StoryZ

阪大生にも、研究者にも、卒業生にも誰しも必ずある“物語”
その一小節があつまると大阪大学という壮大なドキュメンタリーを生み出します。
それぞれのStoryをお楽しみください。

実学を志し工学部へ

「メンバー(社員)は個性があって尖っているエンジニア集団。マネージ(管理)するのは大変ですが、楽しいです」

「企業にとって一番大事なのは『人』、メンバーの個性を大事に、働きやすい環境ができるよう心掛けています」と中尾隆一郎さんは話す。リクルートテクノロジーズは、リクルートグループ各社の情報システムの開発や運営のほか、ビッグデータの活用など最先端技術をビジネスへ応用する研究などを行い、海外での展開も視野に入れている。

中尾さんは理系出身ながら長年、営業や広告、求人などのビジネスに携わってきた。高校時代、超伝導体の話題に接し「材料が世の中を変える。おもしろそうだ」と大阪大学工学部金属材料工学科へ進んだ。商人の街、大阪で育ったことも「ノーベル賞よりも実学を」という思いにつながったという。

大学で仕事とも相通じる姿勢を学ぶ

入学後、学外のサッカーチームに参加し、アルバイトも経験したが、生活の中心は勉強や研究。大学ではステンレスとファインセラミックスを高温高圧で接合させる研究に取り組む。材料の組み合わせや温度、圧力を変えることで接合の状態がどのように変わるのかを調べていった。

恩師の山根壽己教授の教えは今も役立っている。

一つは「仮説を立て、検証していくことの大切さ」。それを徹底的に求められたことが、ビジネスにも生きている。

もう一つは「見せ方の重要性」。大半の学生は卒業論文を締め切り日直前に完成させていたが、中尾さんたちは締め切り1週間前に作成し、発表の練習をするよう指示された。

中尾さんたちは発表資料を整え、リハーサルを8㍉ビデオで撮影して「自分たちが、どういうふうに見えるか」をチェック。「上手にプレゼンテーションできれば、(論文の内容は同じでも)光って見える。質問にも自信を持って答えることができる」というのが山根教授の考えだった。「現在も心掛けている『準備』の大切さを教えていただきました」

畑違いのリクルートへ

大学院へは首席で入学。研究者の道や民間の研究職も考えたが、先輩が勤めるリクルートの若手社員と交流するうち、リクルートに大きな魅力を感じた。同じ世代の若者たちが、責任ある仕事を任され、みんなが自信満々に話している。「(大学名や成績ではなく)生身の中尾隆一郎を仲間にしたい」と言われたことにも心を動かされた。

新入社員時代、小さな輸入雑貨会社の新卒採用を担当。新規事業を立ち上げるため、21人採用したいという。依頼会社の社長は「予定人数を超えると人件費が増え、足りないと事業が立ち上がらない。ぴったり採ってほしい」と注文し、中尾さんを信頼してくれた。中尾さんも「信頼に応えよう」と頑張り、求人活動だけでなく、学生にとって少しでも魅力ある企業になるよう、社員と話し合って同社の改善策も提案。優秀な人材を予定人数採用できた。「新人で何も知らなかったので、できたのかもしれません」

スーモカウンター事業を大成功へ

家を建てる時の建築会社選びや新築マンション探しの無料相談所「スーモカウンター」事業。中尾さんは2007年、スーモカウンター推進室長となった。

当時は事業立ち上げ期で業績は厳しかったが、中尾さんは「お客さまの希望を実現することが第一」と考え、必ず複数の建築会社を紹介し、その会社の誰が営業担当するのかまで、気を配った。またお客さまアンケートをもとに建築会社にも改善を求めた。その結果、6年間で売上げは30倍に伸びた。

生涯にわたる学生時代の友情

学生時代、友人たちと6人で、キャンパス近くのアパートに部屋を借りていた。部屋には誰も住まず、一緒に試験勉強に励み、人生論を語り合う場として活用。現在ビジネスや研究開発の第一線で活躍している当時の仲間たちとは「会」という名で年2回の会合を続けている。Mは金属材料工学科のメタル、Oは大阪大学、Sはシックス・ナイス・ガイズ(6人の素敵な男たち)の略だとか。大阪大学で生まれた友情が生涯の支えとなっている。「大阪大学は素晴らしい学びの場でした。後輩の皆さんには、阪大で学べるのはとてもラッキーなことだと気付いてほしいですね。またこの記事を読んでリクルートグループに興味を持って下さった方は、お気軽にご連絡ください」

●中尾隆一郎(なかお りゅういちろう)氏

1987年大阪大学工学部卒業、89年大阪大学工学研究科修了、同年リクルート入社。営業、調査、研究、事業企画などを経験し、2007年にスーモカウンター推進室長に就任。13年4月から現職。好きなお酒(ワイン)を楽しむために、ジムやウォーキングで健康維持。

企業情報

株式会社リクルートテクノロジーズ

本社・東京都千代田区丸の内1-9-2 グラントウキョウサウスタワー。2012年10月1日に設立。資本金1億円。従業員数321人(14年11月1日現在)。主な事業はリクルートグループのビジネスにおけるIT・ネットマーケティングテクノロジーの開発・提供。

(本記事の内容は、2014年9月大阪大学NewsLetterに掲載されたものです)

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