StoryZ

阪大生にも、研究者にも、卒業生にも誰しも必ずある“物語”
その一小節があつまると大阪大学という壮大なドキュメンタリーを生み出します。
それぞれのStoryをお楽しみください。

西村理行教授は骨・軟骨代謝の領域で転写因子の制御機構等の研究に携わるトップランナーの一人。これまで培った基礎研究はいよいよ実際の医療に役立つ局面を迎えつつあり、「全国1千万人が悩まされている変形性関節症の根治が見えてきた。軟骨や骨を再生する細胞をつくりたい」と語る。

何事にも一途に打ち込む西村教授。「手に職をつけるつもりで大阪大学歯学部に入学しました。学生時代は準硬式野球部で活躍しながらもスキーに没頭、通い詰めた北海道ニセコで開業しようと思い描いていました」という。

診療実習に勤しむ日々、後に生化学教室の先任教授で恩師の米田俊之先生(現名誉教授)との出会いが人生の転期となった。「頭頸部腫瘍の臨床と研究に没頭し、迷わず研究の道に進みました。米田先生の熱心な指導を通して、人を育てることの大切さを学びました」

当時始まったばかりの遺伝子工学の手法を取り入れるべく渡米したニューヨーク大学で師事したジョセフ・シュレジンジャー教授(現エール大学教授)には「サイエンスの大らかさを学び、研究の面白さに夢中になった」。さらに、シグナル伝達を使った研究展開のため、テキサス大学サンアントニオ校のグレゴリー・マンディー教授の下に移り、「きめ細かい指導で研究の厳格性を学んだ」。この後、米田先生から大阪大学生化学教室を引き継ぐ。

学生や若手研究者との議論を最優先にするという西村教授。自身の経験から「師に恵まれ、研究こそ我が人生をかけた天命と知りました。これからは後進を育てることが私の使命。22世紀を背負ってもらうつもりで指導しています。私を追い抜く『人財』となって世界へ飛び立って欲しいですね。そのためならば力を惜しみません」と熱く語る。

●西村理行(にしむら りこう)

1985年大阪大学歯学部卒業。同歯学研究科修了、博士(歯学)。ニューヨーク大学医学部インストラクター、テキサス大学医学部サンアントニオ校Faculty Associateを経て、97年大阪大学歯学部助手。2012年に歯学研究科教授。15年から副研究科長。専門は細胞内シグナル伝達、骨・軟骨代謝、転写因子の制御機構。

(本記事の内容は、2015年12月大阪大学NewsLetterに掲載されたものです)

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