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大綿の夕日に紛れ見失ふ
なに気なく咲き花石蕗の地を照らす
◎画架立てて小春日の瀬戸一望に
曇りぐせなにわの町の初冬かな
煌めける夜汽車駆くるや雪の原
大根の清しき白を刻む朝
◎大綿や空のすき間をもれて舞ふ
◎諍へばおろし大根辛きかな
忘年会去年には君の在せしを
ふろ吹きの大根熱し三度吹く
石蕗の花海と空との青を背に
◎大綿の消えて虚空の残りけり
大綿や徘徊止まぬ義母 (はは) を追ふ
歩み来し五百余回や冬日和
重さなど持たず大綿さまよへる
三本は重し大根貰ひけり
島々を左に右に小春凪
◎大根をすぱすぱ切つて気の晴るる
大根を抱きて急ぐ家路かな
三婆のベンチ動かぬ小春かな
竹細工楽しむ人に小六月
◎小春日や千羽の鶴を折りあぐる
母偲ぶ能楽堂や石蕗の花
大根抜く土の匂の新なり
大根煮をいつとは知らず好きになり
街路樹の赤き林檎や伊那の町
石蕗の花つき出して咲く日向かな
綿虫や命繋げば死の軽し
何時までも歩いていたし小春の日
石蕗の花つき出して咲く日向かな
◎大根煮る香りに籠る妻の味
海光る山道石蕗の咲きさきぬ
われに在る末枯ごころいつくしむ
旅小春心ならずもいたはられ
庭仕事とくとはかどる小春かな
大綿のごと知らぬ間に消えたかり
大根煮て句作三昧一人の夜
大根の柔く煮え人恋し
◎大根を提げて植木屋集金に
待兼会五百余会の冬うらら
大綿の風に任する終の道
白壁も懸大根も夕日中
綿虫の運河越す時光りたる
◎来し方を語りて寡婦の小春かな
浩風
あや
翠
ゆたか
遊子
京子
眞知子
輝子
安廣
昴
邦夫
洛艸
眞知子
あや
輝子
香月
嵐耕
暁子
あや
暁子
言成
輝子
太美子
安廣
乱
遊子
ゆたか
邦夫
ゆたか
ゆたか
言成
翠
あや
暁子
洛艸
暁子
翠
翠
遊子
あや
邦夫
暁子
幹三
太美子
井上浩一郎 選
第551回 平成26年11月17日 (月)
石蕗の黄や句心育て来し月日
大根を抱きて急ぐ家路かな
なに気なく咲き花石蕗の地を照らす
棲み古りて庭のあちこち石蕗の花
恙なく支へ合ひゐる小春かな
軒先も塀も立木も懸大根
あや
浩一郎
選者吟
第550回 平成26年10月20日 (月)
兼題 新酒・鵙(あや)栗・秋高し(浩一郎)
席題 卓上に 茸・檸檬・杜鵑草・石蕗の花・満天星紅葉・
銀杏・紫式部
秋高し欲ばらざれば身の軽し
知らぬ間に鴨の陣あり里の川
夕鵙に切り上げられし立話
鳥影を庭に残して鵙の去り
秋高し白樺の白空の青
声抑へ鵙低く飛ぶ森の中
◎今年酒越し方思ひ人想ひ
新酒酌む酔のまはりの早きかな
栗を剥く妻は真顔となつてゐし
風のみち磯の香の径秋高し
焼栗の熱さ嬉しき紙袋
雨風の一夜明くれば天高し
◎こんもりと枡に注がれし新走
京の秋高し西山東山
かの人の電話が嬉し秋の宵
鵙一羽高だかと啼く枝の先
◎秋高し一日終はるを惜しみけり
拾ひ来し柴栗五つ栗ごはん
天高し甲斐と武蔵の分水嶺
頂上に秋灯一つ比叡山
新しき杉の杓子や栗御飯
廬山寺や紫式部の色さゆる
新酒もて祝ぐべき勝利ありにけり
秋高し青どこまでもつづく空
心急かるる思ひあり鵙日和
◎ほろほろと萩散る縁のひとり酒
栗ご飯炊き方知らぬ寡男かな
