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幕末の蘭学者・緒方洪庵がつないだ緒方酒造と大阪大学
- あの日、小さな町を水害が襲った
- 2018年7月7日朝、西日本豪雨による水害が愛媛県西予市の小さな町を襲いました。その名を野村町といいます。その町の人々は、特産のシルクとミルクを誇り、唯一のプロ・アマ相撲である乙亥相撲に毎年興じてきました。そして、事あるごとに宴会を催し、「サシアイ」という独特の飲酒文化を持つことから、「飲むムラのむら」を自称しています。災害にうちひしがれた野村の人々の心を癒やし、復興の原動力となったのが、お酒でした。
- 被災した酒蔵から託された思い
- そんな野村に、一軒の老舗酒蔵がありました。宝暦三年(1753)創業の緒方酒造です。緒方酒造も水害に遭い、それがきっかけで長い歴史に幕を下ろすこととなりました。そのことは銘酒「緒方洪庵」も失われることを意味していました。そこで立ち上がったのが、大阪大学の教員有志でした。
というのも、緒方洪庵が幕末の大坂に開き、橋本左内や福沢諭吉といった日本の近代化を牽引した人物が学んだ適塾は、大阪大学の精神的源流に位置付けられているからです。せっかくの「緒方洪庵」を存続させたい、そして「飲むムラのむら」を支援したいとの思いから、野村に足繁く通う日々が始まりました。その結果、緒方酒造の蔵元・本家緒方からは「野村のために酒蔵をアカデミックな文化拠点として活用したい」、「銘柄「緒方洪庵」は大阪大学に譲渡したい」との思いが託されました。
- 銘酒「緒方洪庵」復活プロジェクト
- そこで、酒蔵を文化的に活用する組織として2020年3月、地元の野村地域自治振興協議会および愛媛大学社会共創学部とともに、「緒方らぼ」を立ち上げました。さらに1年後には、「緒方らぼ」はじめ、野村の復興まちづくり支援事業を担う法人組織として、一般社団法人「NEOのむら」を結成しています。
こうして銘酒「緒方洪庵」復活に向けたプロジェクトは動き出しました。復活に際してはクラウドファンディングにて資金を募り、たくさんの方々のご支援を得ました。