StoryZ

阪大生にも、研究者にも、卒業生にも誰しも必ずある“物語”
その一小節があつまると大阪大学という壮大なドキュメンタリーを生み出します。
それぞれのStoryをお楽しみください。

初心者ばかりで誰もが輝く可能性

 競技自体を知らない人も多いだろう。「大学で始める人がほとんど。ほぼ全員が初心者なので、誰でも活躍できる可能性があります」。男子主将の井元祐亮さんはそうアピールする。

 アルティメットは1968年に米国で生まれ、非五輪競技の国際総合大会「ワールドゲームズ」の正式競技。7人対7人で行われ、100メートル×37メートルのフィールドで攻撃側がフライングディスクをパスしながらつなぎ、相手陣のエンドゾーン(18メートル)でディスクをキャッチすれば得点となる。ディスクが地面に落ちたり、相手に奪われたりすれば攻守交代。女子主将の長谷川茉南さんは「ディスクを持って歩けないので、バスケットボールやサッカーのようにエース1人がドリブルで進むのではなく、みんなでつないでいくのが楽しい」と説明する。

 井元さんは高校まで陸上競技の短距離選手で、長谷川さんは小学校でサッカー、中学と高校でバスケットを経験。高校時代に野球部だった男子副将・高井歩夢さんは「サッカーやバスケットの経験者は俯瞰的な視点でプレーし、野球経験者は投げるのがうまく、陸上経験者は瞬発力がすごい。いろいろな競技の経験者が集まって一緒にプレーするのも魅力」と指摘する。

身体能力の差を頭脳戦で補う

 全体練習は豊中キャンパスグラウンドで男子が週3回、女子が週2回。井元さんは中学、高井さんは高校の授業でアルティメットを習って興味を持ち、長谷川さんは1年生時の体験会を機に入部した。高井さんは「僕はどの競技でもいいから、全国大会に行きたかった。過去の先輩たちの成績を見て、全国大会に出られると思って入部しました」と明かす。

 彼らの1年先輩の現4年生は今年3月に山梨県山中湖村であった男女混合の第2回全日本大学ミックス選手権で、6校総当たりリーグ戦に優勝。井元さんたちも同月に静岡県掛川市で開催された第4回全日本U21選手権に出場し、男子は15チーム中4位、女子は16チーム中4位と好成績を残した。100メートルのフィールド内を何往復もする持久力、相手を振り切る跳躍力、狙い通りにディスクを投げ込む力など、あらゆる運動能力を求められる激しいスポーツだけに、阪大は体育大など強豪私学に比べてフィジカルの面で劣るのは否めない。長谷川さんは「1対1のマンツーマンディフェンスでは身体能力の差が出るので、ゾーンディフェンスでスペースを全員で分担して守る。作戦、戦術の勝負に持って行くのが阪大の強み」と強調する。

スピリット・オブ・ザ・ゲーム

 この競技は「スピリット・オブ・ザ・ゲーム」(各選手のフェアプレーに対する責任感)という基本理念があり、審判を置かないセルフジャッジ制を採用する。判断の難しいプレーがあった場合は両チームで1分間議論し、結論に至らなければ、その一つ前のプレーに戻る。「選手たちがルールをしっかり把握しないといけない。ルールを詳しく知らないと、議論でも不利になります」と井元さん。フェアプレー精神を育み合いながら、さらなる高みを目指して鍛錬を続ける。

「究極」のスポーツ 頭脳戦で初の大学日本一に

■大阪大学アルティメット部

男子は2005年、女子は07年に同好会としてスタートし、16年12月に体育会に昇格した。チーム愛称は男子が「ENN」(エン)、女子が「cerchio」(チェルキーオ)で、チェルキーオはイタリア語で「円」の意味。2022年3月の第2回全日本大学ミックスアルティメット選手権で初優勝した。現在の部員は64人(男子39人、女子25人)。

[Twitter]https://twitter.com/enn_cerchio

[Instagram]https://www.instagram.com/accounts/login/?next=/enn_cerchio/

「究極」のスポーツ 頭脳戦で初の大学日本一に


(本記事の内容は、2022年9月発行の大阪大学NewsLetter87号に掲載されたものです)

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