大阪大学ローバース



大阪・関西万博参加メンバーの集合写真(前列右から3人目が前代表の菊川さん)

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お揃いの制服に身を包み、清掃ボランティアなどの奉仕活動をする子どもたちや若者を見かけたことはありませんか?ボーイスカウトはイギリス発祥の青少年育成運動で、18歳~26歳の活動は「ローバースカウト」と呼ばれています。大阪大学ローバース(通称・阪大ローバース)は、大阪大学でボーイスカウト活動を行う公認サークル。活動の一つである“海ごみアート教育プロジェクト”で2025年の大阪・関西万博に参加しました。今は2028年を目途に教育プログラムの策定を目指し、日々の活動に取り組んでいます。

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大学進学で地元を離れた学生のボーイスカウト活動の場として

阪大ローバースは、大学進学にあたり地元でのボーイスカウト活動が難しくなった学生が、大学周辺地域で活動できるようにと2021年に立ち上げたサークルです。2023年には日本連盟に加盟し、正式にボーイスカウトの地域団の一つになり、2025年には大学の公認団体になりました。

そもそもボーイスカウトとは、1907年にイギリスで始まった青少年教育運動のこと。現在では176の国と地域で5,700万人以上の青少年が、年齢・発達段階に応じた部門に分かれて参画しています。その最終部門が「ローバースカウト」。自身がそれまでに得た体験や知識、技能を基に、社会や世界の課題に挑戦することを目標としています。

兵庫県出身でボーイスカウト活動を幼稚園の年長から始めた代表の田中紹智さん(理学部2年生)と、福井県出身で小学4年生のときに活動を始めた前代表の菊川創平さん(法学部3年生)に、阪大ローバースの活動や魅力についてお話を伺いました。


ボーイスカウトの制服姿で取材に応じてくれました (左=前代表の菊川さん、右=代表の田中さん)

活動を計画・実行することで自分たちの成長も社会貢献も

阪大ローバースでは9月に代替わりが行われ、まずは1年間を通してボーイスカウトの8つの理念を満たすさまざまな活動を各月1つ実施することを年間計画として決定します。それに基づき、普段は隔週のミーティングで活動の詳細を企画。月1~2回程度、土日を使って主に野外で活動を行っています。

理念に基づいた活動はハイキングやキャンプ、焚き火会、料理対決など多岐にわたり、「例えば12月の料理対決は、『できるだけごみを減らす』という環境への配慮や、クリスマスパーティとして『異文化のクリスマスを体験しよう』という異文化理解を学ぶ意図があります。2チームに分かれて、ごみの量や盛り付け、異文化の視点などで競って対決します」と、田中さんは話します。毎年1月にはローバースカウトとしての目標を改めて考え、活動をどう改善していくかを話し合う勉強会を開催。「どのような活動を行えば、楽しいのはもちろん、自分たちが成長しながら社会に貢献できるのかを考えて計画しているので、活動を通して実際に成長を実感できたり、社会の皆さんの喜ぶ顔が見られたりしたときに大きなやりがいを感じます」と、活動を計画するところから自分たちで行うのが一番の魅力だと田中さんは力を込めます。また、「2024年に、ある企業にお誘いいただいて、ごみに関するワークショップを行ったのですが、土日の2日間で200人ぐらいの子どもたちが参加してくれました。とても大変でしたが、大きなイベントに出店したことで阪大ローバースの名前も知ってもらえたし、とても楽しかった思い出があります」と菊川さんが語るように、大学内だけでなく、地域の人々やワークショップに参加した子どもたちなど、社会とつながりを持って活動しているのも大きな特徴と言えます。

大学でボーイスカウト活動をしている特色の一つが、全国津々浦々の学生とともに活動できること。さらに、「地域の団体と違ってローバースカウトの年代だけで構成されるので活動の方向が一致しやすく、みんなで集まって一緒にキャンプに行けたりするのがとても良いところ」と話す田中さんからは、活動の充実ぶりが伝わります。

現在19名で活動しており、2025年度の新入生7名のうち3名は未経験者。「『制服が格好いいから』という理由もあるみたいですが(笑)、私たちの活動に惹かれて入ってくれた方もいてうれしく感じています」と、田中さんは喜びを語ってくれました。


活動の始まりを宣言する「開会式」の様子

海ごみでアート作品を作る活動を通じて環境問題、海ごみ問題への関心を増幅

阪大ローバースの活動において、年間プログラムと並行してもう一つの柱となっているのが、2022年から団体独自の奉仕活動をしようと始めた“海ごみアート教育プロジェクト”です。海ごみをリユースする活動はこれまでに他の地域でも行われていましたが、この活動ではボーイスカウトとしてのノウハウを基に、教育プロジェクトとして広く社会の人々と取り組むことで海ごみについての問題意識を増幅させ、大きなムーブメントとして自然環境の改善を図る狙いがあります。

