大阪大学に文書館をつくろう!-セールスマンとしての行動宣言-

 2006年7月1日、大阪大学文書館設置準備室(以下、「準備室」と略記)が設置されました。準備室は、「大阪大学の歴史に関する文書(法人文書を含 む。以下同じ。)の収集、整理、保存及び公開を目的とする文書館の設置準備を行うため」(大阪大学文書館設置準備室設置要項第1)の組織です。室長には、 総長指名により経済学研究科の阿部武司教授が就任しました。10月1日には、専任教員として筆者が、事務補佐員として田村綾が着任し、11月1日付で同じ く事務補佐員として辻義浩が着任しました(事務補佐員はいずれも週30時間勤務)。上記のスタッフで、文書館設置にむけた準備業務を行っています。準備室 に関する事務は、事務局関係部課及び関係部局事務部の協力を得て、総務部企画推進課が行っています。

 大阪大学に文書館を設置することを検討するにあたっては、文書館(仮称)設置検討ワーキング(主査は阿部武司教授)が設置され、2005年1月7日の第 1回ワーキング以来、検討を重ねてきました(現在までに13回開催)。ワーキングは総合計画室にあてて二度にわたって答申を提出し、2006年2月10日 付の「大阪大学文書館(仮称)設置第二次答申」は3月15日の教育研究評議会で報告されました。こうして次期中期計画が始まる平成22年度の文書館開設を めざしての動きが始まったのです。

 この大阪大学における文書館設置にむけての動きの中で注目されるのは、年史編纂とは無関係に文書館設置が計画されたことです。これまでの日本の大学アー カイブズは年史編纂と密接にかかわって設立されてきました。国立大学をみても、年史編纂とアーカイブズ業務を並行して実施した広島大学の事例は存在します が、その他の旧制帝国大学のアーカイブズはいずれも年史編纂完了後の資料保存をきっかけに設立されてきました。大阪大学に文書館が設置されると旧帝大7大 学にアーカイブズが揃いますが、大阪大学文書館はその設立経緯と目的とに照らして、個性的な活動をしていく必要があるでしょう。また、アーカイブズとは何 か、大学アーカイブズとは何かを問う場ともなるでしょう。大阪大学における文書館設置の動きが他大学に波及していけば、望外の幸せです。

 先程、大阪大学における文書館設置の動きは年史編纂とは無関係と述べましたが、厳密に言うと年史編纂の遺産を継承しています。大阪大学ではかつて大阪大 学五十年史編纂事業が行われ、『写真集 大阪大学の五十年』(1981年)、『大阪大学五十年史 部局史』(1983年)、『大阪大学五十年史 通史』 (1985年)の3冊の書籍を刊行しました。また、『大阪大学史紀要』を第4号まで刊行しましたが、発行主体である五十年史資料・編集室の廃止にともない 廃刊となりました。この五十年史編纂資料が現在附属図書館の貴重書庫に保管されており、準備室ではまずこの資料の再整理に着手しました。五十年史編纂関係 者は、編纂完了後大学資料館あるいは大学史資料センター設置を熱望していましたが、四半世紀を経てようやくそれが実現しようとしています。

 当準備室では、(1)大阪大学の法人文書、(2)大阪大学の歴史に関する資料の収集・整理・保存を実施する予定ですが、資料の保管のためのスペース不足 に悩んでいます。現在はサイバーメディアセンターのご厚意により教員室2室を借用していますが、すでに書架は満杯の状態です。大阪大学の歴史に関する資料 としては、先述した五十年史編纂資料のほか、名誉教授数名から資料の寄贈を受けました。この他学内外の機関から刊行物等を寄贈していただいています。これ までの収集資料数は約9400点(五十年史編纂資料は除く)です。

 法人文書については、保存スペースがないことにあわせて情報公開法上の問題から、現在のところ文書の収集は行っておらず、事務局での法人文書の所蔵状況 を調査するに止まっています。幸い事務局の方のご理解を得て、保存年限が10年以上の文書の廃棄は、準備室が発足する以前の平成17年度から停止していた だいています。

 大阪大学文書館が成功するか否かの鍵は、いかに法人文書の収集・保存・公開が出来るかにかかっているといっても過言ではないでしょう。決して法人文書以 外の歴史的資料を軽視しているわけではありませんが、やはり法人文書がアーカイブズの中核資料です。アーカイブズのユーザーは、研究者や一般市民など多様 ですが、最大のユーザーは事務職員の方々でしょう。親組織の事務職員にとって役に立たないアーカイブズは、アーカイブズとしての価値が半減しているといっ ても差し支えないでしょう。

 沖縄県公文書館の富永一也氏は、自らを営業マン、公文書を引渡してもらうための働きかけを営業活動と位置づけ、新規顧客の開拓(これまで引渡し実績のな かった部署から公文書の引渡しを受ける)に成功されました(富永一也「『何かお困りのことはありませんか』~アーカイブズ文書引渡しの現場から」『緑丘 アーカイブズ』5、2007年)。さしずめ筆者は、大阪大学唯一人の文書管理や文書館についてのセールスマンです。文書館を設置して文書管理システムを確 立することが、ユーザーである事務職員の方々にとっていかに便利で役立つかについて、地道に営業活動していきましょう。時には派手なアドバルーンもあげな がら。

 また、「川の上流(現用文書)の管理が適切でなければ、川の下流(公文書館)にきれいな水が流れてくるはずがありません」。そこで富永氏は、現用文書管 理からお手伝いすることにされたそうです。(前掲富永論文)。大阪大学の法人文書は、独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律に基づいて適切に管 理されているはずですが、アーカイブズの視点を入れることにより現用文書の管理がよりよく改善されるのならば、事務職員の方々と協力して取り組んでいきた いと思います。法人文書は大学の業務遂行のために作成されるものですが、国民共通の財産でもあります。文書館を設置して大学の情報をより広く一般に公開・ 開示していくことが出来れば、ひいては大阪大学の社会における信頼やネームバリューの拡大にも繋がっていくことでしょう。

 大阪大学は豊中・吹田の両地区にキャンパスが分かれていますが(2007年10月に大阪外国語大学と統合すると箕面地区も含めて3キャンパスになりま す。この他に大阪市内に中之島センターが存在しています。)、事務局が吹田地区にあるのに対して、準備室は豊中地区に置かれています。また、大阪大学の文 書主管課は評価・広報課であり、準備室の事務を担当している企画推進課ではありません。これらのことは、準備室と事務局との日常的なコミュニケーションの 支障となります。しかし、電子メール等の通信手段が発展している現代です。セールスマンである筆者は、最大の顧客である事務職員の方々に常に呼びかけてい きましょう。いや、文明の利器に頼らず、自ら足を運んで汗をかきましょう。「文書管理で何かお困りのことはありませんか?」と。そして文書館というすばら しい商品を売り込みましょう。「目指せ!トップセールスマン」です。

菅 真城(大阪大学文書館設置準備室講師)

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(『九州大学大学文書館ニュース』第30号、5~6頁、2007年11月15日)より

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