学時から「これが自分の専門だ」と、自他共に認められる学問領域を確立したいと思っており、自然と大学院へ進学しました。ですがその反面、「専門外の人とも交流したい」という思いもあり、超域に応募しました。

 プログラムで印象に残っているのは、『イノベーション総合』という授業。「ある地域の過疎化」を題材に、「過疎を問題としてとらえているのは誰か」、「その誰かは過疎を解決するという方法以外では満足しないのか」という問いを立てるなど、社会問題の本質を考える機会になったと思います。

 現在、会社では研究員として、環境・エネルギー分野の課題について官公庁・企業を対象に調査研究やコンサルティングを行う部署で働いています。大学院時代、河川や廃水などの水環境を浄化する技術について研究していた専門性を活かし、主に上下水関係の案件に携わっています。問題の本質を捉えたうえで、論文や専門家からの情報をわかりやすくお客様に報告するために、超域で培った「問いを立てる力」が役立っています。今後は、まず一人前の研究員になって、自ら調査案件の提案をしたり、お客様や有識者の先生方と丁々発止の議論を繰り広げたいです。

 

企業インタビュー

高い意欲知的好奇心にあふれたグローバルリーダー人材の輩出に期待

パナソニック株式会社
宮部義幸 専務執行役員

超域イノベーション博士プログラムの構想に関わったことがきっかけで、同プログラム外部評価委員を務めました。リーディングプログラムの履修生は、高度な専門力(博士)を有しながらも、高い意欲と知的好奇心で活動領域に制約を設けない。また、新たな問いを見出し挑戦する人が多いのも特徴だと思います。当社にも、修了生に就職していただきましたが、ビジネス戦略強化の施策について自ら提案するなど、若手社員とは思えない活躍ぶりです。

 現在、日本企業の多くが、世界で同時多発的にゲームチェンジが起こる現状を認識しつつも、戦後の高度成長を支えた古い体制や、成功体験からの脱皮に苦戦しています。そのため、グローバル視点で社会課題とビジネスを結びつける意欲、先人から学びつつ自ら考え抜く姿勢、失敗や異質を恐れない度胸、周囲を巻き込む熱意をもった人材を求めています。リーディングプログラムでは豊富な海外実習に加え、曖昧な課題への取組みや、異分野との協働を多数経験でき、企業の求める人材育成につながっているのではないでしょうか。

 今後は企業も、インターンシップ等を通じ、学生との相互理解をより深め、新卒定期採用にとらわれず、優秀な人材の確保に向けた柔軟な雇用策を検討する必要があると考えています。大阪大学には、グローバルリーダーの輩出を今後も大いに期待しています。

 

(本記事の内容は、2019年2月大阪大学NewsLetterに掲載されたものです)

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