StoryZ

阪大生にも、研究者にも、卒業生にも誰しも必ずある“物語”
その一小節があつまると大阪大学という壮大なドキュメンタリーを生み出します。
それぞれのStoryをお楽しみください。

制御機器や車載 電子部品事業を展開

京都駅に近いオムロン本社。隣接する別館に、会社の歴史や技術を紹介する「コミュニケーションプラザ」がある。グローバル戦略本部の広報担当主査、藤田篤志さんの案内で、金森恵里奈さん(外国語学部3年)と松原麻玲さん(同2年)が取材した。

最初に同社の事業内容について説明を受けた。2013年度の売上高7730億円のうち最も多いのが、工場の自動化を実現するセンサーなどの制御機器事業(38%)。車載事業(16%)、電子部品事業(13%)と続き、世界一のシェアを誇る家庭用電子血圧計などのヘルスケア事業(11%)は4番目。「オムロンといえば健康機器のイメージが強いので、意外です」と金森さん。藤田さんが「前身の立石電機製作所が最初に作ったのはレントゲン写真撮影用タイマー(右)。ここからスタートしたのです」と解説する。

自動改札機を大阪大学と共同開発

歴史をたどる展示の一画に、自動改札機の実用化に向けた古い試作機が陳列されている。大阪万博に先立つ1967年、世界初の自動改札システムが阪急電鉄北千里駅に導入された。当時、通勤ラッシュ時の混雑改善に向け、改札自動化の研究が大阪大学と近畿日本鉄道によりスタート。さらにオムロンと近鉄との共同研究により実用化が前進。この間の機器開発が評価され、2007年、米国電気電子学会(IEEE)から、社会に貢献した重要な歴史的偉業と認定するマイルストーン賞が、オムロンと大阪大学、近鉄、阪急の4者に贈られた。

機械にできることは機械に

自動券売機、電子自動交通信号機、自動改札機など「今までなかったもの」を生み出した実績の数々を目にし、また発展の源には、創業者・立石一真氏が社憲とした「われわれの働きで われわれの生活を向上し よりよい社会をつくりましょう」の精神があるのだと聞いて、金森さんと松原さんは「素晴らしい!」と驚きの表情。「難しいテーマに挑戦することこそ技術者の誇り」「機械にできることは機械にまかせ、人間はより創造的な分野での活動を楽しむべきである」と言い続けた立石氏の語録に感銘を受けた様子だった。


環境にも配慮した研究施設

このあと同社の研究所「京阪奈イノベーションセンタ」で、雨水利用など循環型リサイクルも取り入れた先端的な施設、広々としたオフィスを取材。阪大出身で研究職の社員、野坂哲也さんと澤田祥子さんへのインタビューでは、仕事の様子や職場環境などについて熱心に質問をした。取材を終えた金森さんは「社会の役に立つという理念で社員が行動できているのは尊いと思いました。昔なかったいろいろなものをオムロンが作ったのだと知り、次に何ができるか楽しみです」。松原さんは「会社は利潤追求が第一と思っていたので、目からうろこの連続でした。社会のニーズに応じたたくさんのものが創意工夫で生み出され、もしオムロンがなければ今の社会の様子は違っていたかも、と思えるほどでした」と話した。

INTERVIEW─ 先輩に聞く
ベンチャー精神で仕事に取り組む

─入社の経緯を教えてください

野坂 ものづくりの仕事をしたいという希望がありました。先輩たちが、忙しそうだけれど楽しそうに仕事をしておられ、また、ヘルスケア事業のイメージが強いが、実はさまざまな事業に取り組むすごい会社だなと興味を持ちました。今はセンサーの開発をしており、大学で研究していたことと分野は違いますが、やりたいことをやらせてもらえています。

澤田 まず技術者として、また結婚が決まっていたので母親になっても働き続けられる会社を探していました。産前産後休暇など制度が充実していて企業内保育所もあり、実際、チームのリーダー的な女性が2児の母だったりする実績などが決め手になりました。あとは事業領域が広く、社員の方々が楽しそうだったことも魅力でした。

─やりがいを感じる時は?

野坂 研究開発は順調にいかないことがけっこうあり、そんな中でうまく製品化につながる時はうれしいですね。

澤田 分からないことを先輩に聞こうとしたら「澤田が分からないならチームの誰も分からない」と言われ、「私しか知らないことをさせてもらっている。頑張ろう」と思いました。

─入社してから特に感じたことは?

野坂 面白い人、優秀な人など皆さん個性的で、それぞれ楽しそうに仕事に取り組んでいます。また、企業理念がしっかりしていて、何かを決める時などは必ず「社会の役に立つ」という理念に基づき、行動します。あとは若手にどんどん仕事を任せてくれ、刺激を与えられ、成長できる実感があります。

澤田 もしこんな技術があればどんな新しい価値が生まれるか、あるいはどんなところからイノベーションが生まれるのかといった考察に、思っていた以上に重点が置かれていました。創業者の数多くの語録の中でも、ベンチャー精神に触れた部分が好きです。会社の規模がさらに大きくなってもそれは変わらないだろうなというところが魅力的です。

─便利なもの、また安い外国製品がどんどん出てきます。イノベーションの狭まりやプレッシャーを感じることはありませんか?

野坂 イノベーションの幅はむしろ広がっているととらえています。技術革新の可能性は狭まることはありません。

─後輩へのアドバイスを。

野坂 研究でもその他のことでも、自分がこれはと思ったことに取り組めば、何か得るものがあると思います また交友関係も大切に 私はバレーボールのサークル仲間と今でも旅行に行くなど良いつきあいを続けています。

澤田 やりたいことをためらわずにやってほしい。私自身、いろいろなことができた学生時代で後悔はありません。写真部の活動もしっかりやり、楽しいお酒の席で多くの人と話すこともできました。あまりまじめな学生だったとは言えませんが、研究などであの時あの先生が言われていたのはこれかなと、今に生かされています。

オムロン株式会社(京都市下京区塩小路通堀川東入)

オムロン株式会社は、独自のセンシング&コントロール技術を中核としたオートメーションのリーディングカンパニーとして、制御機器、電子部品、車載電装部品、社会インフラ、ヘルスケア、環境など多岐に渡る事業を展開。1933年に創業したオムロンは、いまでは全世界で約37,000名の社員を擁し、110を超える国や地域で商品・サービスを提供している。

詳細は、 http://www.omron.co.jp/ へ。

(本記事の内容は、 2014 9 月大阪大学 NewsLetter に掲載されたものです)

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