羅をお召しの風情伎芸天
丈六に余る如来や堂涼し
朱を残し立つ伎芸天涼やかに
不動明王憤怒の姿蝉時雨
慈しみの半眼涼し伎芸天
炎暑にもあせず寺庭の苔の青
真夏日も笑まひたまへる伎芸天
◎平城京見晴らす畑に茄子育つ
暑気忘れ佇ちつくし見る伎芸天
炎天の屋上菜園ズツキーニ
炎暑中来てまみえたる伎芸天
◎堂涼し伎芸天女の細き指
ゆるやかに波打つ苔に風涼し
お不動の忿怒を仰ぎみて涼し
本堂の善財童子お目涼し
剥落の涼しさ纏ふ伎芸天
麗しくみほとけ在す寺極暑
萩一樹ひそと咲きをり伎芸天
弁当買ひ金魚すくひの券貰ふ
見はるかす朱雀大路や夏霞
老鶯の思ひのたけを繰り返し
咲きそめし萩に惑へる小さき蝶
夏萩や秋篠寺に門二つ
炎天下しかと構へし大極殿
◎炎天のひかりの滝となる甍
見はるかす平城京址大夏野
人気なき寺苑にひそと夏の萩
日盛りや伎芸天女に水捧ぐ
砲弾を抱く忠魂碑苔の花
朝曇平城宮跡人を見ず
お寺まで追ひかけてくる蝉時雨
◎新涼の風とは過ぎてから気づく
平城山はなだらかにして雲の峰
藤の豆数本垂るる日蔭かな
親を呼ぶ声絶え間なき烏の子
屋上と天との鬩ぎ合ふ炎暑
汗拭ひ辿り着きたる古刹かな
赤子抱くお地蔵さんや木下闇
◎雲の峰高原行きのバス発車
◎翻へりては風を呼ぶ夏燕
夏落葉苔やはらかく受けとめて
乱
言成
敏夫
箕川
あや
眞知子
箕川
幹三
眞知子
言成
暁子
幹三
幹三
道子
言成
言成
輝子
あや
太美子
幹三
京子
箕川
幹三
暁子
あや
輝子
瑛三
元彦
言成
敏夫
輝子
あや
浩風
元彦
言成
太美子
洋一
元彦
眞知子
敏夫
浩風
林 直入 後選
第514回 〈吟行句会〉平成24年7月29日(日)
吟行地 西大寺、ならファミリー、秋篠寺とその周辺
句会場 平城公民館 講義室
羅をお召しの風情伎芸天
伎芸天にまみえしとどの汗の引く
丈六に余る如来や堂涼し
不動明王憤怒の姿蝉の声
◎黒き蚊の帝釈天の影に消ゆ
◎涼しげに朱を残し立つ伎芸天
炎昼を来て訪ふ寺苑ほの暗き
降り棟涼しき森の中の寺
二つ三つ咲きたる萩に早も蝶
青田吹く風の香や伎芸天
見はるかす平城京趾夏深し
トンネルを出ればまほろば夏深し
炎暑一里来てまみえたる伎芸天
◎堂涼し伎芸天女の細き指
ゆるやかに波打つ苔に風涼し
◎ひつそりと散れる病葉古寺閑か
病葉を癒すがごとく蝉の鳴く
◎剥落の涼しさ纏ふ伎芸天
幾春秋経りし石佛木下闇
見はるかす平城宮趾夏がすみ
◎木洩日の遊ぶ寺苑の苔涼し
夏帽子脱ぎて天女を拝む女
弁当買ひ金魚すくひの券貰ふ
み仏に菩提樹の実のたわわなる
美しきみ仏にあふ奈良の秋
秋篠の杜鎮もれる夏の朝
炎天下しかと構へて大極殿
秋篠の参道萩の揺れゐたり
見はるかす平城京址大夏野
人気なき寺苑にひそと夏の萩
息をつく木蔭賜る青楓
早咲きの秋篠寺の萩と会ひ
秋篠の苔の毛氈蜥蜴走る
咫尺(しせき)して御ん目涼しき伎芸天
◎なだらかなあれが平城山雲の峰
たずね来て天女おろがむ夏木立
雲の峰高原行きのバスの発つ
翻へり風を呼び来る夏燕
秋篠の里炎昼を眠りをり
