StoryZ

阪大生にも、研究者にも、卒業生にも誰しも必ずある“物語”
その一小節があつまると大阪大学という壮大なドキュメンタリーを生み出します。
それぞれのStoryをお楽しみください。

個人情報保護に貢献する新システム

発端は、王偉さん(理学研究科博士後期課程2年)が発案した個人情報の暗号化技術だ。第三者による住所の盗み見が防げるのと同時に、印刷数字だけを使用するため誤読を減らせる。安全性が高く、便利な技術だ。王さんはこの技術を使って起業しようと考え、所属する国際物理特別コースの高部英明教授に相談。「宅配業者などを顧客としたB to Bビジネスとして有望だ」と直感し、高部教授が最初の協力者となった。そこに、イスラエル出身でITに詳しいジュリアン・グリンブラットさん(理学部物理学科3年)も加わり、3人でビジネスプランを固めていった。

その後、同コース所属の周暁さん(理学研究科博士前期課程2年)、大阪大学法学部出身の知人で法律の仕事に携わる霍婕さんが参加。さらに、日本語での交渉が不可欠と考えた王さんは、ビジネスセミナーで知り合った関屋弥生さん(外国語学部4年)にも声をかけた。

理系、文系、女性、男性を問わず、さまざまな国からの出身者が集まった。暗号化技術を「uuTTec(ユーテック)」と名付け、今年1月には日本での特許出願も完了した。

ベンチャーグランプリで準優勝

昨年秋には「University Venture Grand Prix (UVGP) 2013」(経済産業省主催)に応募し、準優勝を獲得。想定市場規模の大きさやシステムの安全性などが評価された。また、米国大使館内米日カウンシルの「TOMODACHI(トモダチ)賞」も受賞。その副賞として、この3月にシリコンバレーにおいて投資家へプレゼンテーションを行う機会が与えられた。海外での出資を募り、国際特許をと考えている王さんには、願ってもないチャンスだ。

起業後は、王さんがCEO(最高経営責任者)を務める予定だ。キャンパス内の学生ネットワークを使って、社員の募集も開始した。

仲間とともに世界進出!

「まずは日本国内でのサービス提供を考えている。その後、欧米や中国、さらにロシアやアジア諸国などへ進出したい」と成長戦略を語る王さん。仲間たちも「自分の持つ技術を生かせてうれしい。新会社の技術向上に貢献したい」(ジュリアンさん)、「文系と理系の学生が同じ目標に向かい行動する中で、社外への情報発信に取り組みたい」(関屋さん)、「価値ある仕事ができてうれしい。精一杯がんばりたい」(周さん)、「日本と中国の潤滑油となるよう努めたい」(霍さん)と、意欲にあふれている。新事業にかける一同の夢は、ますます膨らんでいる。


●王 偉(Wang Wei ワン ウェイ)さん
理学研究科 物理学専攻 国際物理特別コース
博士後期課程2年生

●周 暁(Zhou Xiao シュウ ギョウ)さん
理学研究科 物理学専攻 国際物理特別コース
博士前期課程2年生

●Julian Grinblat(ジュリアン グリンブラット)さん
理学部物理学科 3年生

●関屋弥生(せきや やよい)さん
外国語学部英語専攻 4年生

●霍 婕(Jie Huo カク ショウ)さん
2013年大阪大学法学研究科修了。
現在は、堺筋総合法律事務所に勤める。

●高部英明(たかべ ひであき)教授
レーザーエネルギー学研究センター
(理論・シミュレーション、実験室宇宙物理)

(本記事の内容は、2014年3月大阪大学NewsLetterに掲載されたものです)

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