安倍総理就任後初めての総合科学技術会議に出席して———種、根、幹、葉、果実のバランスと循環(2013年3月1日)

平成25年3月1日に第107回総合科学技術会議が総理官邸で開催された。安倍総理大臣になって初めての本会議である。当日会議が始まる前に、新しく就任される有識者議員4名が総理から辞令を受けられた。我々3名の現職の有識者議員も辞令交付に立ち会い、総理と共に記念写真の撮影が行われた。


右から2人目が平野総長 (内閣府提供)

引き続き、総理を議長として、菅内閣官房長官、山本科学技術政策担当大臣、新藤総務大臣、麻生財務大臣、下村文部科学大臣、茂木経済産業大臣らの議員、甘利経済再生担当大臣と稲田規制改革担当大臣の臨時議員、それに有識者議員7名による会議が開催された。

山本大臣から科学技術イノベーション政策の現状と課題について、中鉢議員から有識者議員8名による総合科学技術会議の今後の検討課題に関して、資料に基づき説明があった。

そのあと意見交換が行なわれ、私は以下のような発言を行った。

「総理が科学技術イノベーションを重要視されることは、大変素晴らしいことである。

豊潤な果実を得る為には、種をまいて、苗木を育てる。幹がすくすく育って、根が地面にしっかり張る。葉が茂り、果実が実る。そして種ができる。これはどれ一つ欠けてもだめである。

これがうまく循環すること、そしてもっと大事なことは、それぞれのバランスが大事だということである。幾ら幹が太くても、葉が茂っても、根が貧弱なら木は立ち枯れる。さらに肥料、小さな木には小さな木に、大きな木には大きな木に相応しい肥料が必要。また種を多くまけばまくほど果実は多く収穫することができる。

基礎研究や人材育成というのは、種、あるいは根である。応用研究や開発研究というのは、幹や葉です。果実の一部は当然種に使わなければ未来はない。だから、結局これらのバランスを如何にとるべきか、どのような割合で限られた財源を配分するべきか、国力にふさわしい科学技術予算規模は幾らか、社会保障や公共投資とのバランスはどうとるべきか、未来のために種をどれだけまくか。

総合科学技術会議の指令塔機能というのは、本来これらの案件を高いレベルで行なうことです。即ち、森全体を見ることだと思う。その上で個々の木、個々の具体的な方策を立案し、実行する必要がある。」

最後に一言、「人材育成なくして、真のイノベーションは無い」。要素技術がいくらあっても人材がないと、真のイノベーションは起こらない。私が最も強調した点である。

各議員がそれぞれの立場で意見を述べ、最後に総理が科学技術イノベーションの重要性を再度強調された。

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