◎夏落葉苔やはらかく受けとめて
乱
暁子
言成
箕川
幹三
敏夫
輝子
幹三
暁子
敏夫
太美子
洋一
暁子
幹三
幹三
輝子
元彦
言成
太美子
瑛三
暁子
乱
太美子
京子
道子
敏夫
暁子
箕川
輝子
瑛三
言成
元彦
箕川
浩風
浩風
瑛三
眞知子
敏夫
輝子
浩風
長山あや 選
慈しみの半眼涼し伎芸天
西大寺風すべりゆく苔涼し
新涼の風とは過ぎてから気づく
あや
選者吟
茄子の馬終日寺の鐘響く
草市や売れ残れるをまとめ売る
空蝉のすがりつきたるまま活くる
明けぬれば燃えさし侘し苧殻かな
冷やかしもほどほどにして草の市
行きずりの草市のぞき買ふ破目に
均等に切る名人や大西瓜
◎お供への西瓜早目のおさがりに
苧殻てふ風より軽きものを買ふ
◎賑やかに霊を送りて闇深し
送火に妻は言ひたきこと言はず
老いてなほ西瓜切るときときめきぬ
刃の触れて西瓜ぱちりと割れし赤
むにやむにやと般若心経門火焚く
送り火や仏を知らぬ子の二人
拝殿に氏子中なる大西瓜
西瓜食ふ上品ぶつてをれぬ仕儀
手も顔も卓も西瓜でくしやくしやに
◎草市の美穂女のつとの幽霊飴
溝埋めて水音かくす蓼の花
◎空蝉の軽さよ草も撓まずに
指示すればするほど外れ西瓜割
◎蓼の花余生平々凡々と
◎鬼灯を鳴らして若くをられけり
苧殻折る乾きし音の闇に消え
◎嘘つかぬ音を確かめ西瓜買ふ
夕涼み上手に死ぬる話して
京子
暁子
言成
乱
浩風
義雄
翠
瑛三
あや
翠
浩風
暁子
敏夫
言成
輝子
輝子
洛艸
浩一郎
あや
あや
瑛三
浩風
翠
浩一郎
乱
浩風
京子
林 直入 選
第515回 平成24年8月20日(月)
兼題 草市・花蓼(直入) 送火・西瓜(あや)
席題 卓上に 白粉の花・狗尾草(えのころ草)・空蝉
茄子の馬終日寺の鐘響く
◎睛耕の鍬を洗ふや蓼の花
ぽたぽたと井戸水垂らし西瓜揚ぐ
空蝉のしがみつきたるまま活くる
小さき風来ては遊びぬ蓼の花
西方に独り佇む盆の道
明けぬれば燃えさし侘し苧殻かな
送り火に行かぬと答ふ少年は
◎色同じ焚く送り火も大文字も
送火の消えて残れる匂ひかな
均等に切る名人や大西瓜
包丁の音潔よし大西瓜
風の声雲の風情も秋の色
◎賑やかに霊を送りて闇深し
送火に妻は言ひたきこと言はず
到来の西瓜に狭き冷蔵庫
こふのとり降り立つ田圃蓼の花
老いてなほ西瓜切るときときめきぬ
タクラマカン砂漠の西瓜山と積み
鍾乳洞千古の滴り頬を打つ
◎裸火にはかなきものを草の市
送り火のゆらぐひと時思ふ人
来し孫は男女で五人西瓜三つ
西瓜食ふ子の輪にしばし黙つづく
送り火や仏を知らぬ子の二人
◎旅先の死海の塩に西瓜かな
門火焚きここが我が家と佇みぬ
手も顔も卓も西瓜でくしやくしやに
また一つ泣き皺増やし魂送り
◎この妻と送り火焚くは何時までか
送り火の消えし刹那の思ひかな
赤まんまままごと妻の顔想ひ
遠き日や西瓜をかこむ一家族
送り火に未練の余燼ありにけり
大文字燃ゆるかなたへ帰る魂
村抜けて秋篠寺へ蓼の花
苧殻折る乾きし音の闇に消え
薄き灯に寄るくさぐさや草の市
