StoryZ

阪大生にも、研究者にも、卒業生にも誰しも必ずある“物語”
その一小節があつまると大阪大学という壮大なドキュメンタリーを生み出します。
それぞれのStoryをお楽しみください。

テレビ番組の気象キャスター

朝10時頃、西池さんは自分のデスクに着くと、まず最新の気象情報に目を通す。「専門的な気象データから、その日の天気の推移を予想します。加えて、ここに来るまでの電車の中で、周りの人がどんな服装なのかもチェックするようにしています」

綿密な資料を基にした科学的分析と、何気ない日常の風景を注意深く観察する目。テレビに登場する気象予報士に求められるこの両方を、西池さんは常に心がけている。

話す仕事に魅力を感じキャスターに

幼い頃からピアノを習い、芸術大学への進学を考えることもあった西池さん。だが、「高校時代に興味を持った英語を通じて、日本語っておもしろいなと思うようになり、大阪外国語大学(現 大阪大学)を選びました」

大学1年のとき、神戸の親善大使募集という新聞記事を見つけた。生まれ育った神戸の魅力を、1人でも多くの人に知ってもらいたいと応募し選ばれた。1年にわたり全国各地を訪れた。「限られた時間で魅力を伝えるにはどう話したらいいのかと考えるようになり、話す仕事は素敵だと思うようになりました」

放送関係に絞った就職活動の道は険しかったが、NHK高松放送局でリポーター、さらにキャスターをすることに。「自分でビデオカメラを持って取材に行き、編集作業もしていました。大変でしたが、それぞれの道を究めている人に会って話を聞くうちに、自分も一つのことを究めたいと思うようになりました」

難関を突破し気象予報士に

「昔から空を見るのが好きでした。青空や形が変わる雲は、この瞬間しか見られないとても貴重なものに見えてきます。放送局では、自然災害のニュースに接することも多く、その時に頭をよぎったのが、気象予報士という仕事でした」

しかし、合格率約5%の超難関試験に仕事をしながら挑戦するのは難しく、放送局を辞めて1年間猛勉強、さらにNHK京都放送局のリポーターになってからも勉強を続けた。現在所属する南気象予報士事務所の南利幸代表に出会ったのもそんなときだった。「南先生の講座を受けて、『(ついていくなら)この人しかいない!』と思い、通いだしました」。初めての試験は惜しくも最終で不合格だったが、3度目の挑戦で合格。晴れてあこがれの気象予報士になれた。

ベテラン気象キャスターの後継者

気象予報士になっても、「話す仕事」に就く人はごくわずか。しかし、幸運が訪れる。今年3月末まで、44年にわたって毎日放送で気象キャスターを務めていた今出東二さんの後を任されることに。

「まさか、自分がこんなところ(毎日放送)に来るなんて思ってもいませんでした」。ベテラン気象キャスターの後任というプレッシャー。だが、自分なりのことをするしかない。「どう表現したらお茶の間のみなさまにわかりやすくお天気を伝えられるか、オンエアの直前まで考えています」

お天気に添える一言にも工夫を凝らす。「外に出て、実際に肌で感じたことも取り入れるようにしています。関西の天気を“ひとこと”でどうしっかり伝えるか。関西ローカル番組ならではの醍醐味だと思っています」

趣味も多彩

親善大使の頃から始めたマラソンは、フルマラソンで4時間を切る好タイムで走る。いま凝っているのは、フラワーアレンジメント。「この仕事を始めてから、一層四季の移り変わりに目がいくようになりました。特にお花が大好きで、週末にはプリザーブドフラワーなどを使って作っています」


挑戦すれば新しいものが見えてくる

いろんなことにチャレンジした大学生活。「ちょっとずつ挫折はありましたが、今は自分が望んでいた仕事に就くことができました。そのときどきを楽しんで、失敗を恐れずにどんどんチャレンジしていけば、結果的にはいい方向に繋がっていくのではないかと思います」と後輩にエールを送る。

「ひとときは落ち込む性格なのですが、最近は、なにかいいことを呼び込むかなと思って、よく笑うように心がけています」と西池さん。

「晴れ、ときどき曇り」から、今は「快晴」の毎日を送っている。

●西池沙織(にしいけ さおり)氏

2009年大阪大学外国語学部国際文化学科卒業。09年NHK高松放送局リポーター、11年同局「ひるまえかがわ」キャスター、14年NHK京都放送局リポーター。14年10月に気象予報士試験合格。15年4月から毎日放送「ちちんぷいぷい」「VOICE」の気象情報を担当。南気象予報士事務所所属。

(本記事の内容は、2015年12月大阪大学NewsLetterに掲載されたものです)

share !