StoryZ

阪大生にも、研究者にも、卒業生にも誰しも必ずある“物語”
その一小節があつまると大阪大学という壮大なドキュメンタリーを生み出します。
それぞれのStoryをお楽しみください。

言語の壁を超え、41の国と地域の人々が音を奏でるオンラインオーケストラ。

―竹花さんが副代表を務めるa-tuneは、念願の舞台である大阪・関西万博での公演を先日無事に終えられました。改めてお疲れさまでした!

どうもありがとうございます!ずっと目指してきた万博の舞台で演奏できて、本当に感慨深かったです。

―当日のお話も詳しくお聞きできればと思いますが、まずはa-tuneとはどんな団体なのか、教えていただけますか?

a-tuneは、音楽を通じた国際交流を行う学生団体です。大阪大学2025年日本国際博覧会推進委員会の学生部会の一つとして、2020年10月に発足しました。海外の学生とのオンラインオーケストラ「e-Symphony」を通して、私たちの活動理念である「UNITY」=「各個人が自分とは異なる相手の立場、背景を尊重しあえる社会」の実現を目指しています。現在は、阪大生のメンバーが28名で、延べ218名が41の国と地域から参加してくれています。

―活動理念「UNITY」を実現するための手段として、音楽があるんですね。

はい。国際交流をするときに、どうしても言語という壁がありますよね。でも、音楽なら言語の壁を超えて、誰でも楽しめます。

―「e-Symphony」の「e」は、オンラインでの合奏を表しているのでしょうか。

そうです。大阪・関西万博の舞台では、万博会場のフェスティバル・ステーションとドイツ、ハンガリー、フィリピンをオンラインでつないで合奏しました。それから、世界各地で事前に撮影した演奏動画も流して、一緒に音を奏でました。

「e」が付いているもう1つの理由は、「ParoTone(パロトーン)」という電子楽器を使うからです。ParoToneは、阪大発のスタートアップ・ eMotto(エモット)株式会社が「挫折せずに演奏できる楽器」を目指して開発したもの。操作が簡単で、楽譜が読めない人でも演奏できるんです。音楽経験が全くない人にもa-tuneに参加してもらえるように、ParoToneを取り入れています。


電子楽器ParoTone(パロトーン)を演奏する竹花さん

―ParoTone、初めて耳にする楽器です。楽譜が読めなくても演奏できるのは素敵ですね!

実を言うと私の場合は、昔からピアノを習っていたので、ピアノとParoToneでは鍵盤の並び方が違っていて、最初は戸惑いました(笑)。でも私のように音楽経験がある人ばかりではないので、ParoToneがあることで、初めて楽器に挑戦する人のハードルが下がるのはすごく良いなと思っています。a-tuneに参加する人たちの間口も広がりますから。それに、ParoToneはボタン1つで和音を奏でたり、鉄琴のような鍵盤打楽器のほか、管楽器や弦楽器の音を鳴らすこともできるので、演奏表現の幅が広がって面白いですね。

―ちなみに、素朴な疑問なのですが……オンラインで合奏しても、音はズレないんですか?

皆さん疑問に思われるようで、よく質問されます。実はa-tuneの設立当時から、音のズレという課題はありました。何の工夫もなしにオンラインでつないで合奏すると、例えばドイツから日本に音が届くのに、0.5秒ほど遅れてしまうんです。だからドイツは0.5秒早く演奏を始めて、音がぴったり合うようにするという「同時演奏スクリプト」と呼ばれるプログラムを、a-tuneの技術班のメンバーが開発してくれました。今の方法に至るまで、長年にわたって試行錯誤が続いていましたが、2024年12月に開催したイベント「e-Symphony for 2024」で、遅延の問題を大幅に解消することができました。


学内での練習風景

高校時代から憧れていた国際交流を実現するため、a-tuneに参加。

―竹花さんがa-tuneに参加したきっかけを教えてください。

子どもの頃から海外に興味があって。でも高校時代はコロナ禍で、海外の人たちと交流する機会がなかなかありませんでした。だから、大学では国際交流をしてみたいと思っていたんです。それから、私は長野県出身で、大学進学で初めて関西に来たので、関西や大阪でしかできないことに挑戦したいという気持ちがありました。そんなときに出会ったのがa-tuneです。国際交流ができて、しかも大阪・関西万博に参加できると知って、参加を決めました。昔から音楽をやっていたのもあって、自分にすごくぴったりだなと思いましたね。

―自分のやりたいことにマッチする団体に出会えたんですね。これまでa-tuneとしてどんな活動をしてきたのでしょうか。

a-tuneはこれまで、目標とする万博の舞台に向けて、年1回オンラインオーケストラの演奏会「e-Symphony」を開催してきました。「e-Symphony for 2022」は、OSAKA光のルネサンス2022の連携事業として大阪市中央公会堂で、2023年と2024年は池田市民文化会館アゼリアホールで行いました。他にも、大学祭などの学内イベントや地域の催し、万博関連のイベントでも演奏やブース出展を行ってきました。

―竹花さんは2年生からa-tuneの副代表を務めていましたが、副代表としてはどんな活動をしていましたか?

副代表になってからは、代表や他の幹部メンバーと共に、チーム全体を見ながら運営していく役割を担っています。また、外部の人たちとの交流やイベント登壇の機会もあり、万博関連のフォーラムでパネルディスカッションに参加するなど、貴重な経験もさせていただきました。あとは、演奏会の開催や万博への参加には資金が必要なので、クラウドファンディングを行うなど資金集めの活動もしていました。

―演奏以外にもたくさんの仕事や役割があるんですね!