丸ごとでなくてはならぬと西瓜買ふ
風立ちて霊ゆらゆらと万灯籠
◎夕涼み上手に死ぬる話して
消えてなほ送火に添ふ母なりし
京子
浩風
幹三
言成
浩一郎
洋一
乱
輝子
直入
幹三
翠
翠
眞知子
翠
浩風
瑛三
言成
暁子
箕川
乱
浩一郎
眞知子
ゆたか
洛艸
輝子
義雄
洋一
浩一郎
浩風
ゆたか
京子
洋一
箕川
洛艸
眞知子
暁子
乱
浩一郎
和江
乱
京子
浩一郎
長山あや 選
老母の涙もろさよ魂送り
カメラ作動中と札あり西瓜畑
果物屋よりも八百屋に買ふ西瓜
溝埋めて水音かくす蓼の花
苧殻てふ風より軽きものを買ふ
草市の美穂女のつとの幽霊飴
直入
あや
選者吟
山城に近づく車窓竹の春
銀色に瓦の濡るる望の夜
◎満ち足りし眼となりて夜なべ終ふ
繰り返すバイエル止みて月今宵
嵯峨野路や右に左に竹の春
◎秋蝶といふといへども矍鑠と
墓碑の供華渉り渉りて秋の蝶
◎風のみち大きくうねり竹の春
翅拡げ塀に日を浴ぶ秋の蝶
節白きもの蒼きもの竹の春
子育ての日々なつかしき竹の春
風なきに流されしごと秋の蝶
本堂の陰にひつそり竹の春
幼な子の小ひさき網に秋の蝶
廃屋を垣間見せたる竹の春
◎静けさのしみ入る緑竹の春
日溜りを伝ひ伝ひて秋の蝶
受験子に付き合ふ母の夜なべかな
夜仕事の青き火漏るる町工場
透き通る日ざしに揺れて秋の蝶
今しばし庭に留まれ秋の蝶
迷ひ込み窓辺に憩ふ秋の蝶
台湾へこの海渡る秋の蝶
雷雲に高圧塔の仁王立ち
禁色をたわわに掲げ式部の実
夜なべとす句会の用紙綴づるなど
名月にロシアの船の停泊す
パソコンに自分史綴る夜なべかな
名月や金鱗湖の名うべなひぬ
丈高き紫苑に隠れて庭仕事
◎猫の目の片開きして望の月
花に来て花と揺れをり秋の蝶
草伸びし狭庭に惑ふ秋の蝶
頼りなげ庭にたゆたふ秋の蝶
ぐんと伸び風格見する竹の春
◎風紋の砂丘に高し今日の月
◎さざめきは高きにありて竹の春
一群れの竹も春なるエジソン忌
白寿なる母の笑顔や望の月
二つ三つ枝豆食べて人を待つ
野々宮をつつむ風音竹の春
御遷宮近き社や秋の蝶
竹取の翁の里の竹の春
みどりごのとぎれし寝息月今宵
竹の春忌日の庭を明るうす
ストレツチして夜仕事の終りたる
ひめゆりの塔にさまよふ秋の蝶
◎とまらぬと笑ひつつ食ぶ月見豆
太美子
輝子
洛艸
浩風
瑛三
浩風
洛艸
香月
洛艸
幹三
乱
眞知子
洋一
瑛三
乱
敏夫
洛艸
瑛三
幹三
京子
乱
洋一
暁子
洋一
言成
浩一郎
幹三
輝子
暁子
茉衣
敏夫
輝子
言成
乱
眞知子
瑛三
暁子
浩風
敏夫
輝子
眞知子
太美子
敏夫
嵐耕
暁子
敏夫
義雄
眞知子
林 直入 後選
第516回 平成24年9月10日(月)
兼題 竹の春・秋の蝶(直入) 夜なべ・名月(あや)
席題 卓上に 紫式部・韮の花・菊・枝豆
窓ありて琴立てかけぬ竹の春
秋蝶に厳しき貌のありにけり
実むらさき半ば朽ちたる道しるべ
伽藍堂よりふはりふはりと秋の蝶
嵯峨野路は右に左に竹の春
墓碑の供華渉り渉りて秋の蝶
望の夜は御影堂ひらき讃仏会
