青き葉の中からのぞく柿ひとつ
◎宮の杜透けて明るき神無月
◎風騒ぐ鎮守の森や神の留守
 秋の雲五重の塔を流しゆく
 冬めくやシヤツの釦の穴硬し
 つひの栖囲むは酢茎菜の畑
 人生の酸いも甘いも酢茎かな
◎小春日のやうな余生を賜ひた
 引き抜ける大根の白さ女(にょたいめく
 冬帝に(あらがひ通ふ棋席かな

あや
洛艸
あや
京子
幹三

あや
あや
箕川
箕川


あや
元彦
洛艸
眞知子
嵐耕
磨央
輝子
敏夫
浩風
洛艸
あや

眞知子
輝子
洋一
暁子
暁子
洛艸
幹三
輝子
暁子
浩風
浩風
眞知子
言成
箕川
暁子

 京に来て大原女に逢ふ酢茎売
 カレンダーに書き込み多き神無月
◎冬めくと書き添へ届く山のもの
 風騒ぐ鎮守の森や神の留守
◎冬めくやシヤツの釦の穴小さき
 聞かざるに鞍馬の酢茎どすと言ふ
 木もれ日を纏ひながらの落葉掻
◎初霜に猫の足跡うつすらと
 酢茎ありますと札下げ一農家
 大根引く日時計で足る杣暮し
 真直ぐなるものまれなりて大根引
 どこまでも赤土の畑大根引く
 小さき杜小いさく揺らし神渡る
 雨風に鞭打たれ街冬めきぬ
◎小春日のやうな余生を賜ひたく
 齟齬少しあり親子の酢茎食む
 こまごまと活け万両の紅ひそと
◎酢茎桶比叡颪に晒されて
 比叡颪まともに受くる酢茎室
 肩みせて引かるるを待つ大根かな
 大根引農婦の力あなどれず
 川浅く山低くあり神無月
 法隆寺の鐘の余韻や秋深し
 盛砂の崩れしままに神無月
◎地球より引き抜いてゐる大根かな
 酢茎桶どつかと据ゑて社家の土間
 白々と白山颪大根干す
 落柿舎の添水の音の冬を呼ぶ
◎酢茎あり京のぶぶ漬お替はりす
 街灯に来る虫も絶ゆ夜寒かな
 ちくちくと葉のあらがひし大根引く
◎冬めくや声出さぬまま一と日過ぐ
 人も樹も冬めく姿厳然と
 冬めくや朝の身支度手間どりて
 安穏に今日も暮れなむお茶の花
◎冬めくや意見違へし帰る路
 つまづきて通勤の朝冬めける
 石静か十一月の川の底
 神無月鎮守に鳥の啼くばかり
◎下駄の音の忙し冬めく祗園路地
 冬めく野セピアの色を重ねゆく
 ヴィヴァルディ第四楽章今朝の冬
 冬めくや吹く風はやもとがり初む
 冬めきし風音といふ交響詩
 意のままにならぬ出会ひや神無月
 貸農園男が一人大根引く
 冬めきて日のあたる席より埋まる
 柿落葉木には残りし実が二つ
 しみじみと酢茎の味を知る齢
 登り来し愛宕の神は留守なれど

浩風
暁子
浩一郎
あや
幹三
幹三
京子
洋一
洛艸
浩風
暁子
輝子
敏夫
浩一郎
あや

あや
元彦
洛艸
輝子
眞知子
幹三
京子

幹三
洛艸
あや
あや
瑛三
磨央
敏夫
暁子
あや
眞知子

暁子
嵐耕
幹三

洛艸
太美子
洋一
眞知子
あや

箕川
輝子
邦夫
太美子

井上浩一郎 選

 齟齬ありて親子でありて酢茎食む
◎こまごまと活け万両の紅ひそと
◎酢茎樽比叡颪に晒されて
 比叡颪まともに受けて酢茎室
 大根引農婦の力あなどれず
 しづもれる鎮守の森や神無月
 君のこと想はぬ日なき霜の月
 寺詣であとは酢茎を買ふばかり
 日を受けて庭いつぱいの柿の秋
 老夫婦力あはせて大根引く
 酢茎桶どつかと据ゑて社家の土間
 白々と白山颪大根干す

 旅終へて見る我が庭の冬めける
 冬めける母の膝また痛むべし
◎わけもなく寂しさこみあげ冬めけり
 冬めくや声出さぬまま一と日過ぐ
 冬めくや意見違へて帰る路
 丸齧りしては頷き大根引
◎石静か十一月の川の底
 柴漬も酢茎も買うて京一と日
◎冬めきて孤独楽しむ日々となる
◎神無月弥宜の挿しくる女傘
 請け判に足すくはれて神無月
 冬めくや吹く風はやもとがり初む
 太白と歳星統べる冬の朝
◎貸農園男が一人大根引く
 大根引四方の山の暮れて来ぬ

