大阪大学News Letter 65号「卒業生登場」コーナー~スペシャルエピソード~

大阪大学News Letter「卒業生登場」コーナーで好評連載中のOB・OG訪問
65号では大阪市立東洋陶磁美術館長の出川哲朗さんと、和歌山ステーションビルディング社長の藪章代さんを紹介しました。

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ここでは、お二人の記事には書ききれなかったエピソードを披露します。

世界的なコレクションを誇る美術館を率いる出川さんは、1978年に基礎工学部物性物理学科卒業後、文学部美学科1期生として学士入学、そして文学研究科を修了、という経歴の持ち主です。当時の専攻の授業は、どれも型にはまらないユニークなもの。領域を軽々と超える先生方の自由な発想、新しい学問を作っていくという気概に触れたのが、進む道を決める大きな動力になったといいます。ドナルド・キーン先生をはじめとする恩師との交流は、いまも続いています。

ここでは、東洋陶磁美術館に就職を決めた際の体験談を。

選考試験では、語学や小論文の筆記のあと、面接が行われました。会場に入ると、目の前には李朝(14世紀末から20世紀初の朝鮮王朝)の筆筒がずらり。予算額内で購入したいものから順に並べなおすように、との課題です。次いで、化粧品会社から取り寄せた50枚もの青系統のカラーサンプルを、色温度順に並べ替え。東洋陶磁の世界では、微妙な色合いの違いが産地や年代を語るため、色を正確に見極める眼力が不可欠なのです。

過酷な試験に絶句したものの、美学科時代から目を研ぎ澄ませてきたことで、臆せず臨めたそうです。その後、中国陶磁の専門家として実績を積むうえでも、陶磁器の化学分析の用語が抵抗なく理解でき、基礎工時代の経験が役に立ちました。

世界四大博物館に数えられる台北・國立故宮博物院と調印するなど、第一線で活躍する出川さん。その礎は阪大時代に作られていました。

JR西日本の採用1期生、かつ3人だけの大卒女性社員としてスタートし、JR西日本グループ初の女性社長に。フロントランナーとして走り続けてきた藪さんは、News Letter本誌でも紹介したとおり、実際に毎日ランニングをこなすタフな経営トップです。

多趣味・多才な藪さんは、文章を書くことも大好きで、学生時代には新聞社でフリーライターのアルバイトを続けていました。この時、「書く力」をがっちり鍛えられます。

JR西日本には1988年に入社。翌年からJR大阪駅高架下に商業施設「ギャレ大阪」を開発するプロジェクトに携わった後、本社スタッフ部門などを経て、広報室で管理職に登用。社外広報誌や社内報の編集責任者として、学生時代のライターのアルバイト経験が大きく役立つことになりました。その後、天王寺ミオなどの商業施設の管理運営業務や新規開発を担当。天王寺ミオでは、営業概況をご出店オーナーにお知らせする「オーナーメール」を毎月発信しています。

藪さんが着任する前は、運営チームの管理職が持ち回りでメール文書を作成していましたが、藪さんの着任後は、一人で一手に引き受けることに。自分の書いた文章を多くの方に読んでいただける喜びを感じて、4年にわたり原稿を書き続けたといいます。

学生時代に貪欲にいろいろなことを経験し、そこで培った力を存分に発揮し続けてきた藪さん。「自分の限界を決めずにチャレンジすれば、必ず身につく」という後輩へのメッセージそのままの道のりです。

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