女子7人は阪大の元気の象徴
総長 「トビタテ! 留学JAPAN日本代表プログラム」の最終選考を勝ち抜いたのは、全員女性なのですね(笑)。阪大の女子学生は本当にたくましいと思います。皆さんは阪大の代表、日本の代表として世界にチャレンジされるわけで、大いに期待しています。今日は留学に関する目標や今後の夢などをうかがいたいと思います。簡単な自己紹介からお願いします。
相川恵梨子 医学部5年です。「自然科学系、複合・融合系人材コース」で採用されました。英国のキングス・カレッジ・ロンドンに来年1月から3カ月間留学し、附属病院遺伝子皮膚病グループで実践を学ぶ予定です。春休みとクリニカルクラークシップ(臨床参加型実習)の期間を利用して、留学します。
齊藤小夏 外国語学部3年、ビルマ語専攻です。「新興国コース」で今年12月から10カ月間、ミャンマーのヤンゴン外国語大学ビルマ語学科に語学留学します。
平野美優 外国語学部3年、ロシア語専攻です。私も「新興国コース」で、8月から12カ月間、ロシアのサンクトペテルブルク大学ジャーナリズム・マスコミュニケーション学部に留学します。その後ウズベキスタンで、日本語教育など草の根交流を行っている「リシタンジャパンセンター」での1カ月間のボランティアに携わる予定です。
森裕美 外国語学部3年、英語専攻です。「世界トップレベル大学等コース」で、9月から9カ月間、米国・カリフォルニア大学サンタバーバラ校・教養学部コミュニケーション学科で、交換留学生として学ばせていただきます。
対馬ひとみ 法学部3年、国際公共政策学科に所属します。私も「世界トップレベル大学等コース」で、9月から8カ月間、カナダのマックマスター大学・社会科学部に交換留学させていただきます。
中嶋沙蘭 同じく法学部3年、国際公共政策学科です。「多様性人材コース」で、来年1月から1年間、米国・ジョージア大学・国際関係学部もしくはテキサスA&M大学国際関係学部で交換留学生として学ぶ予定です。
北岡志織 文学研究科修士2年、文化動態論専攻です。外国語学部出身でドイツ語を専攻していました。「多様性人材コース」で、9月から11カ月間、ドイツのハンブルク大学・人文科学研究科ドイツ文学専攻に所属しながら、Bluespots Productionsという演劇カンパニーでインターンとして働きます。
留学で何を学ぶか
総長 阪大の原点は、緒方洪庵の適塾です。そして今、世界から人を集め交流する「世界適塾」の実現と、学問による調和ある多様性の創造をめざしています。皆さんも今回のチャレンジで、きっとそのような体験ができるものと信じています。留学に向けて皆さんは、どのような夢を持っていますか。
相川 MD研究者育成プログラム(未来の医療を切り開く医学研究者を育成する)に所属しています。キングス・カレッジ・ロンドンを選んだのは、病院と研究所、医師と医師以外の研究者が一体で活動しているという先進的な研究・治療システムを、ぜひ見学したいと思ったからです。
齊藤 ビルマ語専攻なので、ミャンマーで学ぶことによって、しっかりとビルマ語を話せるようになりたいと思いました。またミャンマーは、軍事政権による民主化が図られているようですが、現在どのような状況なのかを自分の目で確かめたいです。私のビルマ名(ビルマ語専攻の学生はビルマ名を授与される)は「スーチー・シエ」なので、アウンサンスーチーさんにも会えたらうれしいです(笑)。アジアが好きなので、将来は東南アジアに関わるような仕事ができればと考えています。
平野 サンクトペテルブルク大学でジャーナリズムを学ぶのは、もともと国際協力に興味があり、途上国などでは市民の声が政府に届いていないことに注目したからです。アルバイトをして毎年海外に出かけていて、これまでにイギリスやバングラデシュにも行きました。今回の留学先としてロシアを選んだのは、中央アジアやチェチェン紛争に興味があったからです。
