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さぶいぼ たってる?大阪大学の最先端研究 さぶいぼ たってる?大阪大学の最先端研究

「その先の最先端へ。」ってなに!?

知を拓く人。新しい探求と挑戦。
大阪大学には、医学・工学をはじめ、数多くの学術分野で世界的に活躍する研究者の方々がいらっしゃいます。
ここでは、すばらしい研究成果を発表し、さらに新しいアプローチにも積極的に取り組み続けている
研究者の一部をご紹介!ぜひ、その最先端の研究に読んで触れてみてください。ちなみに、ワタシもドクターの端くれですっ!

vol.03

体はなぜ左右非対称なのか、を解き明かす。 動物の体は、外見上は左右対称に見えますが、お腹の中は、心臓は左、肝臓は右というように非対称です。
最初は対称だった形から、非対称性が生じるのはなぜか。近年まで謎に包まれていた、体の左右の非対称性を決定する仕組みについて、長年探求し続けているのが濱田教授です。
その研究は生物学の謎に迫るとともに、再生医療への応用にもつながると期待されています。

濱田 博司(はまだ ひろし)

生命機能研究科 特別教授

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「発生学」ってなに? 体ができる仕組みを探求。

私たちの体は、たくさんの数と種類の細胞から構成されています。
個々の細胞は決められた場所で臓器を形成し、できあがった臓器が互いに協調しながら機能することで生命を保ちます。たった1つの細胞である受精卵から、このような複雑な形と機能を持つ体が構築される過程を「発生(development)」と呼びます。そして、その過程で起こる変化の原因を探究するための学問が「発生学」です。

受精したばかりの卵は、1個の細胞です。そこから複雑な体を作るため、最初に起こるべきことは何でしょう??そうです、まずは細胞分裂を繰り返し、細胞の数を増やす必要があります。次に、細胞の数だけでなく、種類を増やす必要があります。細胞は分裂を繰り返すとともに、何度も運命の分岐路を迎え、そこで個々の運命を選び、種々の細胞へと変化
していくわけです(そのおかげで私たちは、神経や皮膚など、さまざまな細胞を持てるわけです)。また、体が作られる途中の細胞は、同じ場所に留まっているわけではありません。一部の細胞(例えば、皮膚の色素細胞の元になる細胞)は、長い距離を移動して場所を変えます。

このように「発生」は、細胞の数・種類・位置が時間とともに刻々と変化する、非常にダイナミックな現象です。この仕組みを知ることで、生物学の謎に近づけるだけでなく、ヒトの疾患の理解につながったり、また組織や臓器の一部を人工的に作り出すという再生医療への応用に役立ちます。つまり「発生学」は、基礎的な興味だけでなく、社会のニーズに大きく貢献できる可能性を秘めた学問なのです。

重要なのは、学問の壁を超えること。

ヒトを含む動物の体は、頭尾・背腹・左右という3つの方向性を持っています。体を作る仕組みの中でもうひとつ大事なことは、発生途中の体の中に、これら3つの方向性を生み出すことです。言い換えると、対称だった細胞の塊の中に、非対称性を生み出すということ。では、どのような仕組みで、対称な形から非対称な形が生まれるのか?これが、私が大
阪大学で20年間研究してきたテーマです。

一例として、体の左右の非対称性があります。私たちの体は、外見からは左右対称ですが、お腹の中の臓器は、形や位置において、すべて非対称にできています。どのような仕組みで非対称になるのでしょうか?これについては、この20年の研究成果として多くのことがわかりました。受精後8.5日頃、短時間だけ現れる左右決定因子があることや、その因子(タンパク質)は「水流」という物理現象によって左側だけに現れ、それが左右の分化の出発点になっていることなど、左右の非対称性の決定にはたくさんの遺伝子の働きが必要であり、また個々の遺伝子の働きも明らかになりつつあります。

研究を進めていく中で私自身が学んだことは、学問の壁を超えることの重要性です。これは、「○○学」と呼ばれるすべての学問に共通していると思います。発生学という学問・研究も例外ではなく、1つの閉ざされた世界ではありません。工学や数学さえも取り入れることで、ブレークスルーを生み出すことができます。例えば先ほど挙げたとおり、体の左右対称性を破るのは、発生途中の体の一部で生じる液体の流れ「水流」です。この水流がどのように生じて、どのような働きをするのかを知るためには、流体工学、物理学、数学など、一見すると生物学とはかけ離れた知識と技術が必要になります。若い人たちと一緒に、新しいことを学んでいる毎日を過ごしています。

左右非対称性を生み出す3つのステップ

2011年4月(キャンパス内での花見)

PROFILE

濱田 博司

生命機能研究科 特別教授

1950年、香川県生まれ。
1975年に岡山大学医学部を卒業。1979年、岡山大学医学博士。1979~1988年までアメリカ・カナダでの留学を経て帰国。
1988年より東京大学医学部助教授、1993年より東京都臨床医学総合研究所・部長を経て、1995年4月より大阪大学教授。
2014年に紫綬褒章を受章。2015年4月より、理化学研究所 多細胞システム形成研究センターのセンター長を兼任。マウスをモデル生物として用いて、体ができあがる仕組み、とくに体の左右非対称性が生じる機構を研究している。