銀の風吹き抜けて行く薄原
◎新酒提げぬつと碁敵現るる
三山の囲む旧都や虫時雨
蔵元の一筆添へて新酒くる
◎やまあひのせせらぎひかる鵙日和
銅の卸し金にて新生姜
鵙鳴くや遠くで響くししおどし
◎怖ず怖ずと上戸に紛れ新酒酌む
負け知らぬ六甲颪新酒酌む
秋高し楠の大木雲を掃き
いが栗とこはごは遊ぶ仔猫かな
◎石庭にさざ波起せ鵙一声
到来の栗炊き込みて子等呼びて
由緒ある酒蔵にこそこの新酒
廃校となりし分校鵙猛る
◎新酒酌み心を開きすぎたるか
休肝日破り手にする新酒かな
仏壇へ旦那仕込みの栗御飯
眞知子
元彦
洛艸
洋一
安廣
元彦
翠
昴
浩風
香月
幹三
浩一郎
幹三
瑛三
磨央
安廣
乱
兵十郎
和江
乱
幹三
瑛三
浩一郎
瑛三
太美子
安廣
洋一
安廣
浩風
遊子
眞知子
昴
幹三
昴
元彦
元彦
昴
安廣
翠
京子
英雄
浩風
暁子
洋一
元彦
長山あや 選
奉納の新酒やこもの香りをり
届きたる新酒や一献また一献
知らぬ間に鴨の陣あり里の川
◎夕鵙に切り上げられし立話
秋高し合掌の屋根天を指す
杉玉や新走あり古き蔵
◎今年酒越し方思ひ人想ひ
娘の苞の新酒や父を饒舌に
風のみち磯の香の径秋高し
焼栗の熱さ嬉しき紙袋
てきぱきと流れてゐたる秋の川
師の在せばこの新酒をと思ひけり
こんもりと枡に注がれし新走
◎栗むいてむいて話の尽きざりし
京の秋高し西山東山
信長を神とし新酒祀りけり
新酒酌む今は老いたる恋敵
焼栗の匂に惹かれ寄る茶店
新酒酌み友と往時を突き合はす
大いなる丹波の栗の飯を炊く
◎毬青き栗も落として昨夜の風
皮むきは主人の仕事栗御飯
秋天に高さありけり槍穂高
心急かるる思ひあり鵙日和
お地蔵や山栗ひとつ供へられ
新酒提げぬつと碁敵現るる
◎ほろほろと萩散る縁のひとり酒
呼び込みの声はづみをる初茸
栗ご飯炊き方知らぬ寡男かな
銀の風吹き抜けて行く薄原
ごつごつと妻の栗飯栗多し
サイクリング峠を越えて秋高し
色鳥のこぼせし色を風さらふ
◎鵙日和急かねばならぬ庭仕事
蔵元の一筆添へて新酒くる
手のひらの檸檬と語り合ふ夕ベ
検診の無事に終りて秋高し
◎レモン切り辺りにレモン満ちにけり
蔵元の見学に酌む今年酒
利き酒や新酒の酔ひの軽やかに
渓に満つる栗焼く匂ひ箕面道
杉玉も新た蔵出す今年酒
◎しづもれる団地の昼や鵙高音
枝先に鵙の来てをり夫を呼ぶ
団欒は焼栗の香に包まれて
大楠の揺らぐことなし秋高し
霊場の木々にさまざま鵙の贄
◎檸檬かじる少年濁世に染まらずに
新酒酌み心を開きすぎたるか
あの世より君も来たれよ新酒あり
◎鵙の声鋭く聞くや手術の日
あらばしり匂ひも味もちと
輝子
あや
元彦
洛艸
安廣
瑛三
翠
太美子
香月
幹三
幹三
暁子
幹三
あや
瑛三
翠
暁子
洛艸
邦夫
暁子
眞知子
言成
遊子
太美子
昴
浩風
安廣
遊子
洋一
安廣
乱
洛艸
あや
和江
眞知子
あや
嵐耕
幹三
洛艸
言成
瑛三
洛艸
暁子
輝子
太美子
言成
嵐耕
輝子
暁子
翠
安廣
邦夫
井上浩一郎 選
栗むいてむいて話の尽きざりし
杜鵑草淋しく暗く己れ抱く
手のひらの檸檬と語り合ふ夕ベ
鵙鳴くや街の朝空裂くごとく
雨風の一夜明くれば天高し
気がかりも大事もあらず秋高し
あや
浩一郎
選者吟
