ホームステイ先の男の子が、ポケモンにどハマり。かつての自分と姿が重なり、国境を越えたつながりを感じた。
― 今日はよろしくお願いします!このオフィス、たくさんのポケモンたちが出迎えてくれて、心がすごく和みます。ポケモンの会社に勤めているということは、津田さんもポケモンが好きなんですか?
ようこそ、「株式会社ポケモン」へ!ポケモンは、最初の151種類が登場した頃から好きでしたよ。アニメは第一話から見ていたし、ゲームは姉の影響で『ポケットモンスター赤・緑』からやっていました。クラスでも性別関係なく、全員が好きだったと思います。私はあまりゲームをやり込むタイプではなくて、ポケモンの指人形や、ポケモンパンのシールとか、ポケモンのグッズを集めて遊んでいたというのが、子どもの頃の思い出として記憶に残っています。強いポケモントレーナーと勝負する楽しさというよりも、たくさんの種類のポケモンがいる世界に魅力を感じていたんだと思います。本当に多くの人たちが通ってきたように、私もポケモンの道を通ってきました。
― ポケモンって、いろんな楽しみ方がありますよね。今もそうですけど、日常生活においてポケモンを目にしない日はないんじゃないかというくらい、人々の身近な存在になっていると思います。子ども時代からずっと、ポケモン愛が途切れることはなかったんですか?
いえいえ、一度は離れましたよ。小学校高学年の頃かな。それからは、部活と勉強の毎日っていう感じで。
― 何部だったのですか?
中学生・高校生とずっとソフトテニス部です。テニスして、勉強して、友だちと遊んで。ゲームやアニメとは無縁の生活を送っていて、ポケモンのことは忘れていました。ポケモンを思い出したのは、阪大生の時ですね。2年生が終わった後に1年間休学して、シアトルに留学したんです。ホームステイ先の男の子が、ポケモンにどっぷりハマっていて。その様子を見て、自分もポケモンが好きで遊んでいたことを思い出しました。異国の地で、こんなにもポケモンが愛されているということに感銘を受けて。子どもたちが夢中になっている姿に、かつての自分を重ね合わせたりして、世界はつながっているんだなと感じたことを覚えています。
― 「株式会社ポケモン」に勤めようと思ったのも、その留学先での出来事が影響しているんでしょうか?
それも一つありますね。子どもの頃、ポケモンが自分の人生に彩りを加えてくれたように、次は誰かの人生をわくわくさせるような仕事ができたらなって。それで、就職活動ではエンターテインメント業界に目を向けていたんです。その中で、「株式会社ポケモン」という会社があることを知り、興味をもちました。ゲームやカードゲーム、テレビアニメ、グッズ、アプリ、イベントなど幅広く手がけ、世界に向けてビジネス展開していることも魅力的に感じました。この会社が第一志望だったので、内定を得た時点で就職活動を全て終了しました。
― 第一志望の企業に就職!すごいですね。ちなみに経済学部で、エンタメ業界に就職する人は周りにいたんですか?ちょっと珍しい選択肢かなと思いまして。
仲良かった友だちの中では、いなかったですね。メーカーや商社、銀行を目指す人が多かったように思います。ロールモデルになる人がいなかったので、この選択で良いのかどうか、ちょっとした迷いはありましたね。
― それにしても、留学先で子どもたちがポケモンに熱中している姿を見て、ポケモンの会社に就職って。それくらい、津田さんにとっては衝撃的な出来事だったんでしょうか。
それはきっかけの一つで。もっと根源的なところを話すと、昔からポケモンはもちろんのこと、ドラえもんや、ディズニー、スヌーピーなど、いろんなコンテンツが好きだったんです。実は大学でアメリカ留学に行った一つの理由に、スヌーピーが誕生した地に行きたいという想いもあって。子どもの頃から、ポケモンと同じようにスヌーピーも大好きだったんですよね。留学先で一番にしたことは、スヌーピーのファンクラブに行くということ。ファンクラブの会合に単身で乗り込んで、現地のスヌーピーファンの人たちと交流したことなども、強烈な思い出として心に残っています。
― すごい熱量ですね!キャラクターという存在が、津田さんの人生に大きな影響を与えていたんですね。
ポケモンやスヌーピーのような、エンターテインメントによって、自分の人生が本当に豊かになったなという感覚があるんですよね。
― 幼い頃から好きだったことを仕事にする。津田さんのエピソードを聞いていると、その人のこれまでの人生の中に、自分の将来像や進路を考えるヒントがあるんだと気づかされました。
生活者の喜びがダイレクトに伝わる仕事。インターンシップの経験で、自分に合った働き方が明確になった。
阪大生の時に経験したインターンシップでの出来事も、進路を考えるためのヒントになったなと思います。留学先でのいろんな経験をしている人たちとの出会いに感化され、帰国後は、社会勉強もかねてスタートアップ系の会社でインターン生として働かせてもらいました。そこは「BtoB(Business to Business)」と言って、企業を対象にビジネスを展開している会社。人材系の情報を掲載するウェブサイトを開発するにあたり、私はプロジェクトの進行管理などを行う制作ディレクションを担当しました。インターン生ながらも、20代から60代の人たちが関わる制作チームの統括アシスタントのようなことをさせていただいて。チームを動かしながらプロジェクトを進めるという、本物の仕事現場に参加することができ、社会に出る前の貴重な経験になりました。そこで働きながら、私は企業間のビジネスというよりは、一般生活者に向けた仕事がしたいと思うようになったんです。
― いわゆる、「BtoC(Business to Consumer)」と呼ばれるものですね。
はい。もっと家族とか、個人とか、そうしたお客さんを笑顔にするような仕事がいいと思いました。ユーザーに、直接アクションができるような仕事。
― インターン生として働いてみたからこそ、津田さんが求める働き方や職種が明確になったとも言えそうですね。
それはすごく感じますね。
― ちなみに留学も行かれているということで、グローバル展開している企業に勤めたいというお気持ちもあったんでしょうか?
