大阪大学と同じ吹田に立地する「喜びのタネをまく」企業
昨年10月に開設したばかりの「ダスキンミュージアム」は、地下鉄江坂駅から西へ10分ほど歩いた住宅街の中にある。「ここがダスキン創業の地です」と、広報部の江里雅博さんが出迎えてくれた。リポーター役の三輪小夏さん(外国語学部3年)とビデオ撮影担当の下田啓太さん(基礎工学部3年)は、入ってすぐ正面の壁に据え付けられた巨大なドーナツのオブジェに「おいしそう」と目が釘付けに。
「ダスキンは『喜びのタネをまこう』をスローガンとしています」と江里さん。「利益追求だけでなく、世の中に貢献し、人に喜んでもらいたい。展開する掃除と食の両事業は、その想いで結びついている。創業者の精神が、今も脈々と受け継がれています」と説明する。
日本に〝ドーナツ文化〟を定着させる試み
まずは1階の「ミスドミュージアム」を見学。ここではミスタードーナツの歴史や懐かしいドーナツ、グッズの数々を紹介している。
大阪大学豊中キャンパス近郊にあるミスタードーナツ箕面ショップは、1号店として1971年にオープン。開店初日だけで1460人もの来店があったという。創業時は掃除事業を展開していたダスキン。そこで三輪さんが「掃除用具のレンタル会社が外食産業に参入した理由は?」と聞くと、「創業者がアメリカで展開されていたミスタードーナツを食べ『こんなにおいしいドーナツをより多くの人に食べて喜んでもらいたい』と日本への展開を決断しました」と江里さん。
奥のコーナーには、これまで開店した1900店舗以上の写真が壁から天井まで一面にズラリ。三輪さんは外国語学部生らしく、海外のミスド事情について興味津々で質問していた。
〝魔法のぞうきん〟で辛い家事から解放
続いて、2階の「おそうじ館」へ。昔の掃除道具などを展示する「おそうじヒストリー」や、空気中のほこりを実際に目で見ることができる「おそうじスタジオ」といったコーナーがある。部屋の掃除に役立つ豆知識も盛りだくさんだ。
「社名の由来は、ほこりの英語である『ダスト』と日本語の『ぞうきん』を合わせたものです」と聞いた三輪さんはびっくり。「世に送り出した『化学ぞうきん』は、水を使わない拭き掃除を可能にし、『重労働から解放された』と主婦たちにとても喜ばれました」というエピソードを聞き、「まさに〝魔法のぞうきん〟だったんですね」と感心していた。
ダスキンと社会・大阪大学の繋がりに納得
「事業を通じて、日本に新しい文化を創出する」との熱意に触れた三輪さんと下田さん。インタビューを終えた後、三輪さんは「元々ミスドのファンでしたが、阪大に近い箕面店が初出店舗だと知り、より身近に感じました。また、同じ外国語学部の先輩方には、もっと様々なことに挑戦しようと背中を押してもらいました」。下田さんは、「掃除と食が『人々の喜び』という理念でつながっているのだと知って納得。社会に貢献するという視点の大事さを学びました。先輩方の話は少し耳に痛かった部分も。苦手なことですが、人との交流の輪を広げていきたいと思いました」と取材の感想を話した。
学生によるINTERVIEW─ 先輩に聞く
大学での異文化経験が今に生きている
─ダスキンに就職された理由は?
大石 まず、地元で働くという希望が叶う在阪企業であったこと。あとは長く働き続ける上で、社会の役に立つ仕事をしたかったからです。
寺田 お客様と社員の幸福に価値を置き、人を大事にする社風が一番の魅力で、自分に合っていると思いました。
─現在は、どのようなお仕事を?
大石 外国人による家事代行サービスの規制緩和に伴い、神奈川県と大阪市で先行して受け入れを始める予定です。私は来日した方々の生活サポートなどを行います。
寺田 これまで15年間、社内の人材育成・教育に携わってきました。4月からは同じく経営理念の浸透に特化した部署の所長に就任しました。対象は社員の他、加盟店や工場などで働く方も含め計約15万人に上ります。
─働く中で、新しく興味が湧いたことは?
大石 異文化コミュニケーションの大切さを改めて感じました。特に外国の文化や生活習慣について理解を深め、英語力もブラッシュアップしていくつもりです。
寺田 今まで自分が経験したことのない職場の方と接する上で、どんな言葉でお伝えすれば心に響くのか。そのためのキーワードを最近はいつも探しています。
─ 大学時代 、 特に印象に残った思い出 は ?
大石 初めて海外旅行したことです。イタリア、アメリカ、イギリス、トルコと、あちこち行きました。周りも皆、積極的に飛び出していたので、自然に海外への垣根が低くなったのは、外国語学部生(旧外大生)ならではの貴重な経験ですね。
寺田 英文タイプクラブで副部長を務めていました。メンバーは多い時で80人ほどいたので、交流を大きく広げることができました。リーダーシップといった、対人関係の勉強をさせてもらったと思います。
─就職活動についてなど、後輩へのアドバイスをお願いします。
大石 最近は学生に即戦力を求める風潮を感じますが、若い時はもっと時間をかけて、学ぶことを楽しんでほしいです。何の役に立つのか分からないことでも、思い切ってやれば、視野が広がりますし、絶対に後で生きてきます。
寺田 バイトや部活、長期の旅行など、学生時代にしかできないことに打ち込んでほしいです。また、仕事は思い通りにならないことも多いです。そういった困難も乗り切れるように、企業選びの際には自分に合った社風かをしっかり見極めることが大事だと思います。
■ 株式会社ダスキン (大阪府吹田市豊津町1-33)
1963年に創業。フランチャイズシステムによる掃除用具のレンタル事業を全国で展開し、1971年にはミスタードーナツ事業を導入。日本初の複合フランチャイズ企業として、現在は環境衛生からフードサービスまで様々な業態を手掛けている。「ダスキンミュージアム」は10〜16時開館、月曜定休。入館無料(ドーナツ手作り体験は要予約、500円)。現在、ダスキンに勤務する大阪大学の卒業生は10名。
(本記事の内容は、 2016 年 6 月大阪大学 NewsLetter に掲載されたものです)