活動内容としては、海岸に流れ着いた海ごみを回収・洗浄・乾燥し、それを用いて自分なりのアート作品を作ってもらうワークショップを開催しています。

菊川さんは「ワークショップに参加してくれる子どもたちに、海ごみ問題の危機感や、ごみを拾うことがなぜ重要なのかを伝えるのが最初は難しかったです。スライドで説明したり、クイズを出してみたり、アート作りの間にも積極的に話しかけると興味を持ってもらえるんじゃないか、というように試行錯誤しながら行っていました」と振り返ります。

海ごみを拾うことで実際に環境奉仕活動を行うと同時に、毎回ブラッシュアップを重ね、これまでに11回のワークショップを開催し、276人もの子どもたちが参加してくれました。そして約10kgの海ごみがアート作品へと生まれ変わりました。

「作った海ごみアートは各自持ち帰ってもらっています。子どもたちがそれを目にしたときに『これは海ごみでできている』というのを思い出す、環境問題に対する一種のリマインダーとして機能してほしいという思いがあります」と菊川さんは語ります。


兵庫県の甲子園浜で海ごみを回収するメンバーたち


海ごみ回収後の写真

大阪・関西万博でブース展示・発表「海ごみアートの可能性を実感」

“海ごみアート教育プロジェクト”を始めたときの一つの大きな目標が、大阪・関西万博での活動発表です。2025年9月7日には大阪大学万博学生部会の一員として、9月21日には一団体として参加し、「TEAM EXPOパビリオン」でブース展示とステージ発表を実現しました。

ブース展示では、これまでの活動の流れをスライドショーやポスターを用いて紹介するとともに、実際に拾って洗浄した海ごみやアート作品を並べました。菊川さんは「来場者の中にはボーイスカウトについて知らない方もいらっしゃるので、ボーイスカウトの概要から、それがどう“海ごみアート教育プロジェクト”につながるのかを順を追って説明する必要がありました。ボーイスカウトで10年ほど活動している私たちにとって、当たり前のように感じていたことをもう一度言語化するのが難しかったです」と振り返ります。

そしてステージ発表では、これまでの活動実績の紹介はもちろん、本教育プロジェクトのどこにボーイスカウトの教育ノウハウが生かされ、他とは違う海ごみアート活動になっているのかにも言及。さらに、「共創」という万博の重要なキーワードのもと、環境問題や教育に取り組む他団体や企業の方に連携を呼びかけました。

発表担当者の一人だった田中さんは、「とても緊張しましたが、最後にパネルディスカッションという形で来場者の方とお話しできたのは楽しかったです。発表後に“海ごみアート教育プロジェクト”の活動を振り返ってみて、このプロジェクトがとても有効だとわかり、もっと広げていかなくてはと、強く感じるようになりました」と意気込みを新たにしています。

このプロジェクトの目的は、海ごみを拾うことではなく、海ごみ問題に関心を持ってもらうこと。「海ごみをアートにする一番のメリットは、身近に感じてもらえることです。ブースではミャクミャクのモザイクアートも展示したのですが、通りがかった人が『このアートは何?』と興味を持ってくれ、アートの持つ可能性を実感しました」と菊川さんは目を細めます。

万博に参加したことで団体としての知名度が上がり、万博関連のさまざまなイベントに参加したりワークショップの開催が決まったりと、影響力の大きさも感じています。


“海ごみアート教育プロジェクト”の大阪・関西万博ブース展示


「TEAM EXPOパビリオン」でのステージ発表(マイクで話しているのが前代表の菊川さん)

“海ごみアート教育プロジェクト”を完成へ さらに他の奉仕活動も視野に

阪大ローバース発足後まもなく始めた”海ごみアート教育プロジェクト”。大阪・関西万博での発表という一つの山を越え、田中さんに今後の目標を尋ねると、「2028年を期限として、これまで行ってきたワークショップなどの活動をまとめ、他のボーイスカウト団体や教育団体などが取り組める教育プログラムとして作り上げたいと考えています」とのこと。教育プログラムとしての完成に向けて、今は地域の人々やボーイスカウト団体に向けたワークショップをさらに行っていこうと考えています。その一方で、「他の奉仕活動にも積極的に参加していきたいと思っています。“海ごみアート教育プロジェクト”で奉仕活動の尊さを深く実感したので、災害ボランティアなど、誰かのためになる活動を行うことを私自身の次の目標にしたいです」と、自身の抱負も語ってくれました。

田中さんへと代表を引き継いだ菊川さんは、「2025年から大学の公認団体になり、万博にも参加できたので、これからもみんなをサポートして盛り上げていきたいと思っています」と心強い言葉を掛けていました。

「より良き社会を創る」というボーイスカウトの理念のもと、今後も新しいチャレンジを続ける阪大ローバースからますます目が離せません。

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