「ゼロ・リセット」空間で出迎え
グランフロント大阪ナレッジキャピタルタワーC12階のフロア全体が、ライブオフィス「ワークスタイルシアター」だ。東京・霞が関、品川に続き、2013年にオープンして1年。営業、設計など3部門の社員が働く。
壁も天井も透明感のある白でデザインされたエントランスは、来訪者への「ゼロ・リセット」空間と位置付けられている。まず目に飛び込んでくるのが、同社製品である緑色オフィス用メッシュチェアーの背もたれを何枚も使い、木に見立てたオブジェ。「いろいろな人が集い、新しい価値を創り出しながら成長するイメージを表現しています」。関西営業本部・大阪営業支援部部長、太田博昭さんの説明に、リポーターの中野聡美さん(文学部2年)が「真っ白な空間に続き、インパクトがありますね」と見上げる。
ステーショナリー部門と分離
同社は、「キャンパスノート」やスティックのり「プリット」で知られるステーショナリー部門のコクヨS & T株式会社と並び、コクヨグループの主力を担うオフィス家具部門の会社だ。「働きやすい空間と使いやすい家具」を提案、製造販売する。ライブオフィスの取り組みを始めた時期は早く、現在の本社社屋(大阪市東成区)ができた1969年。コクヨ社員が実際に働くオフィスを見てもらい販売に結び付けると同時に、社員自身が自社製品を使う中で生まれる意見を改良や開発につなげる現場主義を貫く。
ひらめき・はかどり・ここちよさ
グループ全体のブランドメッセージは「ひらめき・はかどり・ここちよさ」。このフレーズを合言葉に、現場から生の声がライブオフィスの職場環境・空間づくりに反映される仕組みを取り入れている。例えば、オフィスのあちこちにある意見募集のボード。社員は気づいた要望などのメモを貼り付け、それをもとに改善、ルール変更などが柔軟に行われる。
仕事の内容に合わせて自由自在
オフィスでは、仕事の内容に合わせて違うタイプの机や椅子が使われている。固定席は見積もりや発注を行うデスクワークが多いスタッフ用。長時間座っても疲れにくい椅子を用いている。外出がちな営業スタッフは自由席で、小学校の席替えのように、対話が円滑に進むよう机と椅子が配列され配置替えもできる。「コラボパーク」と名付けられた一角には人工芝が敷かれ、違う部署のスタッフ同士が気軽に集まり、天井からは鳥のモビールも。さらに、外来者との打ち合わせや社員の休憩の場としてソファでコーヒーなどが飲める「カフェサロン」もある。
「まるで近代都市のオフィス」と中野さん。阪大OBのさんは「毎日多くのお客様が来られ、私たちは見られていることで仕事にリズムができます。見てもらって提案ができ、意見をキャッチボールするのです」と笑顔で応えた。
ものづくりは難しいけれど楽しい
続いて、11階にあるショールーム「ワークスタイルミュージアム」へ。こちらは、事務所や会議室などでの課題を、空間と家具を通じて解決する方法を提案。部屋のモデルが用意され、可動式の壁で広さを実感したり、コンピュータのシミュレーション画面で色別の空間イメージを確認したりできる。会議用テーブルが並んだコーナーでは、製品を開発した阪大OBの新谷英之さんが、簡単なレバー操作で天板が畳め、収納時の厚みを日本最少クラスまで絞り込み省スペースを実現させたエピソードを紹介。「ものづくりは難しいけれど面白い。やるほどに興味がわいてステップアップします」と語った。
考え抜かれた製品群に感動
見学を終え、ビデオ撮影を担当した笹田智樹さん(経済学部2年)は「効率を上げるため、オフィス環境から工夫していくという考えは新鮮で興味深く感じました」と話した。今回初参加の下田啓太さん(基礎工学部1年)は「後ろにスーツ掛けが付けられている椅子など、製品一つ一つが考え抜かれていて、びっくりしました」との感想。そして、マイクを握り果敢に質問した中野さんは「皆さんが生き生き働いていらっしゃったのが印象的。OBの方も『大変だけど楽しい』とおっしゃり、私もそう感じられる仕事に就きたいと思いました。家具など物一つ一つにストーリーが見える気がしました」と話していた。
INTERVIEW─ 先輩に聞く
旅行、クラブ…勉強以外にも熱中![]()
─大学での学びは活かされていますか?
貫名 テーマを決め、調べ、検証しまとめるという、大学の研究で経験したプロセスは役立っています。
新谷 大学での勉強が直接活かされる仕事に就ける人は多くないと思います。不具合が生じて原因を探る時に、現象を基礎的な観点から考えるタネは、大学の勉強の中にあったといえます。
─つらいことは?
貫名 面白かったことの方が多い。入社当時、古い工場でトラブルが続発し、何とかしようと対処しながら勉強し、壊れない工場に改造していった。社会人になってからが勉強です。
─入社の動機は?
貫名 大学の先輩がいなかったのが、かえって良かった。キャンパスノートの製造工場で、年間1億冊製造というスピードに感動し、こんなラインを作りたいと思いました。海外で仕事をしたいという希望もありました。
新谷 企画、製造まで、まるまる自分で作り上げる仕事にひかれました。
─どんな学生時代を?
貫名 アルバイトでお金を貯め、毎年のように中国、ソ連(当時)、ヨーロッパへ海外旅行をしました。シベリア鉄道で端から端まで1万㌔移動したことなど、いい経験でした。
新谷 器械体操部に所属しアルバイトでも体操を教え、体操漬けの生活でした。教えることで、人それぞれに感覚や理解の仕方が違うことを知り、人に伝えるにはどうしたらいいか考えるようになりました。
─阪大生へのメッセージを
貫名 勉強以外に集中する何かを持ってほしいですね。
新谷 人がやっていないことに勇気をもってチャレンジしてほしい。
(本記事の内容は、2014年6月大阪大学NewsLetterに掲載されたものです)