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マイクロ波による革新的製造プロセスで世界のものづくりを変える

マイクロ波化学研究の世界的拠点に

マイクロ波は電子レンジにも使用されている電磁波の一種で、物質中の特定の分子を直接振動させ、内部から急速に加熱する。ものづくりにおける効果が広く認知されながらも、最適な周波数の選定や温度の制御、安全性などの観点から設備の大型化(事業化)が困難とされてきた。

マイクロ波化学株式会社(MWCC)が、産学連携の「マイクロ波化学共同研究講座」を設置したのは2010年4月。同講座における研究成果を基に、化学品の製造プロセスを抜本的に変える革新的技術を国内外の化学メーカーに提供するなど、化学産業におけるプロセス・イノベーションの実現をめざしている。

 

ドラスチックな戦略がとれる共同研究講座

共同研究講座を設置した理由について、MWCC取締役CSOでもある塚原保徳特任准教授は「大阪大学はIndustry on Campusの標語を掲げ、開発した技術などの産業化に力を入れており、その一環として共同研究講座のシステムが起ち上がった。それまでの一般的な共同研究は、研究費が100万〜200万円レベル。ドラスチックな戦略をとることが難しかったが、企業が2000万〜3000万円をコミットさせる共同研究講座なら、基礎研究から製造プロセスの開発、量産化を含めたマイクロ波技術の実用化が加速し、産業化が実現するのではないかと考えました」と話す。

市場規模は500兆円

19世紀後半に勃興した化学産業は、1世紀以上にわたり大きなイノベーションがなく、外部からの間接的エネルギーにより、全体を加熱して化学品を製造してきた。使用しているエネルギーは「産業界全体の30%に及び、二酸化炭素排出量の17%を占めている」うえ、従来の化学プラントは広大な敷地も占有している。「マイクロ波化学の技術で、エネルギー使用量1/3、用地面積1/5を実現したい。化学・エネルギー産業の市場規模は500兆円ほど。1%でもマイクロ波に置き換えることができれば、5兆円規模の産業となる」と、MWCCの吉野巌代表取締役社長はマイクロ波技術の大規模展開に大きな可能性を感じている。


トライ&エラーの繰り返し

共同研究講座が開発した独自の基盤技術は、大きく分けると二つ。一つ目は、さまざまな製品材料の反応に合致した周波数を決めるなど、化学反応を分子レベルでデザインする技術。二つ目が、それを化学プラントにスケールアップする技術。反応器にいかに正確に均一に電磁波を投入するか、電磁波を操るためのテクニックだ。特に、電磁波を操る技術は「多くの化学メーカーが過去にトライしては失敗してきた。共同研究講座においても、トライ&エラーの繰り返しの日々が続いた」と塚原特任准教授。

しかし、既成概念に囚われず異分野の人たちが連携した結果、世界で初めて装置の大型化を実現。「大阪大学内で、特殊な分析機器などのハードや、文献検索といったソフトを使用できたことも成功の要因」と振り返る。そして2014年3月には大阪市住之江区に、世界初の大規模なマイクロ波化学工場(自社工場)を完成させた。「マイクロ波で本当に製品が安全に作れるのだと、化学業界に証明することができました」

研究成果をもとにベンチャー起ち上げ

塚原特任准教授は吉野社長と共にベンチャーを起ち上げた理由について、「優位性のある技術でニッチな事業を起ち上げてもマーケットは限られている。マイクロ波による製造プロセスを世界に広めるには、自ら会社を起ち上げ、研究から事業化を含む全般をターゲットにすることがベストな戦略だと考えました」

一方、吉野社長は大手商社を退職後、米国でコンサルティングなどに携わるなか、ベンチャーの起ち上げを考えるようになった。「マイクロ波化学は、身近な電子レンジの技術に、触媒やシミュレーション、大量生産のためのスケールアップ技術などを組み合わせるというメソッド。非常に実現可能性が高いと感じました」。現在、世界最大の総合化学メーカーBASF社(ドイツ)と、ポリマー製品に関する製造プロセスの共同開発に取り組むなど、海外進出を見据えている。

第四次産業革命の可能性も

インキ材料から、食品添加物、電子材料、プラスチックまで、マイクロ波による独自製造プロセスの幅広い展開を支えているのが、大阪大学ベンチャーキャピタル株式会社(OUVC)による投資だ。企業との共同プロジェクトによる量産工場建設や基盤技術の開発資金として活用し、事業の加速化を図っていくという。

今後について、吉野社長は「ものづくりの技術の変換は、第四次産業革命につながる可能性もある」と指摘。塚原特任准教授は「日本発の技術を世界に送り出し、世界の化学産業を革新したい」と意気込んでいる。

 

(本記事の内容は、2016年3月大阪大学NewsLetterに掲載されたものです)

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