森 コミュニケーションについて学べる留学先を探しました。阪大の外国語学部でもコミュニケーション関連の科目はありますが、私は今、カリフォルニア大学からの留学生のサポーターをしていて、彼らのエネルギーに圧倒されています。そのようなエネルギッシュな大学に身を置いて勉強し、将来は自分の学んだことを大学や社会に還元できればと思っています。
対馬 主に国際関係に興味があり、国際公共政策学科でも紛争などについて学んでいて、カナダでは「平和学」を中心に勉強したいと思っています。カナダは「人種のモザイク」と言われるように移民が多く、多様な意見や考えが存在する国。そのような国の大学で、広い視野を持って平和学を学べたらと思いました。
中嶋 高校生の時(2010年)、エジプトのカイロで開催された「平和の祭典アートマイルMURAMID展」に日本ユースとして派遣され、楽しく魅了されました。今ゼミなどで地域紛争について学んでいますが、将来はパレスチナなど中東の平和構築に貢献したいと思っています。そのためにも、中東に影響力を持つアメリカの大学で、アメリカの外交政策について学びたいと考えました。
北岡
ドイツ語をツールとして自分にできることを考えた結果、ドイツ現代演劇を研究しておられる市川明先生の演劇学研究室に入り、演劇の理論と実践を学びました。また今年2月、ドイツのアウグスブルクで行われた国際的マルチメディア演劇プロジェクトに参加し、字幕やドイツ・アメリカ・日本(阪大)の3劇団のアテンドスタッフを務めました。現代劇と能を融合させた市川先生演出の作品は高く評価され、その時、演劇を通して文化交流ができるのではと感じ、ドイツの大学で学びながら演劇カンパニーで研修しようと思いました。
阪大生はもっと異文化体験を
総長 皆さんしっかりしていて、非常に頼もしいですね。今回の留学以前にも海外経験が豊富ですし、皆さんのような学生がいれば、阪大は必ず世界トップ10になれると感じます。ところで皆さんは、なぜ「トビタテ!留学JAPAN」に応募しようと思ったのですか。阪大生がもっと多く留学するためには、どうすればよいと思いますか?
森 「トビタテ! 留学JAPAN」の1期生ということで、何か新しいことができるのではないかという思いがありました。それに奨学金など金銭的なサポートも大きな魅力でした。
齊藤 外国語学部の学生は、留学への意欲が強いのが特徴です。キャンパスや学部を超えたつながりがあれば、男子学生を含むもっと多くの学生が応募するのではないでしょうか。
北岡 今回の応募にあたり、文学部の国際連携室に毎週のように通い、すごくお世話になりました。親身になってサポートしてくださる職員の皆さんがいて、経済的にも手厚いサポートがあるのに、この留学制度を利用しないのはもったいないと思います。そういうサポートがあることをもっと知ってもらえたらと思います。留学には不安もありますが、得られるものの大きさを考えるとワクワクします。
夢を自分でつかみ取る
総長
皆さん、留学に対する本気度が違いますね。阪大のキャンパスにいても多様な知識は得られますが、「百聞は一見に如かず」。海外に行き、こういう考え方があるのか、こういうことが世の中にあるのかという異なる視点を得ることはとても大事です。将来どのような分野に進むにしても、いろいろな見方を知ったうえで、これが正しいという本質を見極めていってほしい。それは、皆さんの将来にとっても次世代の社会にも大切です。不可能と思われることも、挑戦し続けていると必ず現実になります。皆さんからは、自分の夢を自分でつかみ取り実現するエネルギーを感じました。頑張ってください。
第2期生の募集が10月初旬に行われる予定です。次回は阪大の男子学生も大勢応募して採用されるよう、ぜひ皆さん、どうすれば採用されるかというメソッドを含めて、大いに他の学生にも宣伝してください。
全員 今日はありがとうございました。
(本記事の内容は、 2014 年 9 月大阪大学 NewsLetter に掲載されたものです)