 冬めくと書き添へ届く山のもの
◎献立の決まりいそいそ大根引く
 秋の雲五重の塔を流しゆく
 雨上り土くろぐろと大根引
 武州路に山山座る神無月
 土俵守る両横綱の神無月
 木もれ日を纏ひし人の落葉掻
 つひの栖囲むは酢茎菜の畑
 青空へ気合も太き大根引く
◎菊人形菊に貰ひし命かな
 大根引く日時計で足る杣暮し
◎一杯の酒飴色の酢茎食む

浩一郎

京子
嵐耕
和江
元彦
京子

和江
暁子
浩風
敏夫

浩一郎
洛艸
浩風
敏夫
浩一郎
浩風
箕川

浩一郎
眞知子
元彦
輝子

洛艸
眞知子
幹三
京子
幹三
京子
眞知子
邦夫
洛艸
浩一郎
眞知子

京子
邦夫
洋一
暁子
箕川

眞知子
輝子
暁子
嵐耕
幹三
暁子

太美子
洋一
浩一郎
言成
浩一郎
瑛三
言成
箕川
暁子
瑛三
洋一
輝子

長山あや 選

 磐(いはくらの透いて日当る神無月
 境内の手入れをさをさ神無月
 大の字に作務衣干されし神無月
 小さき杜小さく揺らし神渡る
◎下宿とは酢茎の桶の横の部屋
 冬めくや(ほたびに急かるる宮普請
 冬帝に(あらがひ通ふ棋席かな
◎齟齬ありて親子でありて酢茎食む
 人の目の翳も冬めくもののうち
 大根の引かれ引かれて山をなす
 酢茎樽比叡颪に晒されて
 肩みせて引かるるを待つ大根かな

 比叡颪まともに受けて酢茎室
 大根引農婦の力あなどれず
 川浅く山低くあり神無月
 法隆寺の鐘の余韻や秋深し
◎地球より引き抜いてゐる大根かな
 トンネルを出て斑鳩の深秋へ
 冬めくや斜めの日差障子まで
 寄合の酒宴のあとの酢茎かな
 酢茎桶どつかと据ゑて社家の土間
 大土間の古るも冬めく雨ひと日
 旅終て見る我が庭の冬めける

 銀杏の翡翠の色を味はひて
◎大根引残されしものいと憐れ
 わけもなく寂しさこみあげ冬めけり
 冬めくや声出さぬまま一と日過ぐ
 色どれる山を背にして大根引く
 大根引くふと振り向けば穴の列
 冬めくや障子はりかへく日ざし
 神無月オリオン高く上りくる
 神無月掃いても掃いても溜るもの
◎つまづきて通勤の朝冬めける
 石静か十一月の川の底
 冬めきて孤独楽しむ日々となる

 冬めく野セピアの色を重ねゆく
 ヴィヴァルディ第四楽章今朝の冬
 まつすぐの心を旨と大根引
 農作業俺にもできる大根引
◎背ナ丸め小さく歩いて冬めきぬ
 毛糸編む女の影の冬めきて
 太白と歳星統べる冬の朝
◎貸農園男が一人大根引く
 大根引四方の山の暮れて来ぬ
 酢茎売る商ひ上手賀茂の姥
 芒野を見えかくれ行く老夫婦
 小春日や句友をひとり得たりけり

アンカー

第519回 〈吟行句会〉平成24年11月24(日)

吟行地  奈良公園とその周辺 吟行
句会場  奈良県文化会館

 手に小さき破魔矢ふりふり七五三
 路地路地に防火バケツのありて冬
 茅葺の茶屋も紅葉に埋まれ居り
 鹿啼いて飛火野の奥深うせり
 人来れば鹿の近づく冬日かな
 奈良まちの格子にひそと藪柑子
 南大門背にして座せる冬の鹿
 散紅葉丘に寛ぐ鹿もまた
◎大綿やくもり硝子のやうな空
 日の光散らして飛火野の落葉
 公園は落葉に鹿には角のなし
 なによりも珠の小春といふべけれ
 茫々と平城宮趾芒原
 戒壇院境内統べて楝の実
 枯萩を切らぬも白毫寺の心
◎どつしりと冬空支へ塔五重
◎穂芒の見えざる風に揺れてをり
 鹿煎餅鳩の啄む冬日和
 十二神将粛然として堂寒し
 紅葉かつ散りて絵となる茶店かな
 枯芝にほろりほろりと鹿の糞
 刃の跡の冴ゆる一刀彫の鷹
 掃き寄せし落葉の山に離れ鹿
 紅葉狩よりも女は話好き
 塔照らすごと黄葉せる大樹かな
 東大寺冬日に鴟尾の鈍く映ゆ
 はぐれ鹿一方通行逆行す
 石蕗の花蝶招かむと黄の光る
 敗荷の干戈交へし態にかな
 紅葉敷く苑に花嫁粛粛と
 冬鹿の日ざしを宿す瞳かな

