StoryZ

阪大生にも、研究者にも、卒業生にも誰しも必ずある“物語”
その一小節があつまると大阪大学という壮大なドキュメンタリーを生み出します。
それぞれのStoryをお楽しみください。

最初にアイデアを出した中山さんに現在の研究テーマを聞くと、「蛋白質の溶液にレーザーをあてるとバブルが生じます。それをコントロールし狙ったところに結晶をつくる手法です」。医療とは到底結びつかないこの手法は特許も出願している。

“狙ったところに”という部分に、DDSとの共通点があると気づいた中山さんは、内視鏡による抗がん剤投与のプロセスに研究内容を生かせないかと考え、山田さんと森さんに声をかけた。超音波を使って創薬にかかわる研究をしている2人は、レーザーと医療の融合に興味を持ち「一緒にやろう」と即答した。まだ誰も手がけていないし、起業につながる可能性もある─そこが抗いがたい魅力だったのだ。

3人は分担して資料を集め、プランを練り上げていく。研究室にある「新しいことにチャレンジできる雰囲気」も後押しとなり、発表の練習にはゼミのメンバーが全面的に協力してくれた。肝心の医療現場での実用性については、ゼミにいる内視鏡メーカー出身の先輩にアドバイスをもらうだけでなく、自分たちで開業医の門をたたき内容のチェックも忘れなかった。

大阪大会は「研究室の研究そのものを発表するグループが多かった中、新しい領域への応用に挑戦している」点が評価され、最優秀賞を受賞。その勢いで、全国大会に挑み「審査委員特別賞」に輝いた。

今回の成果について「会社経営について5年間で予算を立て軌道に乗せるところまで考え抜いたこと」と語る山田さん。将来ベンチャー企業設立という夢を持っているだけに、またとない経験だった。

一方、森さんは「客観的な視点を得るために、駅前でアンケートをとった時は大変でした。20人連続で無視されたときには落ち込みましたよ」と苦笑する。実験がライフワークの森さんにとって、社会調査は初めての体験となった。

中山さんは「医療技術アイデアの実用化となると、倫理審査や治験などハードルは高い。でも、自分たちだからこそ提案できることを大切にしたい」と話す。

3人それぞれの能力、個性、研究内容を生かし合ってつかめた栄冠だった。

(本記事の内容は、 2013 3 月大阪大学 NewsLetter に掲載されたものです)

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