◎名月やよく冷えてゐる白ワイン
かの世でも酌み交すらむ今日の月
手入れなき竹薮なれど竹の春
◎日溜りを伝ひ伝ひて秋の蝶
夜仕事の青き火漏るる町工場
受験子に付き合ふ母の夜なべかな
今しばし庭に留まれ秋の蝶
◎透き通る日ざしに揺れて秋の蝶
迷ひ込み窓辺に憩ふ秋の蝶
父母用意床几に硯月今宵
◎名月やロシアの船の停泊す
嵯峨野路のどの径とるも竹の春
海上に銀の道あり月今宵
やや増えし景気占ふ夜業の灯
終着のトロツコ列車竹の春
◎名月を猫と語らひ魔女気分
月の道一家揃ひて銭湯へ
風紋の砂丘に高し今日の月
さざめきは高きにありて竹の春
◎白寿なる母の笑顔に望の月
パソコンに向かふ夜なべや独り言
◎竹の春風の明るき嵯峨野みち
生きのこる老の夜なべの灯なりけり
野々宮をつつむ風音竹の春
子のための夜なべの妻に母を見る
観てるかと息子のメール今日の月
竹の春忌日の庭を明るうす
◎露天湯を独り占めして望の月
盆の月照らす化野無縁仏
ゆたか
幹三
輝子
ゆたか
瑛三
洛艸
輝子
幹三
翠
眞知子
洛艸
幹三
瑛三
乱
京子
洋一
乱
幹三
浩風
太美子
洛艸
瑛三
茉衣
暁子
瑛三
暁子
敏夫
言成
嵐耕
ゆたか
眞知子
乱
洛艸
暁子
洛艸
乱
井上浩一郎 選
じつと居る夕日の壁や秋の蝶
名月や畏るるごとく声低き
いにしへの心に仰ぐ今日の月
秋の蝶暮色に溶けて消えゆけり
水音に風音に揺れ竹の春
夜なべして光まぶしき朝迎ふ
浩一郎
あや
選者吟
丘陵の風の流れに竹の春
山影を離れ明月天心に
秋蝶に厳しき貌のありにけり
満ち足りし眼光らせ夜なべ終ふ
◎銀色に瓦の濡るる望の夜
嵯峨野路は右に左に竹の春
蜜多き花を求めて秋の蝶
風のみち大きくうねり竹の春
◎秋の蝶深き空まで舞ひ上り
◎わがゆけば名月先を照らしくれ
大寺の土塀高かり秋の蝶
もう措こう明日の準備の夜なべかな
秋の蝶どこか死の影宿し飛ぶ
じつと居る夕日の壁や秋の蝶
シベリアの抑留黙す遺影の菊
石仏の小暗き影に竹の春
静けさのしみ入る緑竹の春
受験子に付き合ふ母の夜なべかな
大海の闇より生まる月赤し
月への讃歌ムーンライトソナタ弾く
雷雲に高圧塔の仁王立ち
◎見納めとなるやも知れぬ今日の月
禁色をたわわに掲げ式部の実
竹春の嵯峨野の径駈く俥かな
◎名月を残し列車はトンネルに
海上に銀の道あり月今宵
丈高き紫苑に隠れて庭仕事
名月を写して寂し池の面
名月や復興なりし姫路城
名月を猫と語らひ魔女気分
風紋の砂丘に高し今日の月
白寿なる母の笑顔に望の月
二つ三つ枝豆食べて人を待つ
パソコンに向かふ夜なべや独り言
◎野々宮をつつむ風音竹の春
観てるかと息子のメール今日の月
名月をつれて嵯峨野をそぞろ行く
◎夜なべ終へ一杯の白湯飲み干せり
秋空に消えたる蝶の目に残る
盆の月照らす化野無縁仏
京子
浩一郎
幹三
洛艸
輝子
瑛三
敏夫
香月
敏夫
暁子
瑛三
香月
暁子
浩一郎
京子
眞知子
敏夫
瑛三
太美子
香月
洋一
洛艸
言成
洛艸
義雄
太美子
茉衣
洋一
香月
茉衣
瑛三
敏夫
輝子
