StoryZ

阪大生にも、研究者にも、卒業生にも誰しも必ずある“物語”
その一小節があつまると大阪大学という壮大なドキュメンタリーを生み出します。
それぞれのStoryをお楽しみください。

大学アメフト最高峰のリーグへ

関西学生連盟の1部リーグ(8チーム)は、大学アメフト界において最高峰リーグと目される。大阪大学は過去に昇格経験はあるものの、今回の昇格は実に38年ぶりだ。

23年シーズンは2部(8チーム)総当たり戦で序盤から破竹の勝利を重ね、最終的に6勝1敗で優勝。入れ替え戦に進み、勝利した。歓喜に沸き、感涙にむせぶスタジアム。「すごいことが起こっている」。勝利の瞬間、当時3年生だった元木さんは呆然とした。

大学アメフトの主要シーズンは秋から始まる。1部も8チームが1試合ごとの総当たりで戦い、上位3チームがトーナメント制の全日本大学選手権に駒を進める。全国8地区を勝ち抜いた12チームがしのぎを削り、12月に日本一を決める。

誰一人欠けても成り立たない“究極のチームスポーツ”

アメフトは楕円球を持って相手陣地に攻め入り、点を取り合うスポーツだ。攻守が完全に分かれており、フィールド上の1チーム11人は攻撃時と守備時でメンバーが全員入れ替わるのが基本。プレー中に試合時間(時計)が止まる「間」が多くあるのも特徴で、スタッフリーダーの大西裕子さんは「激しいプレーの間に、選手たちが戦術を確かめる『沈黙』の時間があるのも格好良いんです」と話す。防具をまといぶつかり合うフィジカルの高さだけでなく、多彩な戦術も重要で、身体能力と頭脳のどちらも高いレベルが求められる。守備陣最後の砦とも言えるディフェンスバック(DB)を務める松田貢輝さんは「瞬時の判断が必要。フィジカル、知力どちらを鍛えても必ず成長を感じることができます」と語る。

また、戦うのは選手やコーチだけではない。専門分化したスタッフの能力も勝利を大きく左右する要素であり、その細かい役割分担もアメフトの特徴だ。選手のトレーニングや栄養指導などを担うTR(トレーナー)、対戦校の試合映像を徹底的に分析し戦術を策定するAS(アナライジングスタッフ)、練習のタイムキーパーやビデオ撮影などチーム運営全般を担うMGR(マネージャー)など、フィールドで戦う選手はもちろん、それを支えるメンバーも、誰一人欠けても成り立たない。体を張ってほかの選手を守るオフェンスライン(OL)を担う元木さんは、アメフトを「究極のチームスポーツ」と表現する。ポジションごとの分業制がハッキリしているからこそ他のスポーツ以上にチーム力が試され、一体感もあるのだという。

強みは、勝つためのミッションを各自が考え遂行する力

大阪大学は「学生主体」で、それぞれが責任感を持ってミッションに取り組んでいる。監督やコーチはOBらが仕事と掛け持ちして担ってくれているだけに、なかなか練習に来られないことが多い。だからこそ、自分たちでチームを作り上げる必要があるのだという。

2年生の松田さんは「みんなが同じ方向を向いて取り組みやすく、下級生の意見もくみ取ってくれる」と話す。元木さんは「ポジションごと、プレーごとの責任者を置くなどして全員に役割を割り振っています。どう戦うか、どうやって自分の役割を遂行するか考えることができる。そんな『真面目さ』が一番の強みかもしれません」と分析。大西さんは「スタッフもどうすれば勝利につながるか考えて自主的に動いています。学生主体だからこそ、考える力が身についていますね」と話す。

そんな中、23年にOBの西尾慎太郎氏が監督に就任。東京から通う形にもかかわらず、練習にも頻繁に顔を出して選手とコミュニケーションを取ってくれるようになり、更にチームの土台が強固になってきているという。1部昇格の際に大号泣したという西尾監督は「(次に目指すのは)絶対に日本一でしょ」と、選手の更なる飛躍を期待している。



38年ぶりに頂点に続く道

選手権に進む枠があるのは1部リーグだけ。2部からは、どう頑張っても道が頂点につながっていなかった。だから「先輩たちは日本一を志せなかったという無念があるはず」と元木さん。しかし、1部昇格の年に日本一というのは前例がない。部内でもいろいろな意見が出たが、挑戦する機会があるならば日本一を目指すべきだと、全員で覚悟を決めた。

その先の目標は、チームの「ブランド化」だ。元木さんは「日本一を冠したこともある京都大のアメフト部は同じ国立大でも『ここでアメフトがしたい』と志す選手がいる人気チーム。そこを目指します」と力強く宣言。「1人でゲームの流れを変える突出した選手はいませんが、チームとしてのまとまり、気持ちの強さでは負けません」と意気込む。松田さんも「スタッフ含めて、全員が動かないと成り立たないスポーツ」だと団結力を強調する。

スタッフを束ねる大西さんは「最上級生になって感じるのは、OB・OGの方々の支えです。みなさんへの感謝の気持ちを忘れずに、多くの人が『応援に来てくれるチーム』になりたいと思います」。

今年のチームスローガンは「We will」。込めたのは「日本一になるということを、まずは自分たちが信じよう」という思いだ。

この秋、新しい歴史を切りひらく1歩を踏み出す。



■ 大阪大学体育会アメリカンフットボール部

1967年創部。部員はスタッフ含めて約100人。大学から競技を始めた学生も多い。2008年に大阪外語大との統合でチーム名をトライデンツにした。社会人Xリーグの山﨑丈路選手(オービックシーガルズ)や量子情報・量子生命研究センターの根来誠准教授(14,15ページ)など多彩な人材を輩出している。

[Web/各種SNS] https://linktr.ee/outridents

※撮影(メイン画像左側女性):北川直樹さん

(本記事の内容は、2024年9月発行の大阪大学NewsLetter91号に掲載されたものです)

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