StoryZ

阪大生にも、研究者にも、卒業生にも誰しも必ずある“物語”
その一小節があつまると大阪大学という壮大なドキュメンタリーを生み出します。
それぞれのStoryをお楽しみください。

マルバツ式に慣れた学生
アカデミックな書き方分からず戸惑い

両准教授は、学生の書く力の問題について「マルバツ式の試験に慣れた学生は、『○○について、4000字でレポートを書きなさい』といった大学のレポート課題に取り組む際、アカデミックな書き方が分からず戸惑うことが多い。読書感想文のように書いてしまう学生もいる。その結果、教員がレポート添削に追われてしまうという問題があった」と話す。

解決方法を模索する中、2つの転機が訪れた。まず堀准教授が「レポートの書き方講座」を大阪大学附属図書館で開催したこと。2つ目は、坂尻准教授が少人数制対話型授業「はじめてのアカデミックライティング」を開講したこと。これらによって、徐々に大阪大学でのアカデミック・ライティングの指導環境が整ってきた。

小冊子を全新入生に配布  他大学でも需要

その後2人は「講座・授業ではサポートできる人数に限界がある」と感じ、数年間で得た知見をまとめた小冊子「阪大生のためのアカデミック・ライティング入門」を共同で作成。そして、新入生のほとんどが履修する科目の補助教材として2014年から使用することになった。

「小冊子は、学生が取っつきやすいよう、分かりやすい文章で要点を絞っている。コンパクトで使いやすいところが、市販の本にはない強み。『こういうのが欲しかった』と学生からの評価も高い」と堀准教授。「他大学の方も、どんどん使ってください」と、大阪大学のウェブサイトで公開しており、ダウンロード数は直近1年間で約2万件に上っている。

【ダウンロードURL】
http://www.celas.osaka-u.ac.jp/education/support/academic-writing/



教員向けマニュアルで教員の支援も

しかしそれでもまだ、新入生を指導する教員の負担は重かった。「大阪大学にはライティング教育の専門組織が存在せず、指導する専門教員もいません。そのため、新入生向け授業を実施するすべての教員が、アカデミック・ライティング技術を指導する必要があります。その負担を少しでも軽くしたかったので、教員向けマニュアルも作成しました」

更に「大学教員を目指す大学院生の指導力も向上させるために、大学院生向けの授業、『学術的文章の作法とその指導』を私たち二人で実施しています。様々なアプローチで学生を教育することが大切です」と語る。

伝える力を鍛え 社会で活躍してほしい

アカデミック・ライティングの重要性について「アカデミック・ライティングで身につけた文章を書く力は、社会に出た後も必ず役に立ちます。だからこそ大学生のうちにしっかりと教育して送り出したい。今後もこのような取り組みを続け、伝える力を持つ学生の輩出に貢献していきたいですね」と語った。

「学術的文章の作法とその指導 受講生インタビュー

学んだ知識は学部生のレポート添削に活用したい

篠原 恵 さん 人間科学研究科(修士課程1年)

大学教員養成プログラムのこの科目は、教員を目指す大学院生にとって、体系的に学術的な論文の書き方を学べる良い機会だと思い受講しました。

学んでいく中で、これまで「なんとなく」で書いていた一つひとつの言葉に注目するようになりました。例えば、この接続詞は文章の流れに不適当だとか、段落ごとに一番主張したいことを前に持ってくる「トピックセンテンス」の書き方を学べました。

これからは教える立場としての訓練もしていきたいですね。私はTA(ティーチングアシスタント)をしていて、学部生のレポートを添削する機会があるので、その時に説得力を持って添削コメントができるようにしたいと思っています。

(本記事の内容は、2017年3月大阪大学NewsLetterに掲載されたものです)

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