プログラム担当者からのあいさつ

大阪大学
学生支援GP実施責任者
大和谷 厚 教授
 大阪大学は大坂町民の学問所であった懐徳堂、緒方洪庵が開いた蘭学の私塾である適塾を源流とし、その自由な学問的気風や先見性を精神的な柱としております。そして、「地域に生き世界に伸びる」をモットーに、「教養・デザイン力・国際性」を教育目標とし、確かな基礎学力と専門知識をもつ「しなやかな専門家」として市民社会においてコアとなる「阪大スタイル」の人材の養成を目指しております。
 この「阪大スタイルの市民社会のリーダー」は、まず、社会的教養と健全な判断力により常に広い視野の中で適切な行動を選択できるCommon Senseをもつこと。また、Common Senseに適切な懐疑心をもち常に自己を振り返り検証することも重要であると考えています。次いで、対話力、企画力、構想力、想像力をもつこと、これが「デザイン力」であり、聞く耳を持ち専門知を一般市民にわかりやすく説明できる対話能力がその基礎であると考えております。自由な発想で、自ら、面白いと思うことを、みんなの先頭に立って、思いやりをもって実行していく人材でなければなりませんが、リーダーとして無用なエリート意識はもたないことも重要で、社会正義と公正性にしっかりとした理念をもつ市民性、これが市民のモデルとなる市民であり、市民社会のコアとなる人材であると考えております。
 このような人材を養成し支援しようというのがこのプログラムです。対象とする学生は学部学生の1〜2%、各学年で50名以下、総数200名以下とし、クラスやサークル、ボランティアなどで中心となって活動している学生を公募と推薦により選定します。そして、モチベーションの高い学生を重点的に支援し、この支援の輪を全学に広げていきたいと考えています。
 このような考えで、平成19年の秋より学内教員、学生部職員および企業の専門知を動員しプログラムの開発と運営を開始しました。このプログラムからどのような人材が巣立っていくかご期待ください。

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大阪大学
大学教育実践センター
キャリア教育支援部門長
木川田 一榮 教授
 1949年、米国コロラド山脈の大自然に囲まれた美しい町アスペンで、「ゲーテ生誕200年祭」が開催された。多くの講演者の中でも、ローバート・メイナード・ハッチンス(当時、シカゴ大学総長)のスピーチ「対話の文明を求めて」は、人々を感動させ、多くの共感をもって受け入れられた。
 「われわれの時代の特徴のうち、もっとも予期せざるものは、人の生き方において、あまねく瑣末化がゆきわたっていることである。(略)われわれの文明にとって最大の脅威は、無教養な専門家による脅威である。」これは、半世紀以上もたった今日の市民社会の危機を指摘する示唆ある言葉として、真摯に受け止める必要がある。なぜならば、経済優先・技術優先の世の中の潮流と、即戦力の高等教育を求める産業界の風潮のもとで、日本的瑣末化と専門化の勢いは増すばかりで、このままでは有為な若者たちが健全な市民社会を形成することに、支障をきたしかねないからである。
 そこで、懐徳堂と適塾を源流とする大阪大学は、たんなる従来型のリーダーを養成するのではなく、「教養・国際性・デザイン力」を身につけた市民社会におけるリーダーを育むことをねらいとして、今回のプログラムを企画しました。
 このプログラムには、講義はありません。阪大の多様な分野の教員が各セッションを担当して、参加者の皆さんに多様な視点から課題提起や問いかけ・触発をいたします。皆さんは、それらを題材として聴きながら自ら考え、また自ら問うことによって自らの考えを深めていく「対話型」方式ですすめます。さらにはグループ・メンバーとの信頼をベースとした対話をつうじて、多様な考えを知り合い、お互いの共通の理解と正当な解を探す出す協働のワークショップ方式ですすめます。
 これらの高質な経験を通じて、市民社会におけるリーダーとして、善し悪しの判断力と行動力を身につけられることを期待しております。

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大阪大学
教育・情報室
学生支援ステーション
太刀掛 俊之 准教授
 突然ですが、「あなたの周りで気になるリスクは何ですか」と尋ねられて、みなさんは何をイメージしますか?そして、どのような印象を持っていますか?「リスク」というと新型インフルエンザの感染リスクや企業の偽装による食品リスクなどが記憶に新しいかと思います。また、新聞やテレビ、インターネットといったメディアを通じてこれらのリスクを知るだけでなく、身近な人から話を伝え聞くなどして、さまざまな情報源から、リスクの情報を見聞きしながら普段の生活を送っています。このように身近なリスクを思い浮かべると、いわば「厄介者のリスク」としてネガティブなイメージで捉えているはずです。そして、私たちは常に、「厄介者のリスク」の本質を理解して避けたり、取り除いたりする努力をしています。
 それでは次に、みなさんが多くの時間を過ごす大学という場を振り返ってみて、どのようなリスクがあるか考えてみたいと思います。例えば昨年流行した、新型インフルエンザの感染リスクをはじめとして、普段の生活と重なるリスクが挙げられるでしょう。また、大学の教育研究の場面においても、実に多くのリスクが隠れています。実験研究で扱っている化学物質や放射性物質の有害性が人体にもたらすリスク、海外へ調査研究に出かけ、その地域の衛生状態が必ずしも十分でない場合の感染症のリスク…これらは一例にしか過ぎませんが、多くのリスクを挙げることができます。みなさんはどのようなリスクを思い浮かべますか?そのリスクは、やはり「厄介者のリスク」でしょうか。しかしながら、大学では、そのようなリスクをあえて受け容れ、またはリスクをうまくコントロールしながら、未知の分野にチャレンジすることが、新しい知見や有益な示唆につながるということを学びます。ひとくちに「リスク」といっても、単に取り除いたり、回避したりするものが全てではなく、場合によっては、能動的に受容する対象として捉え、そこから得られた知識や見方を通して市民社会に貢献するスタンスがあるということです。
 「リスク」をネガティブなものではなく、ポジティブな文脈で捉え、自分が成し遂げたいと考えていることに対して勇気を持ってチャレンジするとき、大学はみなさんを積極的に応援します。大阪大学の学生支援事業の柱である『市民社会におけるリーダーシップ養成支援』プログラムでは、各分野の先生方から専門的な知識を学ぶだけではなく、「教養」「国際性」「デザイン力」を軸とした「阪大スタイル」の姿勢を身につけることで、市民社会の中心で活躍する人材となるよう、学内外を問わず多くの方々の力をあわせてプログラムを構築しています。みなさんには、市民社会において、勇気を持ってチャレンジする市民としての素養を身に付けて欲しいと思います。積極的な参加をお待ちしています。



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