ありましたね。小学生の頃から、ほんのりと海外に興味を持ち始めて。海外に行ってみたいとか、住んでみたいとか、海外に憧れた経験ってきっと多くの人があると思うんですけど、私もその一人だったんですね。特別大きな志があったわけではないけれど、「大学に入学したら留学して海外に住んでみたい」とは思っていました。
商品やイベント、話題になったテーマパークの企画も。国内外でポケモンのプロモーションを担当。
― 「株式会社ポケモン」に入社されて10年目ということで、これまでにどのようなお仕事をされてきたのか教えていただけますか?
本当に、いろんなことを経験させてもらってきたんですよ。まず入社1年目は、ライセンス企画部という部署で、さまざまな企業とタイアップしたキャンペーン企画を行っていました。例えば、飲食事業者さんといっしょにポケモンのプロモーションなどをする部署です。次に商品企画部。ポケモンのオフィシャルショップである「ポケモンセンター」で販売するオリジナル商品の企画や製造など担当しました。私が構想段階から企画を練った商品が店舗に並び、それを手に取るお客さんの姿を目の当たりにして。発売直前まで、トラブルがないかどうか、本当にドキドキだったんです。発売日に店舗へ行って、自分の企画した商品がお客さんの買い物かごに入っている様子を見ると、もう幸せでいっぱい、また次も頑張ろうと思えました!
あとは、プレイヤーリレーション部で「ポケモンだいすきクラブ」というファンサイトの運営に関わったり。道や県ごとに選ばれた「推しポケモン」が、地域の魅力を国内外に発信するお手伝いをする「ポケモンローカルActs」にも携わりました。ポケモンが描かれたマンホールとか、公園にポケモンの遊具があるのを見たことはありませんか?
― 見たことありますね!
私は宮城県と北海道を担当していて、よく足を運んでいましたね。
また、テーマパーク準備室(現在はPark Experience Design室に名称が変更)と言って、テーマパークに関係した企画の仕事も担当しました。代表的なのは、「よみうりランド」で開催した「Pokémon WONDER(ポケモンワンダー)」。「よみうりランド」の奥深くに位置する自然エリアで、自然の中に隠れたポケモンを探すというネイチャーアドベンチャーです。
あとは、「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」との取り組みで、ポケモンのグッズやフードなどの監修をしたり。現在はアジア事業本部に所属し、インドネシア・台湾・香港・フィリピン・マレーシア・シンガポール・タイ・ベトナムの8地域に向けたポケモンのプロモーションを行っています。日本国内ではポケモンの認知度はすごく高いと思うんですけど、海外の中でも特にアジア圏はそこまで浸透していなくて。中には熱狂的なファンの方もいらっしゃいますが、多くの方がピカチュウしか知らなかったり、あとはその地域の経済的背景から、ゲームやアニメに親しめる人の母数が少なかったり。例えば、カードゲームは1パック180円なのですが、インドネシアで180円となるとごはん1食分に相当するので、同じカードゲームを販売するにしても日本とは意味が異なるんです。そうした状況の中、まだポケモンが広まっていない地域において、ポケモンの魅力を伝えて親しみを持ってもらったり、特に子どもたちがポケモンに出会える機会をつくって人生を豊かにできたりしたらいいなと思っています。
― もともと、グローバルに事業を展開している企業に勤めたいというお気持ちがあったと思いますが、実際に働いてみて、その手応えやおもしろさっていかがでしょうか?
そうですね。特にインドネシアは生活の中に宗教が根付いて、私たちにとって当たり前のことが通じなかったりします。それに、同じ部署で働いているスタッフの中にも、アジア各地域の出身の人たちがいて。一緒に仕事をしている時にも、私にはなかった新しい視点での意見が出たりするので、まだまだ自分の知らない世界があるんだなと感じています。
▶︎ 後編 へつづく
■津田明子(つだあきこ)
大阪大学経済学部経済学科を卒業後、2015 年に株式会社ポケモンに入社。現在はアジア事業本部 アジアプロモーション部でアジア8地域に向けた SNS 展開や各種プロモーションを手がけている。これまでに、東京都の遊園地・よみうりランド内でのアドベンチャー「Pokémon WONDER」、子どもとポケモンとの出会いの機会を創出することを目的とした「My First Pokémon プロジェクト」内では、YouTubeチャンネル:Pokémon Kids TVの立ち上げ、地方自治体とともに、道県の特色に合わせて選定された「推しポケモン」が各地とポケモンの魅力を発信する「ポケモンローカルActs」などを手がけてきた。
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本記事は、2025年2月公開のマイハンダイアプリ「まちかねっ!」より転載したものです。