スポーツであり、芸術であり
「全く知らない世界でしたが、楽しそうな先輩方にひかれました」と話すのは主将の襟立智暉さん。高校時代バスケットボール部だった市川馨さんは「スポーツでありながら芸術性も求められ、奥が深い」と語る。
競技ダンスには、男女が決められた組み方で踊る「スタンダード」と、ポジションを自在に変えながら踊る「ラテンアメリカン(以下、ラテン)」の2種類ある。1年生で両方練習し、2年生でどちらかを選ぶ。
「最初に習うのはワルツとルンバ。どんどん興味がわいて他の種目も覚えていきます」と中島克也さん。「先輩方のデモンストレーションを初めて見た時に『ラテンがやりたい!』と思いました」と表情豊かな笑顔で話すのは染次優香さん。希望どおりラテン担当となり、襟立さんとペアを組む。市川さんと中島さんはスタンダードのペア。「私たちとは正反対で、情熱を内に秘めている」とは染次さんの評だ。
強さの秘密は「主体性」
全体練習は、週2回。夏合宿や強化練習会もあるが、昨年度は、感染症拡大のため大半が活動中止を余儀なくされた。
ペアで踊ってこその競技ダンス。全国大会に向けて、どうやって技術を磨き、モチベーションを維持したのか。4人が口にしたのは、やはり「先輩の姿」だった。
「先輩方が皆、自分が必要なことを理解し努力を重ねていた。僕らも頑張らねばと思いました」と襟立さんは力を込める。市川さんは、強さの秘密を「主体性があること」と言う。「個性を伸ばすことがチームの多様性を生み、刺激になります。個人競技とも団体競技とも違うけれど、共通の目標をもっているから団結しています」。テクニックもさることながら、「内に秘めた熱意」が代々引き継がれているのだろう。久しぶりにペアで練習した日のことを染次さんは「とても新鮮で、組めるだけで嬉しかった」と振り返る。純粋な喜びが技術の向上、総合優勝へとつながった。
全員初心者から。誰にでも全国優勝のチャンス
今は後輩たちを育てる立場。しかし新入生勧誘も指導もままならぬ状況は続く。
後輩たちには「自分が楽しまないと、観ている人を楽しませることはできない。だからまずは自分が楽しんでほしい」と襟立さん。その秘訣を「『誰よりも姿勢がいい』『私の笑顔を見て』とか何でもいいから一つ自信のあることを見つけて、そこを伸ばしてほしい」とペアの染次さん。競技ダンスの魅力を「様々なタイプの人がいる懐の深さ」と中島さんが語れば、市川さんは「競技ダンスを始めるのは、ほぼ全員が大学から。全国優勝は簡単ではないけれど、誰にでもチャンスがある。新しいことを始めたい人に勧めたい」と息のあった答えで締めてくれた。彼らの言葉には、競技ダンスに真摯に向き合ってきた想いと、一歩ずつ高い目標まで歩んできた者ならではの説得力があった。
最後の大会出場・連覇に向け、鍛錬を重ねる日々が続く。
● 大阪大学舞踏研究会
創立1965年。男女ペアで踊り、その技術を競う「競技ダンス」に取り組む大阪大学の公認団体。現在の部員は約40人。2020年12月、第65回全日本学生競技ダンス選手権大会の団体の部で初の総合優勝を飾った。21年7月の大会では惜しくも準優勝。
(本記事の内容は、2021年9月大阪大学NewsLetterに掲載されたものです)
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