言成
眞知子
洛艸
眞知子
幹三
暁子
乱
長山あや 選
◎茸狩持ち来し籠の大きすぎ
菊人形大河ドラマの一場面
菊人形どこか遠くを見てをりぬ
金柑を煮る時祖母の顔となり
裏方の苦労は見せず菊人形
草の花卓にあふれて句座豊か
年金の減額通知冷まじや
冷まじや自刃の跡に日の差さず
◎突つきやめ穴覗きをる小げらかな
◎道標に熊注意とは冷まじや
啄木鳥に応ふる黙や虚子の塔
苔の下手答へ確か菌狩り
啄木鳥のたたくあたりに日のあたり
句碑ひとつ啄木鳥叩く木の下に
啄木鳥の静寂深めし橅林
小休止すれば啄木鳥叩く音
◎冷まじや噴気こもごも地獄谷
◎号泣の瞳のまばたかず菊人形
黄昏れてくたびれそめし菊人形
啄木鳥と夕木魚の音重なれり
◎冷まじや喧嘩にも似て浜言葉
菊人形菊のおとろへ見せまじく
菊人形源氏平家の隔てなく
菊人形女菊師が着せてゆく
◎かくかくと菊人形の回りをり
啄木鳥の止めば淋しき山の宿
暁子
洛艸
浩一郎
暁子
翠
敏夫
眞知子
輝子
幹三
言成
瑛三
翠
ゆたか
輝子
元彦
輝子
洛艸
浩風
洛艸
ゆたか
浩風
あや
元彦
暁子
幹三
洛艸
林 直入 選
第517回 平成24年10月15日(月)
兼題 啄木鳥・菊人形(直入) 冷まじ・金柑(あや)
席題 卓上に 芒・萩・紫式部・杜鵑草・露草・
茸狩持ち来し籠の大きすぎ
揺すられて香り立ちたる群菌
啄木鳥や横川の森に朝日差し
◎菊人形どこか遠くを見てをりぬ
啄木鳥の叩く音して山深し
裏方の苦労は見せず菊人形
啄木鳥の木屑生々しき根元
冷まじや自刃の跡に日の差さず
◎啄木鳥に応ふる黙や虚子の塔
橅林啄木鳥の音伝へ来ぬ
旧道に金柑光る村静か
秋天へ観覧車にて登りけり
森の月夜々に冷まじ虫も絶え
啄木鳥のたたくあたりに日のあたり
冷まじや地震の瓦礫の山高し
◎酒となる名水喉に沁みる秋
◎敵味方同じ菊師の手にかかる
啄木鳥のただ余念なく穴穿つ
菊纏ふ女人平家の華やかに
新稲架の香り流るる停留所
衿元はやはり白菊菊人形
芒原どこに佇ちても銀の波
空碧し峡に金柑色づきて
冷まじや壊れてゐたる万華鏡
◎萩刈ればかかへゐし風こぼれ落つ
義経の鎧つくろふ菊師かな
松茸の消えし偽松茸までも
◎菊日和妻とデイトの観覧車
啄木鳥の止めば淋しき山の宿
暁子
敏夫
浩一郎
浩一郎
輝子
翠
直入
輝子
瑛三
敏夫
敏夫
京子
浩一郎
ゆたか
洛艸
乱
浩風
乱
乱
京子
暁子
眞知子
浩風
幹三
眞知子
京子
直入
乱
洛艸
長山あや 選
啄木鳥の音今日もよき山日和
武者華麗姫の優雅に菊人形
五票差で当選と言ふすさまじき
菊人形菊の衰へ見せまじく
菊人形菊は呼吸をしつづける
影といふ冷まじきもの曳きて歩す
直入
あや
選者吟
赤のまま・菌・木の実
第513回 平成24年7月9日(月)
兼題 噴水・ボート(直入) 日焼・夕顔(あや)
席題 卓上に 木槿(底紅)
夕顔やまはりはすでに昏れてゐし
◎昼下がりボートに猫の寝てゐたり
一人だけ乗るボートとはつまらなく
◎道問へば日焼の顔の集まりぬ
