StoryZ

阪大生にも、研究者にも、卒業生にも誰しも必ずある“物語”
その一小節があつまると大阪大学という壮大なドキュメンタリーを生み出します。
それぞれのStoryをお楽しみください。

「国公立の星」として私立強豪に挑む

 関西学生ゴルフ連盟の学校対抗戦(男子)は4部制。1部当たり6大学が所属し、下の部の上位校が上の部の対抗戦(春と秋の年2回)に出場し、6位以内に入ることで入れ替えとなる。2部では3部の1、2位校を併せた計8校で対抗戦を行い、上位6校に入れば昇格という仕組みだ。登録メンバー7人の内、5人が出場。18ホールを回り記録の良かった4人のスコア(打数)が採用され、2日間・36ホールの合計打数の少なさを争う。

 大阪大学は長らく3部。2部の対抗戦に出場したことは何度もあったが、そのたびに私立校の壁にはね返されてきた。しかし、22年秋に2部6位で初昇格。23年春も6位で2部をキープし「国公立の星」として存在感を示しつつある。

 2部とはいえ、上位校の選手は打数が60台、ほとんどの選手が70~80台で18ホールを回る。大学に限らずアマチュアゴルファー全体でも70台で回れる人は数%、80台でも十数%程度しかいないという調査もあり、レベルの高さがうかがえる。彼らはいかにして私学の壁を乗り越え、進化を続けているのか?

「弱みしかない」を乗り越えたい

 「弱みしかないと思っています」。ゴルフ部の強みを尋ねられ、主将の鈴木佑生丸さんは意外にもそう答えた。

 9割以上が大学からゴルフを始めた初心者という部員構成。和気あいあいとゴルフを楽しめる環境は整っていた。

 しかし、試合となると話は別。出場を希望する部員は少数で、その存在を知らない部員さえいた。出場しても、スポーツ推薦組をそろえた強豪私学には歯が立たない。勝ち目なしの「弱みしかない」状況だった。

 「やるからには試合でも結果を残したい」。中学・高校とゴルフ部で経験豊富な鈴木さんを中心に「楽しくゴルフをする雰囲気は残しつつ、試合での結果も求める部にしよう」と、昨年から改革に着手した。

着実な改革で図るチーム力向上

 勝つにはどうすればいいか。まず、出場メンバーの選出方法の刷新に着手。ゴルフは技術や体力に加え、自然と対話し、自分自身と向き合うスポーツ。性格や特性など多様な面が影響する。従来の学年やスコア順での単純な選抜方法に替えて、選考会での完全実力主義を導入した。

 大学からゴルフを始め、メンバー入りの経験がある副主将の高橋璃恩さんは「選考会を開き、一度きりでなく2~3か月の複数回のスコアを取ります。また、試合会場は様々なので、ゴルフ場の特徴にあわせて距離が出る人を優先したり、得意なプレーがマッチしている人にしたりと多様な面を考慮することにしました」と話す。どの指標を重視したのかなど基準を明確にすることで、透明性と持続可能性にも留意している。

 次に、部内の意識改革に取り組んだ。これまでなかった全員参加のミーティングを設け、通信アプリのグループ投稿で試合情報の共有など、情報共有を徹底し、部全体で一つの方向を向ける工夫を重ねた。練習時の班分けでは意識的に学年が混ざりあうようにすることで技術の伝達を促し、交流を深める効果もあった。目指すものがバラバラだった部員たちの意識は次第にひとつになった。

 実力は当然ながら練習量に比例する。練習環境の整備にも乗り出した。協賛してくれる練習場を探して利用料金を抑え誰でも参加しやすくしたほか、荒れ地だった豊中キャンパスの学内練習場を自ら整備。初心者向けに「練習メニュー」も手作りし、部全体のレベルの底上げを進める。

 一連の改革の甲斐あって「試合に出てみたい」と声を上げる部員が増加。現在は10人以上でメンバーの枠を競い合い、スコアも伸びているという。

 高校まではテニス部で、大学からゴルフを始めた上奥麗央さんは「代々、上下関係の厳しさはなく、雰囲気は良かった。今は、競技に『ガチ』で取り組みつつ、楽しむ時は楽しむメリハリのある雰囲気が作れています」と話す。

選手層を厚くし、学業との両立を

 改革の結果が着実に出ているようだが、3人は「まだまだ道半ばです」と語る。国立大学ならではの、学業の悩みも尽きない。部活の試合に公欠が適用されないため、平日に行われる大会には出られないことも多く、試験期間中は数週間に渡って出場が難しくなる。また、スポーツ推薦入学の仕組みがない大阪大学は経験者なしという世代もあり、毎年戦力が供給される私学とは構造が異なる。鈴木さんは「学業との兼ね合いや、経験値の差で常にベストメンバーが出場できる保証がない。だからこそ、誰が試合に出ても結果を残せるように選手層を厚くしていく必要があります」と力説する。次の課題は、継続して強くなるため部としての仕組みをしっかりと作ることだ。

 部内の士気は上がり、経験者を含む女子部員も大きく増えた。まだ2部の上位校とは実力差があり「1部を狙う」とは簡単に言えない。だから「一つずつ順位を上げていくのが大事。まずは5位を目指して精進します」。宣言どおり、取材後の9月の大会でチームは5位に。ゴルフ部が大輪の花を咲かす土壌作りは、着々と進んでいる。



■大阪大学体育会ゴルフ部

1972年創部。関西学生ゴルフ連盟2部(男子)。23年9月現在で男女58人が在籍。気軽に競技を始めてもらおうと体験練習会なども実施している。文系、理系問わず幅広い学部の学生が所属しているのも魅力。今年度からスポンサーを集めようと活動中で、ベンチャー企業などから支援を受けている。

[Web]https://www.handai-golf.com/


(本記事の内容は、2023年9月発行の大阪大学NewsLetter89号に掲載されたものです)

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