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アカデミア創薬で「薬のまち」大阪の新しい時代を切り開く【薬学研究科・教授・辻川 和丈】

辻川和丈教授は、すい臓がんなどの進行に関わる遺伝子を発見、これをもとに新薬の開発を進めている。少年時代から遙かな天空にあこがれているという辻川教授の関心は、現在は微細なヒト細胞の研究へ注がれる。全く逆のように思えるが、「細胞の仕組みは、深遠さにおいては宇宙にも匹敵する。近いようだが、なかなかたどり着けないところは共通している」という。「人を助けることができる、人生をかける価値がある」とこの道に進んだが、「何十年かけても、たった数十の距離がまだ遠い」と目を細める。

辻川教授は大学院修了後、薬をつくりたいと製薬企業に就職。しかし、創薬システムが分業化されていたため、「薬を見つけ、生産ラインに乗せ、患者さんが喜ぶ姿を見届けたい」という願いを実現すべく、大阪大学薬学研究科の研究生として、学問の道に戻った。

当時の薬学研究科では遺伝子工学が確立されておらず、分子生物学を薬学の世界に生かそうと、助手時代に渡米。「受入れ先のハーバード大学医学部の関連医療機関で、出迎えてくれる入院中の子どもたちが、副作用に苦しみ、いつの間にか姿が見えなくなって……。衝撃的でした。なんとしても治療薬をつくりたいと固く決意しました」。以来、がん治療、分子細胞生理学の道を走り続けてきた。

15年、政府の成長戦略の目玉として日本医療研究開発機構(AMED)がスタート。大阪大学でもアカデミア創薬の拠点がつくられ、辻川教授はその運営にも携わる。「大阪は、昔から『薬のまち』として、最先端の研究が行われてきました。難治性疾患に力を発揮する、アカデミア発の創薬をつくりたい」と語る。天空には手が届かなかったが、数十μmの世界で患者を助けるという目標を叶えるべく、日々奮闘する。


●辻川和丈(つじかわ かずたけ)

1982年大阪薬科大学薬学部卒業。大阪大学薬学研究科、製薬企業勤務を経て、88年大阪大学薬学研究科助手。ハーバード大学に研究留学、2010年応用医療薬科学専攻教授。12年から同医療薬学専攻教授、薬学研究科附属創薬センター教授を兼任。日本微量元素学会会長賞(92年)、免疫毒性学会大会賞(06年)、バイオビジネスアワードJAPAN大賞(11年)などを受賞。専門は分子細胞生理学、がん治療創薬など。総長顕彰は4年連続での受賞。

(本記事の内容は、2015年9月大阪大学NewsLetterに掲載されたものです)

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