StoryZ

阪大生にも、研究者にも、卒業生にも誰しも必ずある“物語”
その一小節があつまると大阪大学という壮大なドキュメンタリーを生み出します。
それぞれのStoryをお楽しみください。

科学技術をリードする人材を発掘

「SEEDSプログラム」は、科学技術に興味を持つ高校生が、世界最先端の科学技術に触れることで、自分のなかに潜む科学への興味の種(SEEDS)を発芽させるというもの。全学教育推進機構SEEDS運営委員長の杉山清寛教授は、「将来の科学技術をリードする優秀な人材を発掘することにつながり、高大接続の新しい潮流となれば」と話す。

1年目の「体感プログラム」、2年目の「実感プログラム」で構成されるSEEDSプログラム。「体感プログラム」は、オムニバス形式の講義や最先端科学技術体験ツアーなどに参加する「体感科学技術」、物質系・生命系・数物系・応用技術系などの各コースで希望する研究を体験する「体感科学研究」、留学生と英語による交流などで異文化を体感する「体感国際交流」の3本柱で構成。「実感プログラム」では、実際に研究室に入って研究を行い、さらに深く科学を体感できる。

高校での学習に対するモチベーション向上も

「『体感科学技術』で幅広い分野の講義を受講してもらうのは、限定的な興味分野にとどまらず、視野を広げて、本当にチャレンジしたい研究テーマを見つけてもらうことが目的です」と杉山教授。それぞれの講義後に行われる「めばえ道場」も大きな特徴だ。「講義を聴くだけでは知識に対する理解度や定着率が低いため、少人数グループに分かれて議論してもらいます。年齢が近い学部生や大学院生がファシリテーターとしてサポートするなかで、最初は戸惑っていた受講生も次第に、興味を同じくする者同士の議論が面白くなるようです」

また「体感科学研究」では、39にも及ぶ最先端研究が、理学研究科、工学研究科、基礎工学研究科等を中心に受講生のために用意され、杉山教授自身も「量子振動を世界的強磁場を用いて観察しよう」というテーマで受講生を指導した。「高校の教科書で習った内容が先端研究で実際に使われていることを知り、『高校の勉強をもっとしたくなった』という生徒もいました。高校での勉強のモチベーションも上がったようで、うれしい驚きです」

隠れた科学への種(SEEDS)を発芽

2015年度の1期生131名(男子83名・女子48名)は、2月20日に行われた閉講式をもって「体感プログラム」を修了。続く「実感プログラム」には、受講生の中から28名が選抜され、自身が選択したテーマによる本格的な研究活動(全5回程度)に、今年4月から大学内の研究室で取り組んでいる。

2016年度も、2期生として新たに「体感プログラム」受講生(130名枠)を募集、理解力や考察力、問題解決力、意欲などを測る選考試験が6月に行われる。「隠れた能力を持ちながら、これまで研究を体験する機会がなかった高校生に、ぜひ応募していただき、理系研究の魅力を知ってほしいです」

受講生が自ら伸びていく環境を整えたい

2016年度は、夏休みを利用したスタートアップ合宿を新たに導入するという。「高校生同士が密接に交流することで他者をより理解しつつ仲良くなり、互いに切磋琢磨し、自ら伸びていく環境を整えていきたいです」

科学研究の面白さについては、「分からなかったことが、分かるようになること。推理小説の犯人探しのようなワクワク、ドキドキ感があります」と説明する。同時に「研究では、望んでいる答えと異なる結果が出るなど、失敗も多いですが、失敗を失敗と捉えず突き詰めるのが科学。そのような考え方や姿勢を、ぜひSEEDSプログラムで身につけてほしい」と笑顔で語った。

受講生インタビュー

興味がなかった世界にも視野が広がる

平松 怜彩(れいさ)さん (清風南海高等学校2年)

将来、医学の道に進みたくて、大阪大学で医療などに関する研究体験ができると知り応募しました。1年目で様々な分野の講義等を聴いて、放射線など、これまで興味がなかった世界にも視野が広がりました。また、難しい計算の課題も、宇宙の原理などの具体的な事象にあてはめることでチャレンジでき、自信も付きました。「めばえ道場」では、他の受講生の知識量や視点の違いに驚き、「私ももっと頑張らないと」と刺激を受けました。2年目では、再生医療を扱う研究室を選び、興味のあるテーマについて研究を始めます。毎回とても楽しくて、SEEDSプログラムに参加して本当に良かったです。

研究の世界のイメージが変わる

森 陶子(とうこ)さん (四天王寺高等学校2年)

理系分野が好きで、将来の進路を考えるための情報を得たいと思い応募しました。1年目で自分の興味の幅が広がりましたし、ひとつの研究テーマに対して、多方面からアプローチできることも知りました。人前で話すことが苦手だったのですが、「めばえ道場」を通じて、少しずつ自ら発言できるようになり、議論することで自分の知識レベルがわかることにも気づきました。2年目では、自分のやりたいテーマについて深く学び、実際の研究も体験できるのが嬉しいです。先生方も気さくで、SEEDSプログラムに参加したことで研究の世界のイメージが変わりました。興味がある方は是非応募してほしいです。


めばえ道場で議論する受講生たち


研究を体感(体感科学研究)

「実感プログラム」 担当教員からメッセージ

研究体験を通じ 本当にやりたいことを見つけて大学選びを

基礎工学研究科 物質創成専攻 境 慎司 教授

私達の研究室では再生医療に関する技術の開発に取り組み、からだや細胞と相性のよいゲルを用いた研究などを行っています。再生医療などの医学分野も、実は周辺分野で開発されるさまざまな先進技術に支えられ発展しています。今回の研究体験が、自分が将来、本当にやりたいことを見つけて大学を選ぶきっかけになってほしい。研究の世界は教科書に載っていないところで進んでいて、何が起きるかわかりません。しかし乗り越えるべき壁が高いほど、楽しさややりがいを感じるものなので、それも実感してもらいたいです。

(本記事の内容は、2016年6月大阪大学NewsLetterに掲載されたものです)

share !