第552回 〈吟行句会〉平成26年11月30日 (日)
吟行地 観心寺(河内長野市)
唯一つ梢に残る榠摣の実
◎冬ぬくし仏像の経し千余年
風鐸は鳴らず紅葉の散るばかり
小流れも涸れて御陵へ磴暗し
天仰ぐ布袋の腹に散る紅葉
阿弥陀堂身をば委ぬる日向ぼこ
我が影の冬木の影の中にあり
御陵坂冬日千年杉の先
散り来ると見えて冬蝶舞ひ降りぬ
積上ぐる薪おほひて散り紅葉
首塚の冬日受けただ鎮もれる
◎むきだしの空となりたる冬の晴
御影堂を読経洩れくる小春かな
銅像も首塚もみな冬日射し
落葉踏み星の社巡り滑るまじ
散紅葉ひとひら受けし掌
先を行く人のありたる落葉道
冬ざるる園にぽつんと真紅の実
絶え間なく音無く落葉時雨かな
冬の蝶修業大師の御手に拠る
明日よりは師走や今日は句と遊ぶ
◎一山の紅葉かつ散る観心寺
石段は闇に消えをり散紅葉
苔むせる萱葺屋根に散紅葉
◎枝先にすでにしつかと冬芽あり
山稜へ続く蹬なり冬の蝶
冬紅葉我山姥となる一瞬
薪積み御学問所の冬構
◎冬蝶のさがしあてたる小さき花
池に浮く落葉を歩く虫のをり
河内野にゆきわたりたる冬日差
言成
眞知子
兵十郎
翠
言成
邦夫
幹三
翠
兵十郎
輝子
眞知子
幹三
曉子
眞知子
翠
邦夫
幹三
兵十郎
曉子
輝子
曉子
言成
曉子
曉子
邦夫
輝子
翠
言成
幹三
幹三
曉子
井上浩一郎 選
木洩れ日に坐せば寄り来る紅葉かな
振り返り見れば紅葉のなほも散る
紅葉散りかかれば人や咲くごとく
浩一郎
選者吟
兼題 大根・小春(あや)石蕗の花・大綿(浩一郎)
席題 卓上に 冬紅葉・山茶花・皇帝ダリア
◎棲み古りて庭のあちこち石蕗の花
曾孫連れ孫の来てゐる小春かな
煌めける夜汽車駆くるや雪の原
好物を大根と答ふ齢かな
◎好きなだけ大根引けと言われても
◎諍へばおろし大根辛きかな
大綿のたゆたふ夕淡き夢
夕闇に石蕗の黄の暮れなづむ
ゆつくりと蕾開きし石蕗の花
焼き魚の味引き出せる大根かな
肩青き高さ揃うて大根畑
検査よし病院出れば石蕗の花
忘年会去年には君の在せしを
トラックに大根の白溢れゆく
◎ことことと大根煮たき家居あり
雪のごと虫大綿の白き舞
大綿の己の影をもて余し
煮えごろの大根うまし酒うまし
◎大綿の消えて虚空の残りけり
満天星の冬紅葉活く潔 (いさぎよ) さ
小春日ややつと抱かせてもらふ稚
重さなど持たず大綿さまよへる
草も木も吾も包まる小春日に
三本は重し大根貰ひけり
石蕗一花何やら止まり居て揺るる
研ぎ終えし庖丁試す大根かな
作務僧の布施の大根高く干し
恙なく支へ合ひゐる小春かな
冬天の大画布皇帝ダリアかな
青々と大根畑の生気かな
◎譬ふれば今人生の小春なり
◎大根をすぱすぱ切つて気の晴るる
冬ダリア大きく咲きて淋しかり
小春日や千羽の鶴を折りあぐる
心地よき緊張もあり冬日和
大綿や光りて消ゆる青空に
母偲ぶ能楽堂や石蕗の花
大根抜く土の匂の新なり
大根や白き肩出し抜けといふ
都大路車夫と舞妓の小春かな
大綿や金剛葛城空広し
綿虫や命繋げば死の軽し
大綿の思案ありげにさ迷へり
◎大根煮る香りに籠る妻の味
宇宙まで雲一つなき小春かな
連想は悉皆成仏綿虫に
大根覗く袋ぶらさげ寡男かな
蹲踞に灯篭に添ひ石蕗の花
やをら立ち伸びする猫に小春濃し
引き立ての大根の葉の折れやすき