言成
幹三
敏夫
浩風
元彦
暁子
洋一
元彦
浩風
あや
眞知子
浩風
敏夫
輝子

眞知子
あや
元彦


言成
幹三
言成

暁子

浩風
眞知子
浩風
輝子
京子

林 直入 後選

 穂芒や人には見えぬ風に揺れ
 切干をおいしく炊いて妻は留守
 霜月の吟行といふ小さき旅

あや

 

選者吟

 散り残る木の葉透かして冬日燦
 冬浅しそぞろ歩きの池の端
 手に小さき破魔矢ふりふり七五三
 冬日ざし如来の金の衣を流る
◎鹿啼いて飛火野の奥深うせり
 人を見て鹿の近づく冬日かな
 ポインセチア心に一灯点しけり
◎芒原揺れ浮ぶごと大極殿
 石段に草履とられて七五三
 散紅葉丘に寛ぐ人と鹿
◎大綿やくもり硝子のやうな空
 冬深む奥へ奥へと奈良町
 木の葉積む戒壇院へまはり径
◎茫々と平城宮趾の芒原
◎冬空へ散りつくしたる大樹かな
 戒壇院境内統べて楝の実
 どつしりと冬空支へ五重の塔
 街騒を一瞬消すや群紅葉
◎鐘の音や柳且つ散る猿沢池
 紅葉酔ひしてしばし座す転害門
 動くものなしとし見れば冬の鹿
 冬鹿のじつと見てゐる方を見る
 枯芝や樹々の数だけ影を置く
 相競ふ紅葉と黄葉興福寺
 懐手ほどき売りをる鹿煎餅
 飛火野のまはりまあるく冬の山
 庚申の身代り猿に風邪預け
 冬の空若草山も火入れ待ち
 冬の奈良歴史抱く時たゆたひぬ
◎タイ僧と大佛拝む小春かな
◎冬眠におくれし亀のただ浮かぶ
 冬の鹿切られし角をつき合わせ
 楝の実空にちりばめ古寺静か
 参道の鹿慎ましき冬日和
◎墨に墨積みゆく音や冬乾く
 枝先のその先までももみづれる
 灯籠の苔むす傘に紅葉散る
 冬日向小鹿も芝に縮こまる
 さらさらと天より銀杏落葉降る
 吟行へ初めて被る冬帽子
 銀杏黄葉鴟尾と輝き競ひけり
 冬鹿の日ざしを宿す眸かな
◎天高く浮ぶ均整五重の塔

眞知子
洋一
言成
暁子
浩風
元彦

眞知子
輝子
元彦
浩風
幹三
輝子
敏夫
京子
輝子
眞知子

浩風
輝子
暁子
幹三
暁子
浩風
幹三
暁子
暁子
洋一
眞知子
元彦
言成
京子
輝子
元彦
幹三
浩風
暁子
洋一

元彦

京子

長山あや 選

第520回 平成24年12月17(日)

兼題  湯豆腐・枯野(浩一郎) 息白し・焚火(あや)
席題  卓上に山茶花・皇帝ダリアの花

アンカー

 もどかしや伝へんとする息白し
 区切られて平城宮趾てふ枯野
 彫り深き顔照らし出す焚火かな
 檻の虎行きつ戻りつ息白し
 湯豆腐に酒徒の繰り言聞く破目に
◎SLの遠き汽笛や大枯野
 表裏ほどよく温め焚火去る
 闇降りし枯野に何か動く影
 破れ蓮生き尽したる潔さ
 坂道にかかる輓馬の息白し
 赤き花活けて華やぐ納め句座
 鵯に縄張り広し大枯野
 盛大に白き息吐き馬とまる
◎湯豆腐の食べ頃てふは難しく
 葬列の出でたる門の焚火跡
 くべし木の水を吹き出す焚火かな
◎縦横に獣道あり大枯野
 車椅子同士の散歩息白し
 よろこびも決意も白き息の中
 焚火消しまたうつし世にもどりけり
◎いつの間にかあたり暮れゐし焚火かな
 焚火あと反古は僅かな灰となり
 晩年は独りで枯野ゆくごとし
 湯豆腐の一人鍋とは淋しき夜
 鮟鱇の目玉が一つ鍋の中
◎あつけなく終る湯豆腐ひとりの夜
 毛糸編みし女の降りてゆける駅
 鹿も人も朝の飛火野息白し
 柏手に続く祈りや白き息
◎猪鍋を囲み明日の釣り談議
 息白きほどはジヨギング速からず
◎耳寄りな噂飛び交ふ焚火の輪
 息白く集ひて始発バスを待つ

