総長からのごあいさつ

総長からのごあいさつ

 本日、文部科学大臣より大阪大学総長として任命されました。この重要な役職を担うにあたり、大きな責任と使命を感じております。私の任期は2025年4月1日から6年間です。大阪大学の素晴らしい歴史と伝統を受け継ぎながら、新たな挑戦と飛躍を目指していきます。

 大阪大学の源流である適塾には、緒方洪庵を慕って、日本中から意欲に満ち溢れた若者が集いました。当時、適塾では教える者と学ぶ者が互いに切磋琢磨し合う制度で学問がなされており、ただ師の教えを受けるだけではなく、互いに競い合い、高めあっていました。「師を目指すなかれ、師が目指すものを目指せ」という言葉が示す通り、適塾の精神は現在の大阪大学全体にも受け継がれています。これまでのように既存の知識を単に受け身で学ぶのではなく、自ら主体的に取捨選択しながら学ぶことが、大学での学びの姿勢です。また、「3年学ばんより、3年師を選ぶべし」という言葉が示すように、大阪大学には皆さんの将来のロールモデルとなる素晴らしい先生方がおられます。さらに、総合大学である大阪大学では、多様なバックグラウンドを持つ人々と交流し、その輪の中に飛び込む勇気を持つことで、学びがより充実したものになるでしょう。

 1931年に創設された大阪大学は、「地域に生き世界に伸びる」という理念のもと、懐徳堂や適塾に根ざした自由闊達な市民精神を基盤に、多くの社会的課題に取り組み続けてきました。「学問の府」として、縦糸である専門性の深化と、横糸である学際的広がりを調和させることで、新たな学問領域の創出や社会への貢献を果たしてきた伝統を持っています。私たちはこの基盤を活かし、社会との共創をさらに深めることで、「学問の府」らしい価値を生み出し続けていきます。未来の大阪大学において目指すべき姿は、各構成員が自らの専門領域を究めると同時に、境界領域を切り拓く中で新しい価値を創造する場です。そのためには、教育研究活動や業務における時間的余裕を生み出し、全構成員が自由な発想で研究や教育に没頭できる環境の整備が不可欠です。また、全学的な戦略を見据えた教育・研究基盤の整備、多様な人材が活躍できるキャンパスの形成も必要です。これにより、若い学生たちを惹きつけ、夢を与える大学としての魅力を高めます。

 懐徳堂、適塾を精神的源流とする大阪大学は、トップダウンではなく、ボトムアップの自律的な学び舎としての市民精神を今も引き継いでいます。その気風を継承し、現代の多様な社会課題に対応するため、専門分野を越えた連携をさらに強化してまいります。総合大学としての強みを活かし、各部局の自主性を尊重しつつも、全学的なガバナンス体制を確立することで、研究・教育環境の改善と社会貢献活動の推進に取り組んでいきます。

 新しい時代に向け、次の100年を築くための礎を大阪大学と共に構築していきましょう。大阪大学の全構成員、そして社会の皆様との協働を通じ、未来を切り拓く力を生み出していくことを目指します。引き続き、温かいご支援を賜りますようお願い申し上げます。

2025年4月1日

大阪大学第19代総長
熊ノ郷 淳

総長 プロフィール

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