StoryZ

阪大生にも、研究者にも、卒業生にも誰しも必ずある“物語”
その一小節があつまると大阪大学という壮大なドキュメンタリーを生み出します。
それぞれのStoryをお楽しみください。

◆コロナ禍に生まれたa-tune

世界をつなぐシンフォニー 2025年万博の舞台を夢見て

 大阪・関西万博は「いのち輝く未来社会のデザイン」がテーマ。大阪大学は、万博を「生きがいを育む社会の実現」に向けたマイルストーンと位置付け、「いのち」について世界の人々と対話し、次代を担う若者や学生の参画を得て未来社会を構想する取り組みを進めている。

 新藤特任教授は19年10月、民間企業から転職して現職に就任した。間もなくコロナ禍が全国を襲い、学生たちも行動を制限された。学生部会リーダーである田中敏宏理事・副学長から「何か学生ができることを考えてほしい」と依頼され、模索していた20年春、ある動画が目に留まった。公演が開催できない劇団四季の団員300人以上が、テレワークでミュージカルの歌「友だちはいいもんだ」を大合唱していた。「オンラインでの合唱や合奏なら、世界の学生とつながり、一緒になれるのでは」。学生に声を掛けると「やりたい」と一人の工学部生が手を上げた。学生側も、同時期に海外の連携6大学の学生と「未来のリーダーとしての学生の役割」について議論した経験から、コロナ禍により世界中であらわになった社会の分断や文化の違いを乗り越えたいとの思いがあったという。互いに尊重し合える社会を目標に、団結を意味する「UNITY」を掲げて活動を始めた。

 21年4月にa-tuneとして正式に発足。現在、学部1年生から大学院生まで学部、学年も多様な42人がそろう。活動のキーワードは「音楽」「国際交流」「万博」。2代目代表の中島正裕さん(外国語学部2年)は「万博の舞台で、100カ国の学生とオンラインでつないで合奏するのが大きな目標です」と語る。キーワード全てを満たすその合奏を「e-Symphony」と名付けた。

◆新開発の電子楽器を活用

 合奏に欠かせないのが、大阪大学の学生によるベンチャー企業eMotto社開発の「ParoTone(パロトーン)」という電子楽器だ。ハードウェアをパソコンやスマートフォンなどのデバイスに接続してキーや画面を押せば、ピアノやサックス、バイオリンなど複数の音色を出せる。通常の鍵盤楽器より演奏が簡単で、誰でも習得できるのが特長だ。

 a-tuneは学祭などで演奏し、海外の協定校の学生らとオンラインで合奏する試みを重ねてきた。通信上どうしても発生する音の遅延を少しでも解消するため、世界標準時に合わせて同時に演奏を始めるなど試行錯誤を続ける。

 そして22年12月14日。大阪市中央公会堂で初の大規模ステージ「e-Symphony for 2022 ~First season~」を開催。ベトナムの企業や沖縄科学技術大学院大学などとオンラインで繋ぎ、舞台にも留学生らを招いて約10人が「カノン」を合奏した。事前にアプリをインストールした来場者に参加してもらい「威風堂々」も演奏。ステージに先立ち行われた「OSAKA光のルネサンス2022」のイベントでは、万博のオフィシャルテーマソング「この地球の続きを」を披露した。

 a-tune副代表で、イベント企画部門リーダーを務める廣島滉大さん(工学部4年)は「ゼロの状態から企画、演出、出演まで1団体で手がける機会はなかなかない。大変ですが、イベントが成功した時の喜びは大きい」と手応えを語る。

 その2日後には、シンポジウム「万博からSDGsにつなぐ~UNITYでつくる未来社会~」を開催。バンドン工科大や大阪公立大など国内外の学生が「SDGs達成に向け何ができるか」を英語で発表した。企画した学生シンポジウム部門リーダー、高本咲貴さん(工学部2年)は「入部後は海外の学生と会話する機会が多く、日本にいながら英語で国際交流ができる。万博のことも世界にもっと知ってほしい。SDGsは世界中の人の協力がないと達成できないので、万博がそのきっかけになれば」と活動を楽しんでいる。

世界をつなぐシンフォニー 2025年万博の舞台を夢見て

◆「見るだけでなく参加を」

 これらイベントの企画や運営はいずれも学生たちが自ら進め、新藤特任教授は必要な助言や手続きの支援など環境整備に心を砕く。「万博に向けて学生がこれだけ活動しているのは阪大含めほんの僅かだと思う。1年前は、学生が楽器を弾きこなし、外部との交渉で突破力をみせるようになるとは想像もできなかった」と成長ぶりに驚く。

 もちろん、100カ国もの学生をどう集めるのか、そもそもどういう形で万博に「出展」できるのか、今後の課題は少なくない。それでも代表の中島さんは「地元での万博に学生として参加できる機会は今しかない。e-Symphonyを披露することで、こうしたコミュニティーがあることを知ってもらい、広げていきたい」と意欲を語る。

 万博開催の25年には卒業しているメンバーも多い。新藤特任教授は「万博へ向けたプロセスを大事にし、楽しんでほしい」と思っている。卒業する学生には「万博で会おう」と声を掛ける。「会社の人や家族を連れておいで。一緒に合奏しよう」と。一方、新入生に向けてはこう呼び掛けるという。「55年ぶりの大阪開催の万博。見るだけじゃつまらない。参加しよう」。

世界をつなぐシンフォニー 2025年万博の舞台を夢見て

大阪大学では、2025年大阪・関西万博に向けたビジョン「Contribution to All Lives beyond 2025」を設定し、大阪・関西万博に貢献していきます。

https://sdgs.osaka-u.ac.jp/expo2025/

(本記事の内容は2023年2月大阪大学NewsLetterに掲載されたものです。)

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