浩一
言成
暁子
洛艸
邦夫
洛艸
眞知子
眞知子

洛艸
瑛三
言成
輝子
暁子

暁子
敏夫
嵐耕
太美子
輝子
暁子
輝子
暁子
太美子
幹三
輝子
幹三

敏夫
元彦
浩風
浩風
洛艸

林 直入 選

 湯豆腐の湯気燗酒の小さき湯気
 湯豆腐の欠けしは渫へ鍋奉行
 樹々黒き御陵を枯野うち囲み
 一と夜聴く風と枯木の狂詩曲
 しんしんと木霊眠らせ雪の山
 沈黙の二人の湯豆腐よく唄ふ

直入


あや

 

選者吟

 日々励む腰痛体操息白し
◎もどかしく伝へんとして息白し
◎ランドセル揺らし駆け行く白き息
 身の内に焚火の火照り消えぬまま
 注連作る神の庭なる日だまりで
 SLの遠き汽笛や大枯野
 息白く釣師ゴルフアー始発待つ
 隣人と朝の挨拶息白し
 みやこ址枯野となりて風の鳴る
 破れ蓮生き尽したる潔さ
 枯野には風通る道人通る道
 湯豆腐の硬き故郷遠かりき
◎藁打てば淡きかをりや注連作り
 湯豆腐の湯気くぐり来て佳き話
◎存分に風の駆けゆく枯野かな
 エコロジー復元試験てふ枯野
 湯豆腐や夕餉の二人酒少し
 木道の切々に見ゆ大枯野
 息白く朝刊受けて笑み返へし
 葬列の出でたる門の焚火跡
 湯豆腐のことことと鳴る夜を酌める
 樹々黒き御陵を枯野うち囲み
 冬紅葉深紅ひときは月白し
 寄つて来る小さき命落葉焚
 車椅子同士の散歩息白し
◎よろこびも決意も白き息の中
 ギヤロツプに人馬のはづむ息白し
◎焚火消しまたうつし世にもどりけり
◎大淀の果に師走の入日かな
 いつの間にかあたり暮れゐし焚火かな
 杵の音の絶えて久しき年の暮
 夕影や焚火に仕舞ふ野良仕事
◎晩年は独りで枯野ゆくごとし
 夕日差ししばし枯野も華やかに
 初に会ふ皇帝ダリアうなだれて
 鮟鱇の目玉が一つ鍋の中
 鳶舞うて生ある証大枯野
 湯豆腐を囲む家族でありし頃
 鹿も人も朝の飛火野息白し
 枯野ゆく祖父母の灯りこの向かう
◎いつの間にひとりとなりし枯野かな
 枯野行く浅き川面の光かな
 碑に記す宮跡枯野中
◎差向ひ湯豆腐掬ふ妻のゐて
 湯豆腐の話題双子座流星群

言成
浩一郎

京子
太美子
洛艸
浩風
嵐耕
輝子

和江
敏夫
太美子
浩一郎
暁子
敏夫
嵐耕
敏夫
洋一

浩一郎
直入
京子
言成
嵐耕
太美子
瑛三
輝子
浩一郎
暁子
洋一
浩一郎
暁子

京子
幹三
洛艸
言成

邦夫
浩一郎
京子
瑛三
瑛三
言成

長山あや 選

アンカー

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林 直入 後選

第518回 平成24年11月19(月)

兼題  神無月・酢茎(直入) 大根引・冬めく(あや)
席題  卓上に小菊・茶の花・石蕗の花・万両・

 下宿とは酢茎の桶の横の部屋
 まっすぐの心を旨と大根引
 神無月風思ふさま杜を駆け
 白々と白山颪大根干す
 大根引残りし穴の存在感
 小春日のやうな余生を賜ひたく

浩一郎


あや

 

選者吟

冬コスモス・柿・柿の葉

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第510回 H24.04.29

第511回 H24.05.21

第512回 H24.06.18

第513回 H24.07.09

第514回 H24.07.29

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第518回 H24.11.19

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