そうなんです。その他にも、私は海外関連の活動を担うことが多くて。例えば、留学生のメンバーを増やすために、学内でイベントを開催したり、海外にいるメンバーたちと月1回「e-Symphony for Students」というオンライン交流会を行ったりしていました。特に私にとって1番大きかったのは、ドイツでの活動ですね。2年生の夏に、5日間ドイツに行って、a-tuneのドイツ拠点を作りました。その後、3年生の10月から約1年間、交換留学でドイツに行っていた期間にもメンバーを増やす活動をして、最終的には約50人が集まってくれました。

―50人!すごいですね。ドイツで拠点を作るのはさぞ大変だったと思います。

大変でした(笑)。最初にドイツとのつながりができたのは、私が1年生のとき。豊中キャンパスで留学生向けのイベントを開催し、そこに参加してくれたドイツ出身の留学生が、その後メンバーになってくれました。彼はFAUの学生だったので、彼が帰国するタイミングで、彼を中心にドイツからa-tuneに参加できる体制を整えようということで、ドイツでの拠点づくりを始めました。でも最初は本当に彼1人しかつながりがなく、ほぼゼロからのスタートでしたね。


万博の活動を続けながら、学業もさらに深めるべく、ドイツ留学へ。

―ドイツ語をもっと学びたいという気持ちと、a-tuneの活動を広げたいという気持ち、両方があって留学を決めたんですか?

高校生の頃から、大学生になったら1年間留学したいと考えていました。専攻しているドイツ語のレベルを上げたいし、ドイツについてもっと知りたいと思ったので、a-tuneとは関係なく、ドイツ留学自体は決めていて。それで、どこの大学に行こうかと考えたときに、せっかくならドイツでもa-tuneや万博に関わる活動がしたいなと思ったので、つながりのあったFAUを選びました。

―ドイツの拠点づくりでは、具体的にはどんなことをしたんですか?

リアルタイムで演奏できる場所を見つけることと、その場所に機材を持ち込むこと、それからメンバー集めの主に3つですね。でも、2年生のときに行ったのは9月だったので、大学が夏休みでキャンパスに全然人がいなかったんですよ(笑)。だからイベントをしても3人くらいしか来てくれなくて。でもこの出張をきっかけに、ドイツ領事館の方々とのつながりができて、その後もずっと応援してくださっているので、メンバー集め以外での成果はありました。

―では50人のメンバーを集めたのは、翌年に留学してから?

そうです。FAUでイベントを開催して、万博やa-tuneの紹介をしたり、でもそれだけだと魅力に欠けるので、日本の文化を紹介したり、各国の食べ物を持ち寄ってピクニックパーティーをしたりと、色々と工夫しました。e-Symphonyでは『We are the world』という歌をみんなで合唱する場面があるので、そこで流す歌唱動画もイベントの場で撮影しました。




同じ目標に向かって、個性豊かなメンバーがそれぞれの役割を果たす。

―竹花さんの活動内容をお聞きし、a-tuneには演奏以外の仕事や役割がたくさんあることに驚かされました。チーム内でどんなふうに分担しているんですか?

a-tuneのメンバーは複数の部門に分かれて、業務を分担しています。例えば、私が国内外で行っていたメンバー集めや海外メンバーとの交流は、リクルート班の仕事です。先ほどお話した音の遅延の解消など、オンラインオーケストラや海外との交流を技術的に支える役割を担う技術班や、イベント時のオープニング映像や演奏中に流れる映像の作成などを担う映像演出班、楽曲編曲や楽譜作成などを行う演奏演出班など、さまざまな部門があります。他に、イベント企画統括や広報、経理の部門もあります。

―会社さながらのしっかりした組織ですね。

そうですね。メンバーは1年生から大学院生まで、理系文系を問わず、いろんな人がいます。ただ、人数は限られているので、一人が複数の役割を兼任して、マルチタスクをこなしながら頑張っています。大学の専攻科だと、興味関心が似ている人たちが集まっていますが、それに対してa-tuneのメンバーは本当に幅広くて個性豊かですね。

―国際交流に関心のある人が多いのかなと思いましたが、本当にさまざまなんですね。

はい。参加する動機もバラバラです。私のように国際交流がしたい子もいれば、イベントの企画・運営をやってみたい子もいるし、音楽をやりたいという理由で入ってくる子もいます。あとは、技術班があるので、システムづくりに関心がある情報系の学部の子もいますね。他のサークルと掛け持ちしている人も多いですし、みんな個性的で面白いです。

■竹花実彩さん

長野県長野市出身。大阪大学外国語学部外国語学科ドイツ語専攻4年生。2024年10月からドイツのフリードリヒ・アレクサンダー大学エアランゲン=ニュルンベルク(FAU)に留学し、2025年8月に帰国した。大阪大学万博学生部会に所属する学生団体「a-tune(ええちゅーん)」に1年次から参加し、2年次からは副代表を務めていた。音楽を通じた国際交流イベントを企画・運営するa-tuneは、2021年4月に発足し、2025年9月27日には大阪・関西万博で「e-Symphony in EXPO 2025〜Music Unites the World〜」を開催した。

本記事は、2025年12月公開のマイハンダイアプリ「まちかねっ!」より転載したものです。

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