ロイヤルスイートに感激
ロビーでホテル人事部能力開発室支配人の針辻真澄さん、広報担当の前原由季さんに迎えられた。まずは普段見ることのできないロイヤルスイートを特別に案内してもらった。
国賓級VIP専用で広さ843㎡。足を踏み入れた途端、「わー」「お城みたい」と、リポーター役の平野美優さん(外国語学部3年)と中野聡美さん(文学部2年)が歓声を上げる。1995年のAPEC大阪会議にあわせ、世界的なホテルデザイナー、ジョン・グラハム氏によりしつらえられたヨーロピアンクラシックの空間だ。インテリア、調度品などすべてが桁違い。「まるで映画の中に入った感じ」と2人は感激ひとしおの様子だった。
舌や美意識鍛える料理人
続いて藤田嗣治作「マドレーヌ」が飾られている29階の「レストラン シャンボール」へ。大きな窓越しに広がる街と眼下の堂島川、大阪湾や六甲、生駒の山並みも見渡せる。ディナータイム前の時間、料理長の豊田光浩さんに話を聞いた。「オリジナリティーを打ち出せるもの作りの仕事に就きたくて、料理人になった」という。豊田さんは、伝統のあるホテルで自分らしい料理を生み出す難しさとやりがいについてふれ、「舌はもちろん、生活全般において美意識を鍛えなさい」と指導されたことなどを語った。顧客の味の好みやアレルギーをデータ管理し、次の予約時に生かしているという話に、「細やかですね」と感心する中野さん。
レストランでの楽しみ方については「野菜一つとっても産地や土など素材ごと、また調理法によって味は違います。お店に行った時は従業員と仲良くなると、食事も楽しくなると思います」と話した。
多くの調理師さんが立ち働く厨房も見学。豊田さんから肉など食材の流通経路がわかるトレーサビリティシステムについても説明を受け、熱心に耳を傾けていた。
「大人の空間」も満喫
続いて案内されたのは、ステンドグラスやパイプオルガンのある結婚式用の「ザ・クリスタルチャペル」。ホテル内でもひときわ華やかな場所の雰囲気を味わった後、最後は一転して、深みと落ち着きをたたえた1階の「リーチバー」へ。英国の陶芸家バーナード・リーチの着想を昭和の建築家・吉田が形にしたコテージ風のバーで、まさに「大人の空間」。
スタッフの真心と誇り
格式と伝統を誇るホテルの多彩な顔の一端を垣間見た4人。今回が初取材で緊張したという伊藤茜さん(外国語学部1年)は「お年寄りのためにと置かれたエレベーターの中の椅子など、一つ一つが配慮や真心のもとに整えられているのだと改めて知りました」と話し、中野さんは「接客なさっている方だけでなく、スタッフ全員で伝統を守ろうという、老舗ホテルならではのこだわりを感じました」と感想を述べた。
また、ロシア留学を控えた平野さんは「日本ならではのおもてなしの心があることを、ロシアでもしっかり伝えたい」と話し、ビデオ撮影を担当した四條能伸さん(基礎工学研究科博士前期課程1年)は「一人一人に合わせた細やかな接客に見るホスピタリティーの精神を見倣い、人の役に立つ研究に活かしていきたい」と結んだ。
INTERVIEW─ 先輩に聞く
留学生から学んだ語学が生きる
─入社されてからどんなお仕事を?
花房 最初はエグゼクティブフロアーに配属され、専用ラウンジなどでの接客を経験した後、関連ホテルに出向しました。昨年8月にこちらへ戻って来てからは1階のフロント業務についています。
松本 1年間、レストランや宴会場で研修をした後、営業部に。隣接する大阪国際会議場での学会を担当し製薬会社や医薬系大学の先生方へのご提案を行っています。外回りの後デスクワークという日常です。
─大学での学びが役立っていますか?
花房 海外からのお客様との会話はほとんど英語。大学で様々な国からの留学生の英語を聞き慣れていたおかげで、お客様の英語を聞き取ることができています。アジア圏のお客様にも、英語で接客をしています。
松本 専攻は英米文学・英語学でした。営業分野でも海外からの問い合わせのメールなどは英語ですので、大学で勉強した英語が役に立っています。
─大阪ならではのおもてなし、サービスを意識されていますか?
花房 地元の観光地や地下鉄など交通機関の知識、情報は不可欠です。
松本 大阪の方は独特の間合いがあったりフランクだったりして、何度もご一緒するとあうんの呼吸で、こちらからも楽しくご提案させていただけることもあります。
─大阪の誇る伝統あるホテルであり続けるためには?
花房 お客様にとっての「大阪の“ホーム”ホテル」となることを目指しておりますので、お客様のお顔やお名前を憶えて「お帰りなさいませ」とお迎えすることを大切にしています。
松本 関西の迎賓館とも称されるホテルですので、お客様が期待してくださる上質なイメージを裏切らない内容をご提供できるよう、催事の当日はもとより、後日の御礼までご一緒するよう心がけています。
─後輩へのアドバイスを。
花房 海外でのホームステイなどの体験が仕事に役立っていると感じます。いろんな所へ行き経験を積んで、情報や知識の吸収に努めてほしいと思います。
松本 アルバイトもただ収入を得るという目的だけでなく、自分なりに精いっぱい勤めて様々なことを感じとってほしい。私の場合、学生時代に飲食店でホールスタッフをした経験が今に生かされてます。
(本記事の内容は、 2014 年 9 月大阪大学 NewsLetter に掲載されたものです)