庭仕事とくとはかどる小春かな
人ひとり逝きて木の葉の散り止まず
大綿のごと知らぬ間に消えたかり
日裏出て大綿空にとけゆけり
大根煮て句作三昧一人の夜
雲動き花野を暗くしてをれり
◎白壁も懸大根も夕日中
◎軒先も塀も立木も懸大根
宵闇に黄の色の濃し石蕗の花
来し方を語りて寡婦の小春かな
苔庭に石蕗の黄の際立てり
キャンパスの芝生に屯して小春
大綿の夕日に紛れ見失ふ
画架立てて小春日の瀬戸一望に
浩一郎
暁子
遊子
幹三
乱
輝子
安廣
洛艸
洋一
元彦
浩一郎
乱
安廣
洛艸
太美子
英雄
浩風
英雄
洛艸
言成
輝子
輝子
乱
香月
兵十郎
幹三
香月
浩一郎
翠
太美子
乱
暁子
輝子
輝子
太美子
嵐耕
太美子
安廣
暁子
瑛三
翠
邦夫
洛艸
言成
元彦
乱
洛艸
眞知子
香月
太美子
洛艸
浩一郎
暁子
輝子
翠
ゆたか
暁子
浩一郎
安廣
太美子
洛艸
洛艸
浩風
翠
長山あや 選
第553回 平成26年12月15日 (月)
冬枯のやうな晩年われに賜も
真夜ひとり北風と言葉交しをり
北風といふ澄みきつた風が好き
北風や屋根職声を掛け合うて
素通りはならぬと灯す河豚の宿
着ぶくれてもの言ふ顎の動くかな
あや
浩一郎
選者吟
兼題 北風・重ね著(あや)冬枯・河豚(浩一郎)
席題 卓上に 水仙・冬芽(梅)・八手の花
◎重ね著て約束果す一日かな
残りたる湯豆腐一つ分け合うて
◎冬枯の墓地に鴉の遠音かな
除夜の鐘尽きれば八十路道あらた
遠き人もの言ふてをり白き息
一抹の不安はあれど河豚美味し
立ち止り介護夫と見る冬芽かな
事多き年しみじみと除夜の鐘
北風を追風として坂登る
冬枯の林にかすかけもの道
河豚食うて何やら口のしびれ来し
重ね著の要るか要らぬか背中決む
河豚鍋の軽き痺れとその旨み
◎たしかなる明日のあるべし冬木の芽
重ね著にお洒落心も加へゐて
荷を解 (ほど) く水仙の香や花舗の前
北風に追はるる如く散会す
三津五郎の話となりし河豚の鍋
悠久の時経し史跡冬枯るる
句会へと水仙運ぶ香も運ぶ
◎重ね著を一枚脱ぎて粥すする
◎着ぶくれてもの言ふ顎の動くかな
オーロラへ借りし重ね著重かりき
冬枯やこころ閉ざして畦の道
これがあの舌のしびれか河豚の肝
北風に挑む自転車足重し
冬枯や雄鹿にさびし角の跡
河豚食へば話題はいつか死を巡る
慎ましく生きるが良けれ花八手
腕利きの店主の河豚に舌つづみ
◎重ね著の母重ね著の稚 (やや) 抱ける
息ひそめ闇に聞き入る北風の音
河豚提灯間抜け顔なる竿の先
河豚鍋や皆が食べれば我もまた
北風に飛ばされ渡る交差点
素通りはならぬと灯す河豚の宿
◎水槽の河豚を横目にうどん買ふ
水仙の庭今は亡き友偲ぶ
ひれ酒に上司を偲ぶ夜となりぬ
古る友とありてうれしき河豚の鍋
重ね著て老いし命を包みけり
秘密めく路地の奥なる河豚屋かな
もてなしはまづ鰭酒をすすめけり
◎北風や開かずの踏切まだ開かず
冬枯れて墨絵の世界六甲山
冬枯のもの叩きゐる雨の音
ヒトになし再生といふ冬枯野
北風の鋭き刃闇を切る
河豚鍋に想ひ出したる顔ひとつ
清清し北風に真向ふ家路かな
河豚提灯ともれば店に満つ笑顔
冬枯の嵯峨野にひそと去来塚
詩を解し鰭酒愛でし友惜しむ
北風をまともに受けてガードマン