裏山のにはかに近し梅雨晴間
日焼して戻りし子らと夕餉かな
行き先を問へば指差す雲の峰
歩きしは地球の裏と日焼の子
◎言ふことを聞かぬボートや初デート
老書生なほ青春とボート漕ぐ
ふさぎ虫どこかに消えて日焼けの子
その昔愛の証しのボートかな
少しだけ日焼せし顔丁度よく
ほどけそむ夕顔に闇ひそと寄す
噴水に時をゆだねて人を待つ
雲の峰どんどん腹の空いてくる
夕顔の白やすらかに今日終る
◎のど自慢日焼の顔が愛歌ふ
日焼せし二軍選手の頼もしき
◎ギリシヤ神戯る噴水人群るる
◎日焼せる顔のいひわけより始む
噴水の虹見ゆ方へ歩を移す
妬心ありし頃懐しや花木槿
夕顔の浮かぶやすけき闇として
初めてといふ祖母ボートに乗せし日よ
喧騒のローマに疲れ噴水に
予備校に日焼の顔の馴染まざる
日焼せし顔誇らしげ休暇明け
見事なる日焼女子高サツカー部
さつと立つ日焼男の格好良き
かくしても日焼の語る我が暮し
日焼して旅物語切れ目なく
◎少々の日焼も老の庭仕事
浩風
輝子
ゆたか
幹三
箕川
暁子
幹三
和江
翠
瑛三
眞知子
和江
ゆたか
あや
あや
幹三
浩一郎
輝子
元彦
翠
道子
洛艸
暁子
浩一郎
暁子
暁子
浩風
洛艸
瑛三
翠
輝子
言成
浩一郎
林 直入 選
一人だけ乗るボートとはつまらなく
道問へば日焼の顔の集まりぬ
青空を突く噴水を見上げをり
まつ黒に日焼け野球部街走る
行き先を問へば指差す雲の峰
◎言ふことを聞かぬボートや初デート
風連れて来たる日焼の海男
◎夕顔やネクタイ外し一と日終ふ
噴水を背に托鉢の僧ひとり
嵐近しボート打ち伏す岸辺かな
ひらき初む夕顔に添ふ夕ごころ
少しだけ日焼せし顔丁度よく
古池の底の深きに夏の雲
◎底紅をゆかしく咲かせ家古りぬ
押し出され我がものとなる貸ボート
夕顔の白やすらかに今日終る
◎夕顔を灯し狭庭の闇深し
ボート点々湖上をわたる恋の風
節電の夏越す思案あれこれと
早や庭に日焼気にせぬ妻のあり
◎コツクスの声よく通るボート勝つ
待ち人の来ず噴水にも飽きて
月光と枯噴水と無人街
噴水の虹撒く苑の昼下り
夕顔や今朝の手紙を読み返す
夏蝶やいつもきまりし時にくる
積み置きし冊子諸々日焼して
フレンチのデイナー帰りの蛍狩
北山の風のそよぎや時鳥
幾千のボート育む鳰の海
噴水の落ちるリズムのありにけり
老いてなほ農一筋の日焼顔
夕暮やひとりボートの流し漕ぎ
苧(からむし)をつむぎて強(こは)き生地を織る
ゆたか
幹三
太美子
浩一郎
幹三
翠
浩一郎
浩風
輝子
瑛三
太美子
ゆたか
京子
浩一郎
幹三
浩一郎
言成
翠
道子
乱
敏夫
暁子
翠
瑛三
幹三
洋一
輝子
乱
京子
元彦
嵐耕
浩風
浩風
箕川
長山あや 選
噴水を時にもぎ取る風強し
座礁てふ難義がボート遊びにも
日焼けたる訳を女房くどくどと
噴水に時をゆだねて人を待つ
ほどけそむ夕顔に闇ひそと寄す
底紅の紅抱きしめて鎮もれる
直入
あや
選者吟
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