平成24年10月19日(金)@大阪府立三国丘高等学校【平野 俊夫 総長】

「目の前の山を登りきる-。」

10月19日、最高学府の長として、また、少し長く生きる人生の先輩として、このメッセージを未来ある高校生に伝えるべく、平野総長が大阪府立三国丘高等学校を訪問した。

これは、今年7月に本学と大阪府教育委員会との連携協定締結、進学指導特色校の指定を受けている10校との覚書を受けて実現したものだ。

講演では、大阪大学の歴史、総長自身の専門である免疫学や、医工連携等による最新医学研究に触れながら、「命の大切さ」と「いかに生きるか?」を主題とし、総長自身の信念である「目の前の山を登りきる」ことの大切さについて熱を込めて語った。(講演には、1、2年生640名や保護者が参加)

講演後、医歯薬系への進学希望者を対象に懇談会が開かれ、そこでは、進路選択に悩む生徒や、研究に興味を示す生徒から質問が複数寄せられた。

懇談会の終わりには、「自分が今ベストだと思ったこと、目の前のことに真面目に一生懸命頑張るしかない。難しく考えないで、自分の可能性を狭めるよ うなことはせず、幅広い分野の知識を吸収し、夢を持ち続けてほしい。2年後大阪大学のキャンパスで君たちに会えることを楽しみにしている。」とメッセージ を送った。

未来の可能性あふれる若者たちに、どのように響いたのか。

二年後の春が待ち遠しい。

● 懇談会での代表的な質問と、それに対する平野総長の回答をいくつか紹介する。
・医学部はどういう人材を求めているか?(高2:医学部志望の男子生徒)

「医学・医療をやりたい」と思う志のある人に来て欲しい。

適塾創設者の緒方洪庵が遺した扶氏医戒之略 という「医者の戒め」をまとめたものがあるが、そこでうたわれているような志をもった人に進んで欲しい。

医学・医療に携わる人は、君たちが思うよりも幅広い。医師や看護士などの直接医療に携わる人だけでなく、将来の医療のために研究する基礎医学の研究者も含まれるし、医療行政に携わる人も含まれる。

少なくとも、「偏差値が高いから」だけで選ぶのではなく、志を持った人に来て欲しい。

・文系と理系を決める上で、何が重要か?(高1:進路選択に迷う男子生徒)

「自分が何がしたいのか?」が最も大事だが、これは言うのは簡単だが、なかなか難しい。

難しいのだけれど、足踏みしていても前には進まないから、迷う中から見つけるほかない。「えいや!」と決めてしまって、その後で違うと感じたならば、再度選択するのも手。

そして、一度決めたら後悔しないこと。間違いだと思ったら、その時にもう一度やり直すことができる。前向きに。まさに「目の前の山を登りきる」だ。 人生はその積み重ねの結果。

私も最初から、こういう道に進むことを考えていたわけではない。その時その時の自分がベストだと思った道を進んできた結果でしかない。

将来のことをあまり計算しすぎない方が良い。

自分の可能性を狭めることにもなるし、決して良い結果にならない。大阪大学には工学博士を取得した後、社会的背景に基づいた庭園美を研究している文学部の准教授もいる。また物理学科を卒業後、脳科学研究に進み、現在神経経済学を研究している経済学部の准教授もいる。

そういう意味で「自分は文系や理系だ」とあまり最初から分けてしまうのはよくない。

自分の得意な科目以外にも、どんなことにも興味を持って、知識を吸収することが重要。

・自分はSSHの課題を選択しているが、研究課題をどう見つけたか?(高2:SSHを選択する男子生徒)

「何がしたいか?」に尽きる。

医者なので、目の前の患者さんを治してあげたいと思ったことはもちろんだが、基礎研究の道に進んだのは、今現在治すことができない病気(将来の患者さん)を治してあげたいと思ったのがきっかけ。

研究テーマや方向性は、病気の仕組みを知りたい等の「知的好奇心」と、病気の治療をして人助けをしたい等の「社会的使命感」の関係で決まる。

これは、個人毎に何に興味を持つのかが異なるため、人の数だけバリエーションがある。

是非、あなた自身のオリジナルを見つけてほしい。頑張ってください。

・日本と海外の大学の違いは?(高2:薬学部志望の女子生徒)

海外の大学であっても「自分は何がしたいのか?それを達成するために相応しい大学はどこか」という視点で選ぶ必要がある。そういう意味では、日本で大学を選ぶことと変わらない。海外だから良いというものではない。

ただ、欧米の大学は日本に比べるとキャンパスに居る人間が多様であることは間違いない。

・医者になって、一番嬉しかったことは何か?(高2:医学部志望の女子生徒)

やはり、患者さんが元気になった時が一番嬉しい。

医者の仕事は、しんどい事もある。ただ、患者さんのためを思って仕事をして、それが報われた時に「この仕事をして良かった。」と思う。

大変なことが多い仕事なので、この気持ちを持てない人には向かない仕事だと思う。

・(自分が行きたい進路と親が求めるものが違うのだが、)親を説得するには、どうすればよいか?  (高3:薬学部を志望する女子生徒)

熱意を親にきちんと伝えるしかない。熱意が伝われば、親はきっと応援してくれる。

※   扶氏医戒之略:扶氏とはフーフェランド(ベルリン大学教授、1764-1836)のことで、その著「Enchiridion Medicum」のオランダ訳書を緒方洪庵が完訳し、「扶氏経験遺訓」全30卷を出版した。この「遺訓」の巻末に記された医者に対する戒めの部分を洪庵が 12ヵ条に要約したもの。自身と門人たちへの教えとした。

『一、病者に対しては唯病者を見るべし。貴賤貧富を顧ることなかれ。長者一握の黄金を以て貧士双眼の感涙に比するに、其心に得るところ如何ぞや。深く之を思ふべし。』等がある。

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