国立大学法人大阪大学公式ウェブサイトです。地域に生き世界にのびる 大阪大学

最新情報

ITを用いた地域連携 防災・見守りの仕組みづくりに挑戦

地域防災の拠点として宗教施設に着目

2014年に公開された災害救援アプリ「災救マップ」(Android版・iPhone版)(2017年1月より大阪大学の知的財産)の大きな特徴は、災害時の緊急避難所として、自治体の指定避難所に加えて、地域の寺社・教会などの宗教施設が地図上に表示されること。

アプリ開発のきっかけは、2011年の東日本大震災。「被災地では、100を超える寺院や神社が緊急避難所となりました。私は以前から宗教の社会的役割を研究しており、地域の人にとって寺社は身近な存在で大人数を収容できることから、災害時に宗教施設が緊急避難所となることを予想していました」。そのため、稲場教授は地域防災の拠点として宗教施設に着目。救援物資を持って被災地に入り、支援活動に携わりながら宗教者による支援状況などのデータを収集。震災後に、宗教施設と市町村の災害時協力や協定の締結が急増していることもわかり、「災救マップ」企画開発につながった。

 

出張先や旅行先でも使用できる「災救マップ」

災害時を想定した防災アプリは他にも多数存在しているが、「情報は地元や周辺地域に限定されているケースが多く、出張先や旅行先では使用できません。「災救マップ」なら、GPS機能により現在地に近い避難所や寺社等宗教施設を表示します」。市民が被災状況を発信できる双方向性も重要な特徴のひとつだ。「被災の度合いや救援物資の過不足、病人やけが人の有無などを投稿できるため、行政やボランティアが連携した支援活動に情報インフラとして役立ちます」

災害時にアプリを活用してもらうには普段から使い慣れてもらうことが必要。そのために、地域の観光情報なども表示することで平常時にも使用できるよう改良し、今後、アプリの認知度を高めて広く普及させようとしている。

 

被災による電源喪失時にも対応

 通信用電波を中継する基地局の被災や電源喪失などを想定し、「災害時にもインターネットに接続できるWi-Fiステーション機能と、風力及び太陽光による発電機能を備えた街路灯を、全国に普及させていく予定です」。その街路灯には防犯カメラも搭載され、平常時には地域の高齢者や子どもたちの見守りに活用できる。大阪大学では8月に3台の実験用機器が吹田キャンパス内に設置され、被災時を想定した実験がスタートしている。

 

 

人種・国境・思想を超えて支え合う社会に

宗教の社会的役割に加えて利他主義を研究テーマとする稲場教授は、2016年4月、人間科学研究科に新設された共生のあり方を理論的・実践的に探究する「共生学」に参画した。「母子家庭で育ち地域の人に支えられたことで、社会正義や利他主義、共生などに関心があり、国内外で調査、研究を進めてきました」。夢は、人種・国境・思想を超えて支え合う社会ができること。「世の中甘くないと皆に言われますが、大事だと思うことを発信していくことが重要」として、利他主義に関する著書なども発行。一方で、現場に足を運び、実際に社会が抱える課題を捉えることを大切にしている。多様な人・地域と共創しながら、「共に生きる社会を作るための学問体系を構築し、日本だけでなく世界に向けて働きかけたい」と熱く語っている。

 

●稲場圭信(いなば けいしん)
1995年東京大学文学部卒業。2000年ロンドン大学大学院博士課程修了。宗教社会学博士。03年神戸大学発達科学部 助教授などを経て、10年大阪大学人間科学研究科 准教授。16年から現職。著書は「災害支援ハンドブック」(春秋社)、「利他主義と宗教」(弘文堂)など。

 

(本記事の内容は、2017年10月大阪大学NewsLetterに掲載されたものです)

最新情報

このページのトップへ