◎冬枯の野中のバス停バス止まる
病院の影の昏かり北吹く日
◎北風や屋根職声を掛け合うて
蟷螂の鎌ふりあげて枯れてをり
北風を味方にガンバ優勝す
冬枯の墨絵の景となりにけり
河豚鍋を子に誘はれて面映ゆし
北風を道連れに行く遍路旅
重ね著をファッションとして楽しめり
足重く重ね著をして投票へ
入り日差し枯山しばしよみがへる
北風の染み込んでゐる厨かな
◎独り居の寂しき自由重ね著て
河豚の声聴く波止釣の暮れゆけば
嵐耕
安廣
洛艸
洋一
幹三
暁子
翠
安廣
言成
洛艸
乱
邦夫
元彦
輝子
瑛三
暁子
輝子
浩風
兵十郎
翠
幹三
浩一郎
昴
洋一
浩風
邦夫
瑛三
暁子
遊子
英雄
輝子
昴
安廣
洛艸
香月
浩一郎
洋一
言成
瑛三
浩一郎
暁子
幹三
嵐耕
眞知子
茉衣
暁子
翠
眞知子
洋一
京子
嵐耕
瑛三
乱
洛艸
暁子
瑛三
浩一郎
輝子
元彦
浩風
和江
安廣
香月
和江
輝子
言成
暁子
兵十郎
長山あや 選
重ね著て約束果す一日かな
除夜の鐘尽きれば八十路道あらた
楽しみは先に冬芽のまだ硬く
立ち止り介護夫と見る冬芽かな
ただ一人行く冬枯の遍路道
たしかなる明日のあるべし冬木の芽
真夜ひとり北風と言葉交しをり
重ね著にお洒落心も加へゐて
荷を解 (ほど) く水仙の香や花舗の前
北風に追はるる如く散会す
◎三津五郎の話となりし河豚の鍋
手折らむと寄れば水仙香の仄か
電飾のともり冬枯忘れけり
◎北風や何処に眠るごんぎつね
◎北風といふ澄みきつた風が好き
冬枯れの花壇にも早や命萌ゆ
これがあの舌のしびれか河豚の肝
傘寿祝ぐてつさてつちり黒門に
草花の形残りて冬枯るる
冬枯や雄鹿にさびし角の跡
河豚食へば話題はいつか死を巡る
北風や駆けだす幼に負けられぬ
重ね著の肩をまるめて商へる
虜囚来て造りし鉄路冬枯るる
空薄く切つてゆきたる冬の月
奇兵隊の末裔われの河豚を食ふ
◎息ひそめ闇に聞き入る北風の音
北吹くや鳥も嗄れ声となり
◎河豚提灯間抜け顔なる竿の先
油屋の雪の土蔵の旅籠かな
北風に飛ばされ渡る交差点
◎重ね著をしてよく父母の出掛けたる
重ね著や老の口出しきりもなし
庄屋跡広く冬枯知らぬ庭
冬枯るる運動場にある日向
もう一枚重ね著をして夜の会
まよひつつ一枚重ね著て旅に
冬枯のもの叩きゐる雨の音
◎冬枯の嵯峨野にひそと去来塚
生簀より掬はれ河豚の腹白し
北風を味方にガンバ優勝す
蟷螂の鎌ふりあげて枯れてをり
冬枯や日なし水なし色の無し
河豚鰭を看板として縄のれん
寓居てふ一軒路地の花八手
冬枯の墨絵の景となりにけり
老いてなほおしやれもしたし重ね著に
臆面もなく着ぶくれる歳となり
窮屈と言ひつつさらに重ね著て
足重く重ね著をして投票へ
寒風に犬遠吠えし闇深き
冬枯れし葦弱き日を宿しをり
入り日差し枯山しばしよみがへる
河豚食べてふらりと花見小路かな
◎独り居の寂しき自由重ね著て
嵐耕
洋一
言成
翠
洛艸
輝子
あや
瑛三
暁子
輝子
浩風
翠
輝子
輝子
あや
安廣
浩風
言成
乱
瑛三
暁子
和江
輝子
兵十郎
幹三
遊子
昴
翠
安廣
遊子
香月
邦夫
浩風
言成
兵十郎
瑛三
嵐耕
暁子
瑛三
幹三
元彦
輝子
邦夫
言成
瑛三
浩風
英雄
乱
洛艸
和江
昴
安廣
輝子
浩風
暁子
井上浩一郎 選