StoryZ

阪大生にも、研究者にも、卒業生にも誰しも必ずある“物語”
その一小節があつまると大阪大学という壮大なドキュメンタリーを生み出します。
それぞれのStoryをお楽しみください。

あらゆる要素を持ち合わせた武道

半世紀以上の歴史と伝統を持つ大阪大学少林寺拳法部で初の女性主将となった野口燿さん。「第56代主将」ともなれば、さぞかし長い経験の持ち主だろうと思いきや「大学に入ってから始めました。初めて見た演武で、技の速さや動きにハッとさせられて」と振り返る。

空手の突きや蹴り(剛法)、柔道の投げや関節技(柔法)の要素を織り交ぜた総合格闘技である少林寺拳法には、様々な技を演じる「演武」と実際に戦う「運用法」がある。部員の約7割が初心者という同部は演武が中心。高校ではバスケットボール部だった小原和咲さんも「オンライン練習を見て、体験に行きました。初めて見る演武のかっこよさに一瞬で虜になって。『型が決まっている』と感じさせない、まるで本当に戦っているかのように見える華麗さが魅力ですね」と、大学から第一歩を踏み出した。

引き継がれる丁寧な指導

剛法、柔法合わせて600種にも及ぶ技法の中から、級や段位によって使える技を組み合わせて自由自在に繰り出す演武は実戦さながら。男女問わず2人1組で演じる「組演武」は、ともに半年以上かけて技や動きを練り上げていく。「何度も練習を重ねるうちに複雑な技も基本形の応用だと気付く。どこまでも極められ、完成しないところが面白い」と野口さん。8人の大人数で演じる団体演武は、まさに絢爛。「何物にも代えがたい達成感が味わえる」。格闘技経験者の中根壮一朗さんも、そんな演武の魅力に取りつかれた一人だ。

先輩から後輩へ、手取り足取りの指導は代々受け継がれてきた部の伝統だ。練習は週4回、懇切丁寧な指導と豊富な練習量が部員たちの成長を支える。周囲からは『阪大は基本に忠実』と評判だ。武道である以上、礼儀作法にも重きを置く。毎年の夏合宿では円陣を組み、突き蹴りを計1000回繰り返す「千本突き」が名物。中根さんは「お互い仲間同士の絆が強いから、どんなにつらいことでも乗り越えていける」と言う。

優勝で知る楽しみと達成感

2019年夏、目標とする七大学総合体育大会(通称:七帝戦、七大戦)で総合優勝。「結果が全てではないが、大会で足跡を残すことで自信も生まれる。部員全員が楽しむこと、達成感を感じることが一番大切」と野口さん。コロナ禍で中止が続く七帝戦だが、次回大会での連覇に向けた意気込みは高い。

「ハードルは高くみえるが、初心者でも日々成長を感じられる。大学で新しいことを始めたい人にぴったり」と野口さんが言えば、小原さんも「男女や経験を問わず、誰にでもできることが魅力。身体が小さくても力が弱くても、相手の力を利用して倒すことができる」と力を込める。そして、部員全員の願いを中根さんが代弁する。「少林寺拳法の魅力を一人でも多くの人に伝えたい。一度でも見てもらえれば分かってくれるはず」。言葉の端々に、思いがあふれている。

完成しないおもしろさ 責任感を胸に受け継ぐオリジン

●大阪大学少林寺拳法部

大阪大学少林寺拳法部 1965年に少林寺拳法同好会として創設し、67年に体育会クラブに昇格。72年から参加する七大学総合体育大会では、2019年6月の第58回大会で総合優勝を飾った。現在の部員は19人(男子13人、女子6人)。

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完成しないおもしろさ 責任感を胸に受け継ぐオリジン

(本記事の内容は、2022年2月大阪大学NewsLetterに掲載されたものです)

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