StoryZ

阪大生にも、研究者にも、卒業生にも誰しも必ずある“物語”
その一小節があつまると大阪大学という壮大なドキュメンタリーを生み出します。
それぞれのStoryをお楽しみください。

1000人以上いるトヨタ阪大同窓会の幹事長

オフィスで久しぶりに会った女性社員と談笑する豊島浩二さん。2人とも社員証のネームホルダーにいちょうのマークを付けていた。「僕が入社した時はトヨタ自動車で大阪大学出身者は300人ぐらいだったのが、今では1000人以上、互いに顔を知らない人が増えました。いちょうのマークを付けていると、すれ違った時に阪大の卒業生だと一目でわかり、コミュニケーションがとれて仕事がスムーズに進みやすくなります」。トヨタの同窓会「阪大会」幹事長として、いまも母校を想い続けている。

「社会に貢献するものを作りたい」と阪大工学部へ

子供の頃から機械いじりが大好きで、「『ラジコンなどの中身はどうなっているのか?』と分解しては元に戻せず、親によく叱られました」

「二次試験で苦手な英語がなかったので…」と冗談を交えて大阪大学を選んだ理由を語るが、「社会に貢献する大きくて動くものを作りたい」と船舶海洋工学、振動工学を専攻。「勉強にはきちんと取り組んでいましたが、夜中に大学で実験しては朝に帰る生活で、担当教授から『どこに行っているんだ』とよく怒られました」。勉強ばかりでなく、友人たちとドライブを楽しむなど、充実した学生生活を送った。

アルバイトで培ったビジネス感覚とコミュニケーション力

なかでも、その後の人生に役立っていると実感しているのは、「社会勉強」と位置づけて3年間頑張った個人商店でのアルバイト。「野菜と魚を売っていました。小さな店だったので商売全体が分かり、ビジネス感覚を身につけられました。また、大阪のおばちゃんたちを相手にものを売るコミュニケーション力も鍛えられました」と笑顔で振り返る。

お客様に密着した車づくり

トヨタに入社以来、ずっとこだわっているのは「お客様に密着した車づくり」。学生時代に通学やドライブで車に乗っていた経験も活かし、1人のドライバーとして感じる快適性、利便性を追求している。

例えば、過去に尾骨骨折したために長時間座っていられない豊島さんは、その経験から「僕には硬めのシートに座るとお尻がむずかゆくなる『お尻センサー』があって、僕が長時間座っても気持ちいいのを一つの基準に開発しました」と話す。

座右の銘は「想像できることは創造できる」。2016年12月からはEV車の開発と普及に取り組み、「より環境にいい車を」と新たな夢に向かって走り続けている。

夢に巡り会えるかは努力次第

大阪大学で学ぶ後輩に、「目標に向かって貪欲であってほしい。最近は、言われたことをそつなくこなす80点の優等生が多いですが、私は自分のやりたい仕事だと目の輝きが違うという尖った50点の人材がほしい。夢に巡り会えるかどうかは自分の努力にかかっています。『夢のまた夢』に挑戦してほしい」と熱いエールを送る。

●豊島浩二(とよしま こうじ)氏
大阪大学工学部で船舶海洋工学を学び、1985年卒業。同年トヨタ自動車に入社。カローラ設計室、レクサスLS製品企画室を経て、2011年11月から次世代環境車全般を取りまとめる部署「ZF」で、3、4代目プリウス、プリウスPHVのチーフエンジニアに就任、現在に至る。また、災害に強い地域をめざした自動車の外部電源普及活動「SAKURAプロジェクト」を主宰。


企業情報

トヨタ自動車株式会社 (愛知県豊田市トヨタ町1番地)

豊田佐吉が創業した豊田自動織機製作所内に1933年に開設した自動車部が起源。1937年トヨタ自動車工業株式会社設立。現在はプリウスのほか、クラウン、カムリ、カローラなど数多くの車種を生産、販売。世界で有数の規模を誇る日本の自動車メーカーで、2012年〜15年、販売台数は4年連続で世界一。

(本記事の内容は、2016年12月大阪大学NewsLetterに掲載されたものです)

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