阪大StoryZ

阪大生にも、研究者にも、卒業生にも誰しも必ずある“物語”
その一小節があつまると大阪大学という壮大なドキュメンタリーを生み出します。
それぞれのStoryをお楽しみください。

学びは、道を拓く力を授ける。
そんな一味違う阪大での学びの教科書(ストーリー)

現場で生まれる「共創知」が街に命を吹き込む  学生・企業・住民がつくる地域の和
現場で生まれる「共創知」が街に命を吹き込む  学生・企業・住民がつくる地域の和

現場で生まれる「共創知」が街に命を吹き込む 学生・企業・住民がつくる地域の和

大阪大学グローバルビレッジ施設整備運営事業

実社会は、さまざまな立場で多様な経験・知識を持ったプレーヤーが複雑に影響を与え合いながら形成されている。大学の研究がキャンパスの内側にとどまらず、社会との関わりを持ちながら、現場でともに課題を探索し、あらゆる場に存在する「埋もれた知恵」を掘り起こせば、新たな価値を創出できる。大阪大学が掲げる「共創(Co-creation)」の理念を新しい街づくりの中で実践するプロジェクトが、大阪府吹田市で着々と進行している。日本人学生、留学生、教職員の混住型宿舎として、大学が2020年10月の開業を目指す「グローバルビレッジ津雲台」の持続可能な運営を巡って、学生たちが現場に足を運び、関係企業との活発な議論を展開する。その一つ、人間科学研究科の稲場圭信教授による「共生社会論」の講義を通して、「共創知」の生まれる現場をリポートする。

枠組みにとらわれず提言

2019年12月17日、冬の日がとっぷりと暮れた吹田キャンパス。人間科学研究科東館の106講義室は学生たちの熱気に満ちていた。

講義の進行役を務めるのは、グローバルビレッジのデベロッパーである「パナソニックホームズ」街づくり事業部の上田眞部長。この日、学生たちに与えられた課題は、グローバルビレッジが掲げるキャッチフレーズについて、事前に用意された5つの候補から最もふさわしいものを選ぶことだ。議論が進むにつれて、学生たちは発展的に脱線し始めた。「大阪らしさ」や「リズム感」のよさなど独自のアレンジを加えた案が提案され、「五者択一」の枠組みにとらわれない自由な発言が相次いだ。結果は、この春、グローバルビレッジWebページで発表される。

この講義では、「共生社会」のテーマに沿って多くの機会が提供される。例えば、これからの日本が直面する多死社会で課題となる「看取り」の問題にどう向き合っていくのかを、保健士から話を伺い考えるワークショップのほか、グローバルビレッジに関係する複数の企業など現場で奮闘される方々の声を訊く機会を設けている。現場を知り、学びを深める。新しい街づくりにも関われるとあって、受講生の意気込み、満足度は高い。

 

 

現場での挑戦が「知」を研磨する

稲場教授の研究室では7、8人の大学院生と「共生社会論」を選択した学部生たちが、建設現場でのフィールドワークや企業とのワークショップを繰り返している。地域コミュニティの衰退は今や、都市はもちろん地方においても大きな課題だ。学生寮を中心とした街であれば、構成員は年度ごとに入れ替わり、何もしなければコミュニティの形成は極めて困難になる。これから50年の長きにわたって持続可能なものにするためには、街のハード面に加えて、ソフト面が何より重要だ。現場の状況を肌で感じた学生たちが講義という「場」を活用して、「社会=企業」と課題について意見をぶつけ合い、解決策を模索していく。

稲場教授が学生たちに求めるのは、機会があれば現場に出ること。「論文を読むのはいつでもできる。理想論にとどまることなく、とにかく現場に足を運んで、大学で得た知識が社会でどこまで通用するのかを感じ取ってほしい」と話す。

 

ダメ出しされても絶対引くな

企業が、「学生の声を取り入れる」というのはよくある事例だ。しかし、学生の意見から課題となる要素を拾い上げて、実のあるものにするには、ただ聞くだけでは不十分となる。稲場教授は、学生たちに対して「ダメ出しを受けても絶対に引くな」と説く。企業側からすると、学生の声は「突拍子もない質問が得られる」「業界の常識などの枠を知らない学生からの意見は刺激が得られる」としてメリットを感じているが、そうした意見に対しては、つい制度上の課題や現状では難しい理由を挙げて、説得しようとしてしまう。

そうした反論に対して、学生が「引かない」態度をとることで、企業側も「なぜダメなのか?」をもう一度考えるようになり、うまくいけば事態が動き出すきっかけになる。「統合知」「共創知」を生み出すためには、現場で、対等に、互いに知恵を出していくという流れが重要だ。

 

価値観の衝突が導く好循環

数千人が住む街づくりの事業に直接関わるという得がたい体験。学生たちには「プロジェクトを自分たちで動かす」という気概があふれている。

人間科学部2年、川瀬純菜さんは「寮生活をしていた時期があり、掃除の分担など単純なことでも周囲の人とのコミュニケーション不足を痛感した。今回の体験を通じて、『自分にも何かできるのでは』との思いが強まった。日本人学生と海外留学生がお互いの言語を教え合えるしくみを創り出したい」。3年の柴悠人さんは「企業人と交流することで、『誰をターゲットにしたサービスなのか』に留意するようになった。社会の中でゼロから何かを生み出せれば」と意気込んでいる。

パナソニックホームズの上田部長は「経済性や世間の常識にこだわらない自由な発想をする学生の意見は貴重。学生と一緒にコミュニティづくりの実証を繰り返し、データを蓄積しながら活用できるサイクルをつくり出したい」と「共創」への期待を語った。

思考のプロセスや価値観の異なる人々のぶつかり合いが、新たな「知」を生み出す原動力となる。

 

●大阪大学グローバルビレッジ施設整備運営事業
この整備事業は、日本人学生と外国人留学生が混住する学寮300戸及び教職員宿舎400戸の本学施設、民間付帯施設(賃貸住宅、サービス付き高齢者住宅、医療施設、物販等)をPFI方式を用いて、津雲台宿舎の跡地に整備・運営するもの。大学施設は単なる居住ハードではなく、異文化交流・地域交流等の教育ソフトを含めた、グローバル人材育成拠点を目指す。2020年10月供用開始予定。

[詳細]
https://globalvillage.icho.osaka-u.ac.jp/index.html

(本記事の内容は、2020年2月大阪大学NewsLetterに掲載されたものです)

 

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