StoryZ

阪大生にも、研究者にも、卒業生にも誰しも必ずある“物語”
その一小節があつまると大阪大学という壮大なドキュメンタリーを生み出します。
それぞれのStoryをお楽しみください。

全社生産量の7割を担う泉北製造所

近畿2府4県の約720万戸に都市ガスを届ける大阪ガス。その心臓部とも言える生産拠点が、泉北と姫路の2か所の製造所だ。うち泉北製造所(第一工場=堺市、第二工場=高石市)では全体の約7割を生産。都市ガスの原料である天然ガスの埋蔵地は、オーストラリア、マレーシア、オマーンなど世界中に分散しており、多様な地域からの調達が可能。エネルギーセキュリティーの観点からも天然ガスへの期待と需要は高まっており、同社も調達先の多様化を進め、現在は8か国以上から調達している。また、近年はシェールガスなど新たな天然ガス資源の開発も進み、将来にわたり安定供給が期待されている。天然ガスは現地で-160℃まで冷却、液化される。これをLNG(液化天然ガス)といい、体積を気体の約600分の1に圧縮して輸送される。タンカーで運ばれ製造所内のタンクに貯えられたLNGを、海水の熱で再び気体に戻し、熱量を調整、においをつけ(もとは無臭)、都市ガスとして送り出す。

都市ガス製造だけでなく発電 冷熱利用も

ガスの製造工程などについて説明を受けたインタビュアーの下田啓太さん(基礎工学部2年)と撮影担当の笹田智樹さん(経済学部3年)。さっそく、泉北製造所総務チームの米原理(よねはらさとる)さん、阪大OBの平林幹由(ひらばらしもとゆき)さん(資源・海外事業部)と湖山麻耶(こやままや)さん(広報部)らの案内で、専用バスに乗り第二工場(1977年稼働開始)の見学に出発。広さは甲子園球場19個分。整然と連なる円筒形の貯蔵タンクは、外周に防液堤を備えた二重構造になっている。

また、主事業の都市ガス製造のほかに、天然ガスを燃料にガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた発電、LNGの超低温「冷熱」を利用した発電や隣接企業との事業も行われていると聞き、笹田さんと下田さんは「ガスを作っているだけではないんだ」と驚いた様子。

海を越えやってきた天然ガス

桟橋でバスを降り、ふと見た道の側溝にメダカがいるのに気付いた2人は「意外に自然が多いんですね」。「工場内では、近隣小学生らと一緒に植樹するなど地域ぐるみで緑を育てています。建物は周囲の自然環境と調和するよう緑色に、桟橋は海に合わせて青色に塗られているんです」と米原さん。

ちょうどこの日、オマーンからのタンカーが着岸。運ばれてきたLNGがアンローディング(荷降ろし)アームを通して陸の貯蔵タンクに移されているところだった。「こんな近くで見るのは初めて」と、圧倒されたように見上げる2人。米原さんから「-160℃のLNGが万一漏れるとタンカーが破損してしまうので、その防御のために、作業中のタンカー船体に沿って上から海水を流し続けています」と聞き、納得の表情。下田さんは、米原さんと平林さんに、タンカーの航行や乗組員の仕事などについて熱心に質問していた。

超低温を体感

続いて敷地内のガス科学館に移動。アテンダントによる実験では、-196℃の液化窒素に浸したハンカチを空気中に取り出すとどうなるかなど、音や感触を体感しながら超低温での物の変化を学んだ。

撮影取材を終えた笹田さんは「大型タンカーを間近で見て、遠くの国からこうしてLNGが運ばれ都市ガスが作られるのだと実感しました。また、こうした公共性の高い企業で働く人の声を聞くことができ有意義でした」と話していた。

INTERVIEW - 先輩に聞く

ライフラインを支える責任感を忘れず

どんな仕事をされているのですか?

平林 都市ガスの原料となる海外の天然ガス田の開発プロジェクトなど、エネルギー事業への投資をしています。海外で仕事をする際、まず自分が誰か、大阪ガスがどんな会社で、何を実現しようとしているのか、はっきり伝えなければ受け入れてもらえません。プロジェクトへの参画を実現する上ではもちろん言語の壁や文化の違いにも突き当たります。難しくもあり、逆にそこがやりがいでもあります。

湖山 「大阪ガスグループ」のブランド価値を高めるために、世の中のトレンドや情報を収集しながら、大阪ガスグループの商品や活動を少しでも多くのメディアに取り上げてもらえるよう、各種マスコミ媒体に情報を発信しています。

大阪ガスに入社された動機は?

平林 私が就職したのはいわゆるバブル期。世の中全体が浮わついている雰囲気の中で、むしろ地に足のついたエネルギー関連会社、地域に貢献できる企業をと考え、志望しました。

湖山 もともと、生まれ育った関西で就職したいと思っていました。また、阪神・淡路大震災で被災した際、エネルギーの重要性を改めて認識したため、人々の生活や産業を支えるインフラ業界で働きたいと思っていました。最終的に、大阪ガスを選んだ理由は「人」です。いろいろな方にお話を聞く中でこの会社に魅力を感じ就職しました。

インフラ企業として感じている使命を聞かせてください。

湖山 初期配属先だった導管事業部では、「24時間365日、ガスを安全・確実・安価にお客さまにお届けする」ということが目指す姿として掲げられています。お客さまにとってはガスが毎日使えるのは当たり前のことです。ガスのある温かい暮らしを守り続けるため、責任を持って仕事をしていきたいと思います。また、総合エネルギー企業として、お客さまにガス・電力等のエネルギーを安定的かつ経済的にご提供できるよう努めてまいります。

平林 入社3年目に阪神大震災があり、会社も大きなダメージを受け、お客さまにガスを供給できなかった時期があり、当然、厳しいお言葉もいただきました。一方で、現場を駆けずり回りながらガスの復旧作業をしていた際、「寒い中をありがとう」と感謝の言葉もいただき、ライフラインの大切さ、生活の基盤を支えていることを肌身に感じました。その気持ちは20年たっても忘れることはなく、ガスをお届けしている責任を感じ続けていかなければと肝に銘じています。

後輩へのメッセージをお願いします。

平林 NHKの連続テレビ小説「マッサン」を見て、主人公のモデル、竹鶴政孝さんの生きざま、何事にもめげずに新しいことを興すというチャレンジング・スピリットに感銘を受けました。竹鶴さんは、阪大工学部の前身である大阪高等工業学校の出身で、阪大生には大先輩に当たります。後輩の皆さんも、多少の失敗を恐れずに、新しいことに飛び込んでいってほしいと思います。

湖山 大学の4年間ほど自由な時間はありません。やりたいことに精一杯取り組んでほしいです。私自身、自由に過ごさせてもらった学生生活が、今の糧になっています。魅力的な人が多い阪大という恵まれた環境を十分生かし、充実した生活を送ってほしいと願っています。

■大阪ガス株式会社
(本社・大阪市中央区平野町4-1-2)

1897年設立。1905年、3351戸にガスの供給開始。天然ガス、風力、太陽光発電事業のほか、材料、情報ソリューション、都市開発、フィットネスや介護などを扱うライフサービス事業など、大阪ガスグループ全体で多岐に展開。近年は海外におけるビジネスの拡充を図っている。従業員数5,866人のうち大阪大学卒業生は380人。

(本記事の内容は、 2015 12 月大阪大学 NewsLetter に掲載されたものです)
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