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「ナノ粒子量産プロセス」を解明し世界初の数値予測に成功

熱・物質・流動の現象を表現し計算する数式とアルゴリズムを開発

ナノ粒子は太陽光パネル、ドラッグデリバリー(必要な薬物を、体内の必要な場所に供給するシステム)など、環境・医療・工学といった多様な分野に応用できる新材料。量産化が難しいとされているが、強い光を放つ流体「熱プラズマ」を用いることで大量に創製できる。「熱プラズマは、超高温の流体。電磁場を用いて、ボールのような形状にした熱プラズマに、原料となる金属などの粉体を投入すると一瞬で蒸発する。その金属の蒸気を冷やして再凝縮させることで、1立方㌢のなかに1〜100兆個ほどの金属の霧、つまり金属ナノ粒子が大量に生成します。しかし粒子のサイズや組成にバラツキがあるのが現状です」

理由は、熱プラズマ環境におけるナノ粒子の生成メカニズムが非常に複雑であること。さらに、熱プラズマは摂氏1万度を超える高温であるため実験による直接計測が難しい。そこで茂田准教授は数学や物理学などを駆使した理論によるナノ粒子創製プロセスの解明に取り組んだ。プラズマ内で起きている熱流動や粒子生成の現象を数式で表し、独自のアルゴリズム(コンピュータによる計算手法)を考案、世界で初めて金属間化合物ナノ粒子の集団生成過程の数値予測に成功した。

また、「数値シミュレーションにより、プラズマ内に非常に複雑な渦、逆流があることもわかりました」。そのような渦の存在は以前から示唆されてはいた。しかし、その特異な現象を数式で表現することや、式を計算するためのアルゴリズムの開発が難しく、茂田准教授が開発した数学モデルと数値シミュレーションにより、熱プラズマ流の詳細も世界で初めて明らかになった。

 

質の良いナノ粒子を量産するためのプラズマ予測に取り組む

これまで未解明だった現象が再現されたことで、どうすれば熱プラズマで質の良いナノ粒子を量産できるかというプロセスの予測も大きく進み始めた。「プラズマなどの流体は基本的に渦を巻きたがりますが、流れが激しすぎると制御できない。プラズマの渦を穏やかにできれば、均質なナノ粒子を大量創製できる方向に進むのではないか」。しかし熱プラズマの挙動を完璧にはシミュレートできておらず、茂田准教授はコンピュータ内にバーチャルな実験装置を構築し、試行錯誤を続けている。

 

流れているものに興味数学的アプローチができるところが強み

この研究の面白さは「ひとつの分野の学問だけでは解明できないところ。複数の物理学を駆使して、やっと解を見つけることができる」。また応用数学に強い興味があり、「今回の研究成果のような数学的アプローチができるところが、私の個性であり強みだと思います」

小さい時から流れているものに興味があった。「コーヒーに入れたクリームの渦や煙が巻く様子などを自然のアートと感じますし、流れを見ること知ること、自分が打ち立てた理論と手法を用いて流れを再現できることに喜びを感じます」

趣味は時折、バンド仲間とドラムを叩くこと。「かつてレコード会社から声がかかったこともある」という腕前で、好きなジャンルはロック。「見た目からは想像できないと言われますが」と笑った。

 

●茂田正哉(しげた まさや)

2004年東北大学大学院工学研究科修了。工学博士。東京工業大学、ミネソタ大学の博士研究員を経て、06年東北大学大学院工学研究科助教。10年ボローニャ大学客員教授(兼任)、12年カリフォルニア大学バークレー客員研究員(兼任)。13年から現職。
 

 

 

(本記事の内容は、20182月大阪大学NewsLetterに掲載されたものです)

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