阪大ニューズレターが初の女性応援団長となった岩井真紀さん(第47代団長)を採り上げたのは2009年。その時、部員数は27名だった。それが激減したのには理由がある。09年当時 1年生だった光吉礼人さんによれば 、 「東日本大 震災のあとパフォーマンスを自粛。その影響で次の年の入団者が1人になってしまったのです」
応援団の場合、一度減った人数を回復するのは難しい。「他のクラブと違って、入学式などで演舞を見せ、そこで興味をもった人たちを誘い込まないといけないから」だ。副団長の西浦千晴さんは「少ない人数でやっていると、友達から『何をしているのか、分からない』と言われることもある」と残念がる。団員の減少は阪大だけの現象ではない。国公立系の大学はどこも苦戦しているという。
しかし、仲間の数は少なくても、団員としての日々は充実している。団長の石井里奈さんはチアリーダー部。「応援を通じて誰かを勇気づけられることが魅力」と語る。そして「吹奏部は音楽、チアならスタンツやスマイル。応援団3部がそれぞれの特徴を生かして大学の活動を盛り上げているのです」
吹奏部に所属する西浦さんは「一生懸命何かに取り組めるところ。応援しているチームが負けたら、本当に悔しい。一喜一憂できることが、魅力だと思います」と笑顔を見せる。
先輩・後輩のつながりが強い。新歓コンパ、追い出しコンパは、50代、60代のOB、OGも集まってにぎわう。今年の入学式も、OB、OGの力を借りて10人ほどの人数を確保することができた。「年上の方と話す中で、社会に出ても困らない礼儀も身につくと思います」と西浦さん。
石井さんは、応援される側の事情に合わせ、もっと多様な応援スタイルを考案していきたいと思っている。「例えば、文化部のイベント応援にも行くなど、もっと活動の幅を広げていきたいですね」
今もチアリングの活動を続ける光吉さん。大学の応援団とは違う応援の形があることを、引退してから知った。「チアリングクラブでは『とにかく笑う。楽しく』がモットー。そういう応援の良さを感じるようになりました。それに比べると、大学の応援団は少し硬すぎるかな」とも考える。
現在、京都大学では大学祭の前夜祭を応援団が主催している。自分たちも阪大を盛り上げる独自の発信をしていきたいと、前を向く。「大学の協力を得ながら、阪大のファンが増えるような企画・提案がしたい」と語り合う3人。時代の中で変化していく、応援団の今後に注目したい。
●石井里奈(いしい りな) 大阪大学応援団第54代団長。大阪城ホールでの入学式で、応援団の演舞を初めて見て感銘を受け、入団。チアリーダー部。
●西浦千晴(にしうら ちはる) 副団長。応援団の卒業生が作る受験生応援プロモーションをWEBで見たことが入団のきっかけ。吹奏部。
●光吉礼人(みつよし ひろと) 第 50 代団長。現在も吹田キャンパスの近くの民間のチアリングクラブで活動中。
(本記事の内容は、 2014 年 6 月大阪大学 NewsLetter に掲載されたものです)