阪大StoryZ

阪大生にも、研究者にも、卒業生にも誰しも必ずある“物語”
その一小節があつまると大阪大学という壮大なドキュメンタリーを生み出します。
それぞれのStoryをお楽しみください。

学びは、道を拓く力を授ける。
そんな一味違う阪大での学びの教科書(ストーリー)

接合のプロフェッショナルが人と人、文化と文化をつなぐ
接合のプロフェッショナルが人と人、文化と文化をつなぐ

接合のプロフェッショナルが人と人、文化と文化をつなぐ

カップリング・インターンシップ(CIS)

「モノとモノを接合する」というテクノロジーの歴史は古く、紀元前3000年ごろまでさかのぼることができる。その一方で、新素材が生み出される度に革新を繰り返す接合は、常に時代の最先端を走る「エバーグリーン」の学問分野でもある。国内唯一の接合分野に関する総合研究所、大阪大学接合科学研究所(接合研)では6年前から、文系/理系の壁や国籍を超えて学生と学生、学生とグローバル企業とをつなぎ合わせる独自のプロジェクトに着手した。名付けてカップリング・インターンシップ(CIS)。CISを主導する接合研の近藤勝義教授と勝又美穂子特任准教授(常勤)に、接合の専門家がアレンジするちょっと普通じゃないインターンシップについて聞いた。

グローバル環境を実体験

CISは一つの事業所に8人の学生を派遣し、阪大の文系1人と理系1人、海外大学の文系1人と理系1人という組み合わせで4人組の2チームを作って活動する。初対面の段階から徐々にチームワークをはぐくみ、企業での実習や現地の文化体験を経て、共同で最終報 告を練り上げる2週間のプログラムだ。一般的なインターンシップや海外研修で目的とされることの多い、特定の専門知識や業務知 識の強化、または外国語の向上等を目指す取り組みではなく、実践的なチームワークの下で、グローバル人材に必要であるコミュニ ケーション能力、異文化理解、課題解決、自己の役割の認識を強化してもらうことを目的としている。阪大の理系は工学研究科や基礎工学研究科から、文系は外国語学部や経済学研究科から学部生・大学院生が参加。海外学生の人選は阪大と提携する現地の大学に任せている。

CISは2013(平成25)年度に文部科学省の特別経費事業として産声を上げた。当初は接合研だけのインターンシップを想定していたが、学内の知恵を集約する中で「『文系と理系の融合』というコンセプトが浮上し、接合研が得意とする産学連携を生かす形でスキームが形成されていきました」と近藤教授。 民間企業(神戸製鋼所)出身の菅哲男・客員教授が築いた企業ネットワークを駆使して、国内企業の海外事業所に研修の場を確保。2018(平成30)年度からは国内にも拠点ができ、6年間の総実施回数は海外33回、国内2回の計35回にのぼる。海外ではインドネシア、ベトナム、インド、タイ、シンガポール、カタール、ミャンマー、マレーシア、フィリピン─の計9カ国で実施してきた。

 

ミャンマーCIS現場見学

 


左: タイCIS事前研修グループ協議/右: インドCISの文化体験

 

共同生活で縮まる距離

阪大生同士は国内で事前研修をして顔見知りになるが、現地の提携校から派遣される海外の学生とは全くの初対面。最初はよそよそしい雰囲気で、コミュニケーションもままならないが、現地事前研修の2日間でアイスブレイクを通じ徐々に距離を縮め、同じホテルで共同生活を送ることで、企業を訪問する3日目には、互いに英語や現地の言語で冗談を言い合うほど、親しくなっている。


インドCISのグループ協議風景

 

学生たちは企業側から「生産性向上の課題と対策」などといった漠然とした形で実習テーマを与えられる。それを念頭に置きながら、経営学習や工場見学、働く人へのインタビュー、溶接やカッティングの実習作業に取り組む。また、訪れた国の文化や慣習、宗教などを理解できるような体験学習も、自分たちで計画して実践する。

最終日の報告会では、企業や現地の大学教員、阪大教員らが立ち会うなか、チームごとに提言をプレゼンテーションする。少ない人数と限られた時間の中でアウトプットまで形作る必要があるため、学生たちは毎日夜遅くまで4人で意見を戦わせる。その様子を見守る勝又特任准教授は、「最初はなかなか議論に参加できない学生もいますが、専門性やバックグラウンドに応じて、自分にしか担えない役割を苦労しながらも必ず発見する姿には感心させられます」と語る。

 

学生、企業ともに広がる価値観の幅

「CISの出発前と帰国後とでは、学生たちの顔つきが全く違ったものになります」と勝又特任准教授。留学ではある程度自由につきあう人を選べるが、決まったチームで行動するCISは実際のグローバル環境に近い。異なる言語や文化の壁をいかに乗り越えて成果を出すか、試行錯誤する過程で学生たちは大きく成長していくという。学生たちも「専門分野や価値観が違う人たちと課題に取り組む中で、自己の強みや弱みを再認識できた」「海外学生の意識の高さが非常に刺激になった」と大きな手応えを胸に日常に戻っていく。CISの実習にやりがいを感じて、ものづくり企業に就職する文系学生も現れた。 企業の側も、当初は受入れ体制の構築に負担があるため、参加に消極的なことも多いが、一度参加した企業からは非常に好評で、パートナー企業は年々増えている。「会社の良い点や問題点などを改めて考える機会となり、社内が活性化した」「学生に教えることで従業員も成長できた」とメリットを実感している。学生のフレッシュな視点からの提案を業務改善に活用した例もあるほか、現地大学との関係構築の契機としても意義を見いだしているようだ。

 


左: インドCIS最終報告/右: ダイヘン六甲工場見学

 

昨年度までに阪大と海外から140人ずつ、累計280人が参加したCIS。近藤教授は「阪大の中でも出来る限り多様な学部から参加できるようにしたい。このプログラムをベースに新たなプロジェクトを立ち上げる起源(=オリジン)にもしていきたいですね」と、今後のビジョンを語った。

(本記事の内容は、2019年9月大阪大学NewsLetterに掲載されたものです)

 

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