StoryZ

阪大生にも、研究者にも、卒業生にも誰しも必ずある“物語”
その一小節があつまると大阪大学という壮大なドキュメンタリーを生み出します。
それぞれのStoryをお楽しみください。

帽子作りへの秘めた思い

かわいいハンチングをおしゃれにかぶって現れた藤原さん。「自分で作った帽子ですから。うれしくて」

自宅からほど近い、北摂の自然あふれる箕面キャンパスでドイツ語を学んでいる。ただ、ずっとひとつの思いを秘めていた。それが帽子だった。「子どものころから洋服や靴には目もくれず、帽子にばかり目がいっていました」大学受験のときも「第一志望の阪大に落ちたら、専門学校で帽子作りを学ぼう」と思っていたというほど、帽子への思いは強かった。

3年になって真剣に就職を考えだしたが、「私の好きなものって何だろう。改めて自分と向き合ってみたらやっぱり帽子でした」

「STUDIO HIRANO」で修業

2014年8月に京都市の帽子デザイナースタジオ「STUDIO HIRANO KYOTO JAPON」 (平野徳太郎代表)の門をたたく。大学では外国語の習得に苦労し、アルバイトもこなしながら、週1回、通いつづけた。「裁縫道具とミシンを買うところからスタートしました。見るもの触れるもの全てが新しくて」。この1年で10作品ほど仕上げた。「頭の中で思い描いていたものが形になる。手作業なので出来上がった瞬間の達成感はすごいんです」


国際舞台で活躍できるセンス

フランス南西部の町、コサッドでのコンテストで見事、「サン・キャトリーヌ部門」優秀賞を得たのは「ティンカーベル」と名付けた作品。ピーターパンなどに登場する妖精の名前だ。「黄色と緑の組み合わせから、何とかアイデアを絞り出してつくりました」。天然草のシナマイで妖精の羽を表現し、着物地で花の装飾をアクセントにした。クラウン(帽子の山の部分)は緑色の麦のブレードを巻いた。「巻いていくうちに崩れてしまい、何度も巻き直して、血豆ができました」というほど、精魂込めて作った。

「世界に認めてもらって光栄ですが、私はようやく基本を学んだところで、これからオリジナルのデザインや形に展開させていく段階。自分で思い描く世界を帽子で表現できるよう、もっと学びたい」。いずれは帽子デザイナーとして独立したいと希望を膨らませる。「作りたいのは、出掛けるのが楽しくなるような帽子」。指導する平野代表は「彼女は国際舞台で活躍できるセンスを持っている」と期待を寄せている。

やりたいことを存分に

帽子作りのほか、大学では夏まつり実行委員会やソフトボールのサークルに入るなど活発な学生生活を送っている。「サークルの仲間と過ごした時間が一番の思い出。仲間が応援してくれるのは心強いですね」

最後にこう後輩へエールを送る。「これまで昔に戻りたいと思ったことはないんです。小学、中学、高校、そして大学も、やりきった感があります。だから、後悔しないように、やりたいことを存分にやってほしいです」


●藤原咲子(ふじわら さきこ)

2012年大阪大学外国語学部入学。「STUDIO HIRANO KYOTO JAPON」(京都市左京区)研究生。帽子界の2大コンテストのひとつ「第23回コサッド・セッフォン帽子フェスティバル・インターナショナル帽子コンクール」サン・キャトリーヌ(フランスのファッション業界の祭り)部門で優秀賞受賞。

(本記事の内容は、2015年12月大阪大学NewsLetterに掲載されたものです)

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