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三村髙志さん(株式会社富士通研究所 名誉フェロー)

ものづくりに生かせる理論基礎を学んだ大学院時代

 三村さんは関西学院大学理学部から大阪大学大学院基礎工学研究科に進学。基礎工学研究科を選択したのは、理論を深めつつ、実際に世の中に役立つ工学分野に触れられる場で研究がしたいと考えたから。「理学系、工学系両方の先生がいて、理論と実践、両面から刺激をもらえました」

学生時代は「よく研究室で寝ていた」と笑う。当時は実験設備があまり整っておらず、測定器などを使うのに順番待ち。「自分の番が回ってくるのは深夜になることが多かったので」。一方、「基礎工学研究科で学んだことは、どんなものづくりにも生かせる基礎の部分でした」と語る。「基礎は言うなれば木の幹で非常に重要です。基礎がしっかりしていれば、枝や葉を茂らせることができる」と言葉に力を込める。

 

「基礎工」の仲間とチーム結成

富士通に就職して配属されたのは、半導体を使った高性能トランジスタの研究開発部署。しかし、なかなか成果は上がらず、「一旦、けりをつけよう」という気持ちで、1979年に2年間続けたガリウム砒素を用いるトランジスタに関する論文を発表した。発表後、他の研究者と雑談している時に、ガリウム砒素にアルミニウムガリウム砒素を重ね合わせ、電子が走るための高純度のガリウム砒素層を作り、この層を電子が高速で移動することで高速処理が可能となるHEMTのアイデアが浮かんだ。「それまでの研究は確かに失敗でしたが、失敗があったから成功が生まれたのだと思います」

すぐにHEMTのアイデアをまとめると、社内の有志に声をかけた。会社非公認〝もぐり研究チーム〟の発足である。HEMTの開発では、ガリウム砒素とアルミニウムガリウム砒素の接合部分を形成するためにMBE(分子結晶成長装置)が欠かせない。そこで社内のMBEグループにも打診した。力を貸してくれたのは、同じ基礎工学研究科出身の冷水佐壽研究員。「1年先輩だとミーティングの時に知りました。同じ研究科で学んだという共通点のおかげで、意思疎通は楽でしたね」

同年末に試作品が誕生。「共に苦労してくれた冷水さんたちMBEグループにも恩返しができました」。冷水研究員は後に、基礎工学研究科の教授に就任した。その教え子には富士通研究所でトレーニングを受け、国内外で活躍する研究者もいる。「阪大出身の次の世代が活躍しはじめているのはうれしいですね」

 

世界に広がるHEMT研究者ネットワーク

HEMTの最初の用途は天文台の電波望遠鏡だったが、三村さんたちの量産化、低コスト化への取り組みにより、当時の何万分の一という価格で販売できるようになった。これにより今では自動ブレーキを可能にする車載レーダーや携帯電話基地局でもHEMTの技術が用いられ、今も世界中で多くの応用研究や素材探究が進められている。失敗から将来への可能性を見出した三村さん。阪大の後輩たちには「失敗を恐れない気持ちを持ってほしい」とエールを送っている。


●三村髙志(みむら たかし)氏
1970年大阪大学大学院基礎工学研究科修士課程修了、82年工学博士。70年富士通株式会社入社、75年富士通研究所へ転籍し、98年同フェロー、2017年同名誉フェロー。2006年独立行政法人情報通信研究機構客員研究員。1990年IEEEモーリス・N・リーブマン記念賞、98年紫綬褒章、2017年京都賞先端技術部門を受賞。

 

企業情報

 ■株式会社富士通研究所( 神奈川県川崎市中原区上小田中4-1-1)


富士通グループの研究開発の中核をなす富士通株式会社の主要子会社。1962年に富士通株式会社内に創設され、現在および将来の社会課題を先端技術で解決するため、材料、次世代素子、コンピュータ、ネットワーク、ICTシステムの研究開発から次世代のソリューション/サービス/ビジネスモデルの創出まで、幅広い分野の研究開発に取り組んでいる。


(本記事の内容は、20182月大阪大学NewsLetterに掲載されたものです)

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