平成26年8月26日(火)@大阪府立岸和田高等学校【大竹 文雄 理事・副学長】
今年度2回目の進学指導特色校(GLHS)訪問として、大竹文雄理事・副学長が8月26日、大阪府立岸和田高校を訪れ、高校1年生全員(360人)を前に講演した。
“身近な疑問を経済学で考える”をテーマに、大竹理事は私たちの日常生活の中で起きる様々な事象を例に挙げ、経済学では先読みをするということが必要だと話した。
例えば、どの株を買えばその株の価格が将来上がって利益があげることのかを考えてみよう。実は、自分が「この株の本当の価値が高いので、将来価格が上がる」と思っている株を買えばいいのかというと必ずしもそうではない。買うべき株は、世の中の他の人たちが「将来上がる」と思っている株である。世の中の人の中には、あなたと同じ程度に様々な会社の業績に関する情報をもっていて、合理的な予想をしているかもしれないし、そうでなくてもっと単純な株価についての予想をしている人がいるかもしれない。世の中の人が、どこまで先読みしているのかについて考える必要がある。
こうしたメカニズムを踏まえ、大竹理事は「人間はなかなか将来や他人の行動について推論をして合理的に物事を考えることができない。しかし、少し先に推論を進めてみることで、あなたの行動を改善することができます」と生徒たちにメッセージを贈った。
また、講演の中では次のようなクイズも行われた。
「レタスを1個作るのに100円かかったとすれば、レタス農家はいくら以上の価格であれば、収穫したレタスを出荷すべきでしょうか」
生徒たちが周りの友人と答えを考え話し合う姿は、授業の一コマを見ているようだった。正解した生徒には、大学入試にも多数引用されている大竹理事のサイン入りの著書が贈られ、サインをもらった生徒は嬉しそうな様子だった。
主な質疑応答
Q、講演のクイズを集めた本はあるのか
A、早川書房出版のダニエル・カーネマン著「ファスト&スロー」という本がお薦めです。
Q、普段、大学で授業はされているのか
A、ここしばらく学部の授業は持っていませんでしたが、去年学園祭の時に学生から学部の授業をしてほしいというリクエストを直接受けました。そこで、今年から学部生むけの基礎セミナーという授業を教えています。阪大に来たら、ぜひ私の授業を取ってほしいですね。
Q、行動経済学というのは、どのようなことを研究しているのか
A、これは今日、みなさんにも答えてもらったクイズで、多くの人が引っ掛かったことと関係します。伝統的な経済学では、このようなクイズで合理的に考えて正解を導き出せる人がいると想定していた。ところが、実際にやってみると、正解までたどり着ける人は少ないのです。実際に人間は伝統的な経済学が考えていたほど合理的ではなく、合理的でないときに、特定のパターンがあるということが分かってきました。そういうパターンがどんな場合に生じるのかを明らかにして、それを前提にして経済学を組み立てる学問が「行動経済学」です。
Q、どうして大学の先生になりたいと思ったのか
A、大学生の時に、就職活動もしましたが、企業組織で上からの指示で働くよりは自分でテーマを設定できる研究者になりたいと思ったことが一つ。もう一つは大学で出会った先生が、経済学の面白さを教えてくれて、経済学をもっと研究したいと思ったこと。大学に入学したときから、絶対に研究者になろうと思っていたのではないのです。大学に入学した頃は、経済学が、本日話したような類の学問だとは思っていませんでした。当時は、経済学はお金をもうけるための学問だと思っていて、食いっぱぐれないようになればいいなと考えていたのですが、勉強するうちに、経済学の面白さが分かってきて、研究を続けたいと思ったのです。
編集後記
この日、学校を訪れる前、大竹理事と筆者らは昼食に岸和田名物「かしみん焼き」をいただいた。薄く引いた生地にキャベツ、紅ショウガ、ネギのほか、かしわ(鶏肉)、それに牛脂のミンチを乗せて焼いた「かしみん焼き」は、カリッと香ばしく、濃い目のソースの味付けと、かしわの食感が食欲をそそる。おやつ感覚で何枚でも食べられそうだ。
地元で愛され、今もなお住民のソウルフードでもある「かしみん焼き」だが、若い世代の間ではファストフードの浸透で、馴染みの薄いものになってきているという。
岸高(岸和田高校)の生徒たちには、巷で話題の新しいものにばかり気を取られず、身近にある美味しい物にも目を向けてほしいなと思